東京確率論セミナー

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開催情報 月曜日 16:00~17:30 数理科学研究科棟(駒場) 126号室
担当者 佐々田槙子、中島秀太(明治大学)
セミナーURL https://sites.google.com/view/tokyo-probability-seminar23/2024年度

2016年12月12日(月)

16:50-18:20   数理科学研究科棟(駒場) 128号室
秋元琢磨 氏 (慶應義塾大学)
異常拡散におけるエルゴード性の破れとサンプル依存性
[ 講演概要 ]
エルゴード的な系では、単一の軌道に対して、時間平均により得られる観測量は時間無限大の極限で一定値に収束する。特に、平衡系では、この一定値は、初期状態には依存せず、平衡分布による平均値と一致する。したがって、同じ条件の下で観測すれば、観測結果は不変である。つまり、エルゴード的な系は再現性を持つ。本講演では、連続時間ランダムウォークにおける拡散性(平均2乗変位)は再現性を持たないが分布的な再現性を持つことを紹介する [1,2]。連続時間ランダムウォークは、ランダムなポテンシャルエネルギー空間上のランダムウォーク(トラップモデル)をアニールした(空間的な不均質性は考えず、ランダムポテンシャルが常に時間変化している)モデルである。本講演では、さらに、このトラップモデルに対して、系のサイズが有限であるとき、系はエルゴード的であり、時間平均で定義された平均2乗変位は再現性を持つが、ある温度(ガラス温度)以下では、たとえ系のサイズを大きくしても、同じ値には収束せず、不均質さのサンプルに強く依存する(サンプルのゆらぎに起因して拡散性が大きく変わる)ことも示す[3]。換言すれば、ガラス温度以下では、大数の法則が破れ、拡散性はサンプルに依存して本質的にランダムになる。

参考文献
[1] Y. He, S. Burov, R. Metzler, and E. Barkai, Phys. Rev. Lett. 101, 058101 (2008).
[2] T. Miyaguchi and T. Akimoto, Phys. Rev. E 87, 032130 (2013).
[3] T. Akimoto, E. Barkai, and K. Saito, Phys. Rev. Lett. 117, 180602 (2016).