Colloquium
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Organizer(s) | AIDA Shigeki, OSHIMA Yoshiki, SHIHO Atsushi (chair), TAKADA Ryo |
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URL | https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/seminar/colloquium_e/index_e.html |
Seminar information archive
2007/01/12
16:30-17:30 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
鳥海光弘 (東京大学・大学院新領域創成科学研究科)
地球変動にまつわるおかしな現象、2題
1、プレート境界で砂と泥に起こる雪だるま現象
2、プレート境界地震は確率共鳴か
鳥海光弘 (東京大学・大学院新領域創成科学研究科)
地球変動にまつわるおかしな現象、2題
1、プレート境界で砂と泥に起こる雪だるま現象
2、プレート境界地震は確率共鳴か
[ Abstract ]
地球科学における興味ある現象2題‐巨大固液混合体はどのように振舞うか。
最近の固体地球科学の大きな関心はプレート境界付近における固体・流体混合物質の挙動と境界型地震破壊やすべり運動、火山活動などとの関係である。プレート境界は地球上でもっとも活動的な部分であり、地球表層部分と地球内部とのエネルギー交換や物質交換が最も多く行われる部分でもある。とくに日本海溝や伊豆マリアナ海溝、南海トラフ、琉球海溝などの沈み込み境界部付近の地震波探査、電磁気探査、ボーリング掘削、などの研究がんたくさんの新しい事実を描き出している。
今回興味ある話として紹介するのは、プレート沈み込み境界では、海溝底で堆積した砂泥層が海洋プレートに乗ってプレート境界に引きずり込まれ、排水する過程で砂と泥に分離し、巨大な砂の塊が泥の層の中に分散する現象である。この現象の数理は砂が水を保持して流動化する過程と、プレート境界に持ち込まれた含水地質体が長期にわたりせん断変形を受ける過程で、砂の部分が次第に雪だるま状に衝突・合体する過程で示され、歪により巨大化する砂の塊は数キロに達することもありえる。こうして出来るプレート境界の構造は、大きさ分布がべき的になる砂の塊が境界に沿って拡がった泥の層内にクラスター上に分布するパターンを形成するだう。こうした構造形成はプレート境界部の力学特性を決めているだろう。
第2の話題はプレート境界における破壊の確率共鳴というテーマである、最近の研究ではプレート境界において発生する中小規模の地震はrepeating earthquakesまたはsimilar earthquakesとも呼ばれ、同一場所で繰り返しおこるせん断クラックである。そのサイズは0.01‐1km程度である。一方、巨大地震はこれに比べて大きく100kmx10km以上の破壊面をもつ。しかしこの巨大さにもかかわらず、やはり同一箇所が繰り返し破壊し、これをアスペリティと呼んでいる。一方、こうしたアスペリティの周囲は非アスペリティとよばれ、ゆっくりと滑っていて、流体を保持した岩石が分布し、低密度となっている。問題は大小の規模の破壊がどのような関係にあるのかという古典的なテーマである。プレート境界面上のいろいろな大きさのアスペリティが互いに重ならないであり続けているのか、もしくは互いに重なっているのかは重大である。観測的には巨大地震の破壊面は他の小さい破壊面と重なっている。つまり、境界面では、中小の多数のアスペリティが確率的に活動していて、巨大破壊の時にはそれらのアスペリティが一斉に動き出すということであろう。今回の話題提供ではこうした現象を確率共鳴として考えてみよう。
地球科学における興味ある現象2題‐巨大固液混合体はどのように振舞うか。
最近の固体地球科学の大きな関心はプレート境界付近における固体・流体混合物質の挙動と境界型地震破壊やすべり運動、火山活動などとの関係である。プレート境界は地球上でもっとも活動的な部分であり、地球表層部分と地球内部とのエネルギー交換や物質交換が最も多く行われる部分でもある。とくに日本海溝や伊豆マリアナ海溝、南海トラフ、琉球海溝などの沈み込み境界部付近の地震波探査、電磁気探査、ボーリング掘削、などの研究がんたくさんの新しい事実を描き出している。
今回興味ある話として紹介するのは、プレート沈み込み境界では、海溝底で堆積した砂泥層が海洋プレートに乗ってプレート境界に引きずり込まれ、排水する過程で砂と泥に分離し、巨大な砂の塊が泥の層の中に分散する現象である。この現象の数理は砂が水を保持して流動化する過程と、プレート境界に持ち込まれた含水地質体が長期にわたりせん断変形を受ける過程で、砂の部分が次第に雪だるま状に衝突・合体する過程で示され、歪により巨大化する砂の塊は数キロに達することもありえる。こうして出来るプレート境界の構造は、大きさ分布がべき的になる砂の塊が境界に沿って拡がった泥の層内にクラスター上に分布するパターンを形成するだう。こうした構造形成はプレート境界部の力学特性を決めているだろう。
第2の話題はプレート境界における破壊の確率共鳴というテーマである、最近の研究ではプレート境界において発生する中小規模の地震はrepeating earthquakesまたはsimilar earthquakesとも呼ばれ、同一場所で繰り返しおこるせん断クラックである。そのサイズは0.01‐1km程度である。一方、巨大地震はこれに比べて大きく100kmx10km以上の破壊面をもつ。しかしこの巨大さにもかかわらず、やはり同一箇所が繰り返し破壊し、これをアスペリティと呼んでいる。一方、こうしたアスペリティの周囲は非アスペリティとよばれ、ゆっくりと滑っていて、流体を保持した岩石が分布し、低密度となっている。問題は大小の規模の破壊がどのような関係にあるのかという古典的なテーマである。プレート境界面上のいろいろな大きさのアスペリティが互いに重ならないであり続けているのか、もしくは互いに重なっているのかは重大である。観測的には巨大地震の破壊面は他の小さい破壊面と重なっている。つまり、境界面では、中小の多数のアスペリティが確率的に活動していて、巨大破壊の時にはそれらのアスペリティが一斉に動き出すということであろう。今回の話題提供ではこうした現象を確率共鳴として考えてみよう。
