講演会

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次回の予定

2026年02月20日(金)

16:30-17:30   数理科学研究科棟(駒場) 056号室
日比谷 紀之 氏 (東京大学 名誉教授/東京海洋大学 客員教授/(国研)海洋研究開発機構 アドバイザー)
月と海底地形が織りなす深海乱流の世界 (日本語)
[ 講演概要 ]
極域で強く冷却されて沈降した深層水は、約1500年をかけて全球を巡り、インド洋や北太平洋で湧昇した後、再び極域へと戻ることで、「海洋のベルトコンベア」と呼ばれる深層海洋循環を形成している。この循環に伴う低緯度から高緯度への熱輸送は、地球の温和な気候を維持する上で極めて重要な役割を果たしている。
深層海洋循環を維持するためには、深層水の湧昇を可能にする海洋表層から深層への浮力注入が必要であり、その主たる要因として深海乱流混合が考えられている。しかしながら、毎秒約2000万トンと推定される深層水をすべて表層へと戻すのに十分な乱流混合は、未だ観測・説明されておらず、いわゆる Missing Mixing 問題として残されてきた。
本セミナーでは、深層海洋循環モデルの高精度化に向けて、これまでに解明してきた研究成果を紹介する。具体的には、月による潮汐強制によって励起された内部潮汐波が海洋内部領域に伝播し、主密度躍層深度において散逸することで生じる乱流混合(far-field mixing)に着目し、その強度の緯度依存性とグローバルマッピングを示す。一方で、強い潮流が粗い海底凹凸地形を越えて流れることで生成される内部風下波が主役となる海底近傍での乱流混合(near-field mixing)について、その鉛直構造を明らかにするとともに、これらの力学過程を反映した新たなパラメタリゼーションを提案する。月と海底凹凸地形が織りなす深海乱流混合の実態を通して、深層海洋循環維持機構の理解深化を目指す。