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2026年11月03日

松本幸夫名誉教授が令和8年秋の叙勲にて瑞宝中綬章を受章しました.

数理科学研究科名誉教授の松本幸夫先生が、令和8年11月3日付けで発令された秋の叙勲において、瑞宝中綬章を受章されました。

松本幸夫先生は、ご自身の研究を5次元以上の多様体のトポロジーからはじめました。1984年度日本数学会彌永賞の受賞理由となった余次元2手術理論は先生の初期のご研究の大きな成果です。そこから4次元多様体のトポロジーに転じ、2次元トーラスとホモトピー同値であるがスパインをもたない4次元多様体の存在を示し、多くの研究者にインパクトを与えました。原論文の証明が充分とは言えなかったロホリンの定理の明快な証明などのお仕事もあります。さらに、スピン4次元多様体についての11/8予想を提出しました。11/8予想は、のちに、古田幹雄氏によって肯定的におおよそ解決されています。

いずれもフィールズ賞受賞者であるドナルドソンとフリードマンによって起こされた4次元トポロジーの大きな変革の波に、松本先生は正面から遭遇することとなりました。しかし、ファイブレーションの構造をもつ4次元多様体のご研究によって活路を見出し、幾つもの独創的かつ先駆的な成果を今日まで生み出しておられます。まず、レフシェッツ束を写像類群におけるデーン・ツイストたちの関係式として捉えるという独創的なご着想とそこで例示された多様体は、今日にいたるレフシェッツ束研究の重要な指針になっています。また、モンテシノス氏との共同研究でリーマン面の(非安定的なものを含む)任意の退化の位相型を写像類群で完全に記述するという決定的な結果をえています。ごく最近は、足利正氏との共同研究で、リーマン面のモジュライ空間のドリーニュ・マンフォード・コンパクト化の上の普遍退化族をオービフォルドの枠組みで構成し、任意のファイバー複素曲面がこの普遍族の引き戻しとして得られることを示しています。

講義と講演はいつも丁寧でわかりやすく、かつ明快です。多彩な大学院生を育てられ、二十数名の博士学位を出しています。ご著書には「4次元のトポロジー」「トポロジー入門」「多様体の基礎」「Morse 理論の基礎」「トポロジーへの誘い」「4 次元多様体I, II」があります。とくに「多様体の基礎」は、1988年の刊行以来今日まで多様体を最初に勉強するために日本語で書かれた最良の教科書として不動の位置を占めています。また、1999年から2001年までは日本数学会理事長を務めておられます。

この度のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、今後の益々のご活躍を祈念いたします。