2006/12/01
16:30-17:30 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
James McKernan (UC Santa Barbara)
Finite generation of the canonical ring
James McKernan (UC Santa Barbara)
Finite generation of the canonical ring
[ Abstract ]
One of the most fundamental invariants of any smooth projective variety is the canonical ring, the graded ring of all global pluricanonical holomorphic n-forms. We explain some of the recent ideas behind the proof of finite generation of the canonical ring and its connection with the programme of Iitaka and Mori in the classification of algebraic varieties.
One of the most fundamental invariants of any smooth projective variety is the canonical ring, the graded ring of all global pluricanonical holomorphic n-forms. We explain some of the recent ideas behind the proof of finite generation of the canonical ring and its connection with the programme of Iitaka and Mori in the classification of algebraic varieties.
2006/11/24
16:30-17:30 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
佐々真一 (東京大学・大学院総合文化研究科)
ゆらぎをめぐる風景
佐々真一 (東京大学・大学院総合文化研究科)
ゆらぎをめぐる風景
[ Abstract ]
「ゆらぎ」とは、決まった規則がないままにゆらゆらと漂っているさまをあわらしている。わたしたちは、明確な動きの背後には規則があると自然に信じ、その規則を探ろうとするが、「ゆらゆら」に特別の意味をみようとしないだろう。ところで、それがゆえに、「ゆらゆら」の背後に何らかの構造が埋まっていることがわかったときには、衝撃が一段と大きい。
ゆらぎから新しい構造を抜き出した例を並べると、理論物理学史のひとつの断片ができる。講演前半部分では、このなかから20世紀前半のふたりの研究成果をアレンジしながら紹介したい。そのふたりとは、アインシュタインとオンサーガである。ゆらぎと対峙することで、マクロ側の普遍的法則を抽出し、直接みることができないミクロ側の性質を暴いた。これらの成果を踏まえて、講演後半部分では、ゆらぎの背後に新しい構造を見出そうとするわたしたちの最近の試みを紹介したい。
「ゆらぎ」とは、決まった規則がないままにゆらゆらと漂っているさまをあわらしている。わたしたちは、明確な動きの背後には規則があると自然に信じ、その規則を探ろうとするが、「ゆらゆら」に特別の意味をみようとしないだろう。ところで、それがゆえに、「ゆらゆら」の背後に何らかの構造が埋まっていることがわかったときには、衝撃が一段と大きい。
ゆらぎから新しい構造を抜き出した例を並べると、理論物理学史のひとつの断片ができる。講演前半部分では、このなかから20世紀前半のふたりの研究成果をアレンジしながら紹介したい。そのふたりとは、アインシュタインとオンサーガである。ゆらぎと対峙することで、マクロ側の普遍的法則を抽出し、直接みることができないミクロ側の性質を暴いた。これらの成果を踏まえて、講演後半部分では、ゆらぎの背後に新しい構造を見出そうとするわたしたちの最近の試みを紹介したい。
2006/10/20
16:30-17:30 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
新井 仁之 (東大・数理)
視覚科学における数学的方法
http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/~seminar/colloquium.html
新井 仁之 (東大・数理)
視覚科学における数学的方法
[ Abstract ]
眼球から入った視覚情報は,網膜から始まり LGN,そして脳内で処理が行われる.この講演で扱うのはこのうち網膜から主として大脳皮質の V1 野で加えられる視覚情報処理である.研究のキーワードは「錯視」.錯視は視覚の解明のための一つの重要な鍵と考えられており,100年以上前からさまざまな方法で研究されてきた.しかし未だ不明な点が多い.本講演では,視覚情報処理の離散ウェーブレットを用いた新しい非線形数理モデルを作り,それを用いて行った色や明暗の錯視発生のメカニズムに関する研究結果を述べる.
