幾何学I



月曜日10:00 -- 12:15

担当:河野俊丈


講義概要: 多様体についての基礎事項を解説する. まず,ユークリッド空間内の曲線,曲面のパラメータ表示,陰関数定理,逆関数定理から 出発して,多様体の定義にいたる流れを説明する. 次に多様体の接空間の概念を定義して,これを用いて,多様体間の写像の微分を 定式化する.さらに,写像のランク,埋め込みとはめこみなどについて述べる. また,多様体上のベクトル場とフロー,多様体のリーマン計量などの話題にも ふれる.

参考書:
坪井俊,「幾何学I--多様体入門」 東京大学出版会
松本幸夫,「多様体の基礎」東京大学出版会
服部晶夫,「多様体」岩波全書



4月10日 多様体の基礎概念への入門

ユークリッド空間内の曲線,曲面を題材にして,多様体の定義を理解するための 基礎概念を述べる. 特に,陰関数定理を用いて,ユークリッド空間内の超曲面について, 局所座標系が定義されるための条件を述べる.


4月17日 多様体の定義と基本的な例

一般的な可微分多様体の定義を述べ,球面,実射影空間など 基本的な例を挙げる. また,積多様体,商多様体など,多様体の構成方法についてもふれる.


4月25日 多様体の接空間

可微分多様体の接空間の定義を述べる. また,多様体のなめらかな写像の微分を接空間の 双対空間の要素として定式化する.


5月2日 多様体間の写像とその微分

接空間に関する基本的な性質を証明した後, 多様体の間のなめらかな写像の微分を接空間の間の線形写像として 定義する.また,写像のランクについて説明する.


5月9日 群作用と商多様体

多様体への群の作用の一般的な定義を与え,軌道,固定部分群, 自由な作用などの基本的な用語を説明する. また,群作用による商空間が多様体の構造をもつような場合について, 例を挙げて説明する.


5月23日 接バンドルと多様体の向き

多様体の接バンドルの定義を与え,多様体の間の写像の微分を 接バンドルの間の写像として定式化する. また,多様体の向きの概念について説明する.


5月30日 埋め込みとはめ込み,部分多様体

多様体の間の写像について,埋め込みとはめ込みの概念を 定義する. また,部分多様体について述べ,いくつかの例を与える.


6月6日 多様体上の写像,正則値と臨界値

多様体の間の写像について,ある点で正則であることの 定義を述べる.また,正則値の引き戻しが部分多様体となることを 証明する.また,臨界値の集合の測度が0になるという, Sardの定理を述べる.


6月13日 Sardの定理の証明,写像度

Sardの定理の証明を述べる. また,Sardの定理の応用として,同じ次元のコンパクトで向き付けられた 多様体の間のなめらかな写像について,正則値の引き戻しの点の個数を 向きによって符号を付けて足し合わせることにより,写像度の概念を定義する.


6月20日 多様体上の1の分割と埋め込み定理

Sardの定理の証明を述べる. また,Sardの定理の応用として,同じ次元のコンパクトで向き付けられた 多様体の間のなめらかな写像について,正則値の引き戻しの点の個数を 向きによって符号を付けて足し合わせることにより,写像度の概念を定義する.


6月27日 多様体上のリーマン計量

空間内の曲面の例からはじめて,可微分多様体上の一般的な リーマン計量の定義,座標変換に対する計量の変換規則などを述べる. また,リーマン計量を用いて,多様体上の曲線の長さの積分による表示を 説明する.また,多様体のはめ込みによって誘導されるリーマン計量について のべる.


7月4日 ベクトル場と1径数変換群

多様体上のベクトル場の定義を述べ,ベクトル場の微分作用素としての性質, ベクトル場全体のLie代数の構造などを説明する. また,ベクトル場の生成する1径数変換群変換群を定式化し, コンパクトな多様体上のベクトル場は完備であることを示す.


9月15日 補講 Riemann多様体上の曲線と測地線の方程式

ユークリッド空間内の曲面の測地線の満たす微分方程式をリーマン計量を用いて 記述し,一般のリーマン多様体上の場合に拡張する. また,曲線の長さを極小にする変分問題の解としても, 測地線をとらえられることを説明する.


演習問題1
演習問題2
演習問題3
演習問題4
演習問題5
演習問題6
演習問題7
演習問題8
演習問題9

レポート問題(提出方法は掲示を見て下さい)