2025年度公開講座

東京大学大学院数理科学研究科
数物フロンティア国際卓越大学院

2025年度公開講座「D加群」

2025年11月22日(土)13:30~17:00(12:30開場) 
場所:東京大学駒場キャンパス 数理科学研究科棟・大講義室
最寄駅:京王井の頭線「駒場東大前」
アクセス:https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/access/index.html

*対面形式,事前登録不要,入場無料.
*当日は,東京大学駒場キャンパスにて「第76回駒場祭」が開催中です.
*対象:高校生,大学生,教員,数学に興味のある一般の方.

講師:池 祐一,阿部 知行,大島 芳樹

プログラム

12:30
開場

13:30-13:35
研究科長挨拶 平地 健吾(東京大学大学院数理科学研究科)

13:35-14:35
池 祐一(東京大学大学院数理科学研究科)
『微分方程式とワイル代数』
微分方程式は様々な現象を記述する道具であり,数学や物理をはじめとして自然科学ではいたるところに現れます.微分方程式が良い条件を満たすときには,方程式は代数的な扱いが可能になります.この講演では,まず定数係数の線形微分方程式を解く代数的な考え方を述べて,変数係数の場合には何が難しくなるのかを説明します.そこからワイル代数という微分作用素環の概念とそのありがたさを紹介して,D加群の一歩手前くらいまでを説明したいと思います.

14:45-15:45
阿部 知行(カブリ数物連携宇宙研究機構)
『D加群とリーマン・ヒルベルト対応』
私の講演は池さんの講演の続きとしてワイル代数を使ってD加群を導入するのが一つの目的です.微分方程式が与えられたとき,もちろん,それが「解ければ」とても良いのですが,一般的に微分方程式を解くのは簡単ではありません.そこで一つの微分方程式にこだわるのをやめゲージ変換で移りあう微分方程式は同じものだと思うことでD加群の概念に至ります.これだけ聞くとD加群はなにやら解析的なもののように聞こえますが,実はワイル代数上の加群という代数的な解釈が可能です.D加群自体は微分方程式より情報が少ないわけですが,一方でより柔軟な数学的対象になり,他の数学的対象とつながってきます.特にD加群の持っている情報が位相的な情報とピッタリ一致しているというリーマン・ヒルベルト対応は幾何と解析をつなぐとても美しい理論です.これらの理論は現代的な数学の言葉で記述され難解なものですが,出来るだけアイディアを中心に解説したいと思います.

16:00-17:00
大島 芳樹(東京大学大学院数理科学研究科)
『D加群の表現論への応用』
D加群は微分方程式に対する一般理論を構築するとともに,他のたくさんの数学の分野にも影響を与えながら発展してきました.特に,対称性を数学的に扱う表現論とよばれる分野とは深いつながりがあり,D加群の理論は表現論の研究において重要な方法となっています.この講演では,まず複素数平面に無限遠点をつけ加えた空間においてD加群を考え,微分作用素と空間の対称性の関係をお話しした後,二つの理論を結びつける中心的な結果であるD加群とリー環の表現との対応についてご紹介したいと思います.

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