数理人口学・数理生物学セミナー
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2015年10月28日(水)
14:55-16:40 数理科学研究科棟(駒場) 128演習室号室
大泉嶺 氏 (厚生労働省)
r/K選択説における確率制御理論の応用 (JAPANESE)
大泉嶺 氏 (厚生労働省)
r/K選択説における確率制御理論の応用 (JAPANESE)
[ 講演概要 ]
r/K 選択説が提唱されてから半世紀になろうとしている.この仮説は生物の生活
史戦略の中で現れる、短命多産多死、長寿少産少死の戦略を持つ種の違いをロジ
スティック方程式を構成するパラメータ、内的増加率rと環境収容力Kをもちいて
種がその人口規模に応じてどちらか一方のパラメータを最大化させる戦略の違い
であると論じたものである.この説は発表当初から賛否両論を巻き起こしてきた.
特に論争の的となったのは人口密度が環境収容力付近にある場合に、生活史進化
が環境収容力を最大化するために少産少死長寿という特質を獲得するという主張
である.実証研究はこの主張をウミガメや樹木、サルの群れ構造などの例を用い
て反駁してきた.2000年代に入るまでに様々な理論モデルや実証研究結果が示さ
れたが、議論の盛り上がりは“飽和した人口の中で起こる生活史進化とは何か?”
という疑問を残したまま停滞している.そこで、本研究では非線形齢―状態構造
モデルと生活史戦略理論を確率制御理論によって統合したモデルを構築し、この
問題に適用した.その結果、密度効果と確率制御理論の持つ生活史ノイズを組み
合わせることによって、飽和人口における最適戦略は従来のr/K選択説よりも多
様である事が示せた.本講演では、その結果を紹介したい.
r/K 選択説が提唱されてから半世紀になろうとしている.この仮説は生物の生活
史戦略の中で現れる、短命多産多死、長寿少産少死の戦略を持つ種の違いをロジ
スティック方程式を構成するパラメータ、内的増加率rと環境収容力Kをもちいて
種がその人口規模に応じてどちらか一方のパラメータを最大化させる戦略の違い
であると論じたものである.この説は発表当初から賛否両論を巻き起こしてきた.
特に論争の的となったのは人口密度が環境収容力付近にある場合に、生活史進化
が環境収容力を最大化するために少産少死長寿という特質を獲得するという主張
である.実証研究はこの主張をウミガメや樹木、サルの群れ構造などの例を用い
て反駁してきた.2000年代に入るまでに様々な理論モデルや実証研究結果が示さ
れたが、議論の盛り上がりは“飽和した人口の中で起こる生活史進化とは何か?”
という疑問を残したまま停滞している.そこで、本研究では非線形齢―状態構造
モデルと生活史戦略理論を確率制御理論によって統合したモデルを構築し、この
問題に適用した.その結果、密度効果と確率制御理論の持つ生活史ノイズを組み
合わせることによって、飽和人口における最適戦略は従来のr/K選択説よりも多
様である事が示せた.本講演では、その結果を紹介したい.