代数系紹介

 
 当研究科においては代数学分野として,数論,代数幾何学,表現論,環論などが研究されている.  
 数論は,1,2,3,といった素朴な「数」の性質を扱う分野であるが,多彩で美しい広がりを見せている.数の体系の拡張に伴う対称性を扱う代数的整数論やガロア理論,楕円曲線のモジュライに端を発する保型形式の理論,素数pに関して数の集合を完備化するp進数の理論などが結びつき,数論幾何学として20世紀後半から飛躍的に発展してきた.95年のフェルマー予想の解決はその一端である.当研究科では高木貞治の類体論以来の伝統のもと,ガロア表現,分岐理論,類体論の高次元化,ラングランズ対応,p進ホッジ理論,p進微分方程式などで第一線の研究が行われている.  
 代数幾何学は,多項式で定義された図形を調べる分野である.複素解析,微分幾何,トポロジーの手法を取り込み,70年代に小平次元の理論,ホッジ理論,トーリック多様体の理論,極小モデルの理論などが整備された.近年では数理物理との関連も重要である.当研究科では,それらを用いて,高次元代数多様体,導来圏,K3曲面,カラビ・ヤウ多様体,ファノ多様体,特異点,モチーフ,代数的サイクルと代数的K理論,正標数の代数幾何など多彩な研究活動が行われている.  
 表現論は,対称性を線形代数的な手法を使って分析する方法論を扱う分野である.数論や数理物理をはじめとする様々な分野からの影響を受け,大きく発展し,また応用されてきた.実およびp進簡約群の表現論は,保型表現論におけるラングランズのプログラムを一つの指針として発展を続けている.代数的な手法に加えて幾何学的な手法を用いる幾何学的表現論も急速に進展している.また,数理物理では,無限次元リー環とその表現が重要な役割を果たしている.当研究科では,古典群の表現とヤング図形,それに付随する組み合わせ論的な構造,実およびp進簡約群の表現,簡約群のモジュラー表現などの研究が行われている.  
 環論は,数体系の一般化である環を調べる分野である.可換環の理論は,代数幾何学の局所理論とみなすことができる.非可換環の研究では,加群圏や導来圏の構造を分析する.箙を用いた表現論手法や傾理論などの圏論的手法が使われ,団代数の理論などに応用される.当研究科では,正標数の可換環論,整環の表現論などの研究が行われている.  
 代数学は四則に代表される演算を基礎とする研究分野であるが,幾何,解析,理論物理,計算機科学など他分野との結びつきを一層深めつつ発展をつづけている.

(文責 高木 俊輔)
(更新日 2021年4月5日)