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微分積分学

授業の目標,概要

代数学,幾何学とともに,数学の根幹をなす解析学について,その基本的な考え方や方法を学ぶ.力学における運動方程式などに代表されるように,自然界の多くの現象が,微分積分学を用いて記述される.微分積分学は,あらゆる科学技術の基礎となっている.微分積分学は17世紀末に,ニュートンやライプニッツらによって創成された.ニュートンは量の変化の記述に注目し,速度,加速度などの物理量を表現するために微分の概念を導入した.「微分積分学の基本定理」により,区分求積法によって定義される積分は,微分の逆操作であることが,明確に認識されるようになった.

微分積分学では,極限をとること,無限和をとることなどの操作が重要な役割を果たす.このような微分積分学の基礎となる極限の厳密な定義は,19世紀後半から整えられていった.この授業では,「数理科学基礎」で学んだ極限の扱いに基づき,微分積分学の基礎と応用を学ぶ.具体的な項目は以下の通りである. S2タームで項目1,2を扱い,Aセメスターで項目3~6を扱うことを目安とするが,担当教員によって,順序や内容に一部変更が加えられる場合がある.

  1. 一変数関数の微分 (微分の基本性質,テーラーの定理,テーラー展開)
  2. 多変数関数の微分 (偏微分と全微分,合成関数の微分の連鎖律)
  3. 多変数関数の微分(続き)(高階偏微分,多変数のテーラーの定理とその応用)
  4. 一変数関数の積分 (区分求積法,微分積分学の基本定理)
  5. 多変数関数の積分 (多重積分と累次積分,多重積分の変数変換公式)
  6. 無限級数と広義積分 (関数列の収束,広義積分)

実数の連続性に基づく微分積分学の基礎の厳密な展開は,2年次Sセメスターの総合科目「解析学基礎」で学ぶことができる.将来,本格的に数学を使う分野に進学しようという場合は「解析学基礎」によって微分積分学の理論的基礎を修得することをすすめる.なお,「解析学基礎」は1年次Sセメスターでも履修することができる.また,2年次Sセメスターの総合科目として,「微分積分学」の直接的な続きにあたる「微分積分学続論」,および「微分積分学」で学んだ事項の応用にあたる「常微分方程式」,「ベクトル解析」が開講される.

授業計画

S2ターム

  1. 一変数関数の微分:
    「数理科学基礎」で学んだ関数の極限の概念と一変数関数の微分の定義に基づいて,微分の基本的な性質を論ずる.平均値の定理を用いてテーラーの定理を示し,関数をべき級数として表示するテーラー展開を扱う.
  2. 多変数関数の微分 :
    二変数関数の場合を中心として偏微分と全微分を扱う.二変数の関数のグラフの接平面,合成関数の微分の連鎖律を学ぶ.また,パラメータ表示された曲線の速度ベクトル,平面曲線の法線ベクトルを扱う.二変数関数の陰関数定理についてもふれる.

Aセメスター

  1. 多変数関数の微分(続き):
    高階偏微分,偏微分の順序交換ができるための十分条件,多変数関数のテーラーの定理を扱う.また,二変数関数の極大極小問題,有界閉領域における最大最小問題を考える.
  2. 一変数関数の積分 :
    区分求積法に基づいて定積分の性質を論じる.定積分の区間の端点を動かすことによって不定積分を導入し,「不定積分はもとの関数の原始関数である」という微分積分学の基本定理を得る.また,具体的に不定積分が求められる積分の計算を,広義積分,すなわち,無限区間における積分や区間の端で発散する関数の積分も含めて,主に演習で扱う.
  3. 多変数関数の積分 :
    二変数関数の場合を中心にして,リーマン積分による多重積分の定義を与える.さらに,多重積分を一変数の積分の繰り返しとして累次積分で表示する.また,ヤコビ行列式を用いた多重積分の変数変換の公式(直交座標と極座標の変換など)を扱い,その応用(面積,体積,平均値など)を論ずる.
  4. 無限級数と広義積分 :
    べき級数などの関数列の収束,とくに,関数項の級数についての優級数定理,べき級数の収束半径,関数列の一様収束などについて学ぶ.また,極限と微分,積分の順序交換がどのような場合に許されるかを考察する.さらに,広義積分の収束条件について論ずる.広義積分の例として,ガウスの正規分布関数の無限区間における積分を計算する.
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