ニュース・イベント

2026年05月22日

小林俊行教授が、第67回藤原賞を受賞しました。

001_t.jpg

小林俊行教授が、藤原賞を受賞されました。藤原賞は、公益財団法人藤原科学財団により、自然科学分野において独創的かつ卓越した研究業績を挙げた研究者に授与される、わが国を代表する顕彰の一つです。近年では、数学分野において、1995年に志村五郎氏、2004年に森重文氏、2008年に柏原正樹氏、2012年に深谷賢治氏が受賞されていますが、東京大学の数理科学研究科の現職教員の受賞は今回が初めてとなります。

小林教授は、「無限次元の対称性の数学的研究」を主題として、まだ顕在化していなかった根源的問題を自ら提起し、35年以上にわたり、日本発の強い流れを形成しつつ、世界の数学研究を牽引してきました。その研究は、解析・幾何・代数を深いレベルで統合し、従来の枠組みを超える新たな数学の地平を切り拓くものです。

とりわけ、長らく体系的理解が困難とされてきた無限次元表現の制限・分岐の問題に対して、連続スペクトルを伴わない離散的な分解現象を発見し、その背後にある構造を初めて理論化しました。さらに、無限次元対称性の破れに潜む「秩序」を統一的に理解する理論基盤を構築しました。これらの成果は、表現論における分岐則理論の根源的なブレークスルーとして、その後の研究の大きな発展を促すと同時に、大域解析や整数論など周辺分野にも広く波及しています。

また小林教授は、距離構造がない幾何学において、既存の理論の延長では捉えられない現象を対象に、新たな概念と枠組みをゼロから構築し、不連続群の作用に関する本格的な一般理論を世界に先駆けて確立しました。さらに、その理論を基盤として、局所等質空間の大域幾何学構造を初めて体系的に明らかにしました。

さらに、複素多様体における可視的作用という概念の導入により、有限次元・無限次元を問わず現れる無重複表現を統一的に捉える理論を構築しました。これら一連の研究は、異なる数学分野の深い結合をもたらし、数学の広範な分野に影響を与える根源的な成果として国際的に高く評価されています。

こうした一連の研究は、重要な国際会議における基調講演などを通じて広く紹介され、世界中の第一線の研究者に大きな影響を与えてきました。さらに2025年には、小林教授の業績が現代数学にもたらした影響を総括する、3巻・約2000ページに及ぶ記念論文集(Festschrift)が国際的な学術出版社から刊行され、その学問的な重要性の大きさを示しています。

小林俊行教授はこれまで、日本数学会春季賞、大阪科学賞、日本学術振興会賞、井上学術賞、フンボルト賞(数学部門)、紫綬褒章、JMSJ論文賞、アメリカ数学会フェロー、ランス大学名誉博士号(フランス)など、国内外の数多くの顕彰を受けてきました。今回の藤原賞受賞は、そうした長年にわたる独創的研究活動が改めて高く評価されたものです。

また小林教授は、研究・教育のみならず、数学における東京大学の国際的な研究拠点としての役割強化にも大きく貢献してきました。2011〜2022年にはKavli IPMUの主任研究員として数学と物理学の融合研究を推進しました。さらに2023年からは、日仏数学連携拠点のCNRS初代拠点長として、両国の研究者交流や若手育成、長期的共同研究の基盤整備に尽力しています。 この度のご受賞を心よりお祝い申し上げますとともに、今後のますますのご活躍を祈念いたします。