[ Reference URL ]眼球から入った視覚情報は,網膜から始まり LGN,そして脳内で処理が行われる.この講演で扱うのはこのうち網膜から主として大脳皮質の V1 野で加えられる視覚情報処理である.研究のキーワードは「錯視」.錯視は視覚の解明のための一つの重要な鍵と考えられており,100年以上前からさまざまな方法で研究されてきた.しかし未だ不明な点が多い.本講演では,視覚情報処理の離散ウェーブレットを用いた新しい非線形数理モデルを作り,それを用いて行った色や明暗の錯視発生のメカニズムに関する研究結果を述べる.
http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/~seminar/colloquium.html
2006/07/07
16:30-17:30 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
重定 南奈子 (同志社大学)
周期的変動環境下における侵入生物の時空間パターンと伝播速度
重定 南奈子 (同志社大学)
周期的変動環境下における侵入生物の時空間パターンと伝播速度
[ Abstract ]
侵入生物の空間的な伝播に関する数理的研究は,Fisher (1937)の先駆的研究以来,外来植物や昆虫,伝染病などの侵入を中心に,主として一様な空間における拡散増殖モデルを用いて進められてきた.しかし,実際の自然環境は,森,林,河川,道路などの,生物にとって好適な環境と不適な環境がパッチ状に入り混じっており,決して一様な空間とはいえない.
本研究では、帯状の好適生息地と不適な生息地が交互に配列する2次元縞状 分断環境の中を、侵入生物が分布拡大する過程を拡散係数と増殖率が好適生息 地と不適生息地で異なる拡張Fisher modelを用いて記述し、それを heuristicな方法を用いて解くことにより,侵入種の分布拡大パターン,ならびに,伝播速度の数学公式を導いた.
侵入生物の空間的な伝播に関する数理的研究は,Fisher (1937)の先駆的研究以来,外来植物や昆虫,伝染病などの侵入を中心に,主として一様な空間における拡散増殖モデルを用いて進められてきた.しかし,実際の自然環境は,森,林,河川,道路などの,生物にとって好適な環境と不適な環境がパッチ状に入り混じっており,決して一様な空間とはいえない.
本研究では、帯状の好適生息地と不適な生息地が交互に配列する2次元縞状 分断環境の中を、侵入生物が分布拡大する過程を拡散係数と増殖率が好適生息 地と不適生息地で異なる拡張Fisher modelを用いて記述し、それを heuristicな方法を用いて解くことにより,侵入種の分布拡大パターン,ならびに,伝播速度の数学公式を導いた.
2006/06/23
17:00-18:00 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
Robert Gompf (University of Texas at Austin)
25 years of exotic $\\mathbb{R}^4s$
Robert Gompf (University of Texas at Austin)
25 years of exotic $\\mathbb{R}^4s$
[ Abstract ]
A quarter century ago, 4-manifold theory was revolutionized by the Fields-Medal winning breakthroughs of Freedman and Donaldson, with Freedman showing that topological 4-manifolds behave like their higher dimensional counterparts, but Donaldson showing that smooth 4-manifolds behave in a completely different way. The interplay between these theories produces results unique to dimension 4: A fixed topological 4-manifold often admits infinitely many distinct smooth structures, for which no classification scheme is yet available. The quintessential example is that in contrast with other dimensions, Euclidean 4-space admits exotic smooth structures. That is, there are "exotic R^4s" homeomorphic to R4 but not diffeomorphic to it. We will survey what has been learned about these strange creatures in the last quarter century, and exhibit an explicit example.
