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研究科長挨拶 斎藤 毅

1992年4月に、東京大学の数学、数理科学の教育研究を担う組織として、 大学院数理科学研究科が設立されました。今年2022年に30周年を迎えることができました。 これも関係するみなさまのご指導、ご支援のおかげであると感謝しております。

大学院数理科学研究科は、理学部数学教室、教養学部数学教室、 教養学部基礎科学科第一基礎数学教室を母体として設立されました。 一つの専攻だけからなる小さな研究科としての出発は、試行錯誤の連続だったことと思われます。 発足当時は専攻会議が毎週のように行われ、また長時間に及ぶものだったことが思い出されます。 歴代の研究科長をはじめとする先人の努力の下に、数理科学研究科棟の建設を含め、 現在の形に至ることができたものと思います。

数理科学研究科設立後最初の20年については、 20周年記念式典の機会に当時の坪井俊研究科長がご挨拶の中で述べていますので、 ここでは、その後の10年にあった出来事から、簡単に振り返りたいと思います。

大学院の教育プログラムとしては、20周年以前には2003年度から2007年度にかけての21世紀COEプログラム、 2008年度から2012年度にかけてのグローバルCOEプログラムがありましたが、 それ以降も2012年度に採択されて理学系研究科物理学専攻、 地球惑星科学専攻と連携してカブリ数物連携宇宙研究機構と協力して行なっている 「数物フロンティア・リーディング大学院」(FMSP)、 そして2019 年度に採択されて理学系研究科、経済学研究科、新領域創成科学研究科、工学系研究科、情報理工学系研究 科、医学系研究科、総合文化研究科、Kavli IPMU と連携して行なっている「数物フロンティア国際卓越大学院」 (WINGS-FMSP)があります。

また理学系研究科が主体となり2019年に採択された 「変革を駆動する先端物理・数学プログラム」(FoPM)にも加わっています。 これらのプログラムのコース生として採用された大学院生は、 経済的支援を受けるほか、社会数理実践研究やインターンシップ、 国内外派遣などの活動を行なっています。 これらの活動は、大学院生の教育に大きな効果をあげていると思います。 この10年間で博士の学位を取得し博士課程を修了した学生は計220人でした。

この10年間にも、研究活動が活発に行われてきました。 個別にご紹介はしませんが、文部科学省関係の賞、日本数学会賞、 数学会分科会賞受賞者やICM 招待講演者などに多くの研究者が選ばれています。 その中で、女性の研究者が数々の輝かしい賞を受賞されていることは特筆に値すると思います。

数理科学研究科の中に新しくできた組織としては、2013年に設立された附属数理科学連携基盤センターがあります。 これは産業および諸科学との連携のもとで、学際的な数理科学の研究教育を進めるために設立されたものです。

数理科学研究科は駒場キャンパスの一員として、教養学部前期課程の数学教育を担っていますが、 学部教育の総合的改革の一環として、2015年には、4ターム制、105分講義、 理系1年生の新必修科目「数理科学基礎」の開始など、 カリキュラムの大きな変更が行われました。

東京大学大学院数理科学研究科基金が2014年に開設され、 若手研究者の養成を目的とした、寄付を受け入れられるようになりました。

2020年度からは、新型コロナウイルスによるパンデミックのために、数理科学研究科も大きな影響を受けました。 講義やセミナーがオンライン化するだけでなく、大学院の入試や論文審査もオンラインで行われました。 研究集会もオンラインあるいは延期、中止となり、海外からのビジターも激減し、 外国人客員教員による講義も延期あるいは中止となってしまいました。 玉原国際セミナーハウスも2020年度以来閉鎖が続いています。 職員の勤務形態も大学への出勤と在宅を併用しています。 コロナ禍も2年余りを経て、講義やセミナーは対面のものが復活し、 教員や学生の海外渡航も増えてきていますが、 正常化への道のりはまだまだ試行錯誤を重ねながらになると思います。

数学、数理科学は、20 世紀には抽象的な方向へ大きく自律的に発展しましたが、 21世紀に入り、物理学をはじめ他分野との交流が深まるとともに、 その応用の幅が広がり、社会からの数学、数理科学への要請も大きくなっているように感じられます。

数学、数理科学では、学生と研究者の男女比率に大きな偏りがあります。 このジェンダーギャップを縮めていくことは、 数理科学研究科に課せられた大きな課題です。

数理科学研究科は、30周年を迎え、 数学、数理科学のトップレベルの教育研究機関として、 皆様のご指導、ご支援を受けて発展させていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いします。

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