A quarter century ago, 4-manifold theory was revolutionized by the Fields-Medal winning breakthroughs of Freedman and Donaldson, with Freedman showing that topological 4-manifolds behave like their higher dimensional counterparts, but Donaldson showing that smooth 4-manifolds behave in a completely different way. The interplay between these theories produces results unique to dimension 4: A fixed topological 4-manifold often admits infinitely many distinct smooth structures, for which no classification scheme is yet available. The quintessential example is that in contrast with other dimensions, Euclidean 4-space admits exotic smooth structures. That is, there are "exotic R^4s" homeomorphic to R4 but not diffeomorphic to it. We will survey what has been learned about these strange creatures in the last quarter century, and exhibit an explicit example.
2006/05/12
16:30-17:30 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
浜窪 隆雄 氏, 油谷 浩幸 (東京大学先端科学技術センター)
ポストゲノム時代のシステム生物学の問題について
浜窪 隆雄 氏, 油谷 浩幸 (東京大学先端科学技術センター)
ポストゲノム時代のシステム生物学の問題について
[ Abstract ]
ヒトゲノム30億塩基対のシークエンスは解読されましたが、その遺伝暗号の意味がわかっている部分はほんの数パーセントにすぎません。DNAチップや質量分析機の発達とコンピューターの進歩により、細胞や組織で読まれている遺伝子の量や生ずるタンパク質の種類を網羅的に解析する手段ができています。これらのトランスクリプトーム解析やプロテオーム解析により多数の遺伝子あるいはタンパク質の挙動を調べることが可能になってくると、生命現象の基礎となっている調節メカニズムが単一分子の相互作用だけで説明できないのではないかと思われてきました。多数分子の挙動とそれらの相互作用をどのように解析することができるかということが、生命現象を分子から生体システムとして理解するために必要なのではないかと感じています。これまで、我々の解析で得られているデータをお示しし、現在の生命科学が直面しつつある問題点を説明できればと思います。
ヒトゲノム30億塩基対のシークエンスは解読されましたが、その遺伝暗号の意味がわかっている部分はほんの数パーセントにすぎません。DNAチップや質量分析機の発達とコンピューターの進歩により、細胞や組織で読まれている遺伝子の量や生ずるタンパク質の種類を網羅的に解析する手段ができています。これらのトランスクリプトーム解析やプロテオーム解析により多数の遺伝子あるいはタンパク質の挙動を調べることが可能になってくると、生命現象の基礎となっている調節メカニズムが単一分子の相互作用だけで説明できないのではないかと思われてきました。多数分子の挙動とそれらの相互作用をどのように解析することができるかということが、生命現象を分子から生体システムとして理解するために必要なのではないかと感じています。これまで、我々の解析で得られているデータをお示しし、現在の生命科学が直面しつつある問題点を説明できればと思います。
2006/04/21
16:30-17:30 Room #123 (Graduate School of Math. Sci. Bldg.)
Dmitri Orlov (Steklov Institute)
Homological mirror symmetry
Dmitri Orlov (Steklov Institute)
Homological mirror symmetry
[ Abstract ]
Homological mirror symmetry is a relation between algebraic and symplectic sides of a geometric object. Original mirror symmetry came from physics, but homological mirror symmetry conjecture formulated by M.Kontsevich for Calabi-Yau varieties is an attempt to give a mathematical explanation of this phenomenon. We will try to describe main principles of homological mirror symmetry and the extension to a non-Calabi-Yau case.
Homological mirror symmetry is a relation between algebraic and symplectic sides of a geometric object. Original mirror symmetry came from physics, but homological mirror symmetry conjecture formulated by M.Kontsevich for Calabi-Yau varieties is an attempt to give a mathematical explanation of this phenomenon. We will try to describe main principles of homological mirror symmetry and the extension to a non-Calabi-Yau case.