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基本文献紹介--数学基礎

基本文献紹介--現代解析
基本文献紹介--諸科学分野

(2009年度~2014年9月)
科学研究費補助金
基盤研究(S)
「複雑現象に挑む
形態変動解析学の構築」

形態変動解析学について  

 

 

形状や形態の変動を正確にとらえ、また予測することは、数学分野だけではなく、諸科学や技術全般の複雑な現象を理解し、解明していくために大変重要です。例えば、結晶の表面がどのように形を変化させていくかといった材料科学の問題や、水の表面の運動のような流体力学の問題など、問題は多岐にわたります。また画像からノイズを除去するという問題も、形態を変動させる問題ととらえることができます。社会科学での意見の形成分布状況の変化も、このような問題ととらえることができます。
 
幾何学は図形の特徴の分類を一つの目的とするのに対し、解析学は極限、収束の概念をもとにさまざまな量の変動を扱ってきました。質点の運動を微分方程式により記述するというのは、その最も古典的な例の一つです。形態変動解析学は、質点のような点の動きではなく、形や形態の変動を扱う解析学です。質点の運動ですと、独立変数が時間変数一つの常微分方程式ととらえることが多いのですが、形の変化や変動の解明には、独立変数として空間変数も必要となり、偏微分方程式が必要となります。形態変動を解析するためには、まず時間変数を含む偏微分方程式(発展方程式ともいう)を導入し、そのうえで、これを解かなければなりません。

 

ところで、「微分方程式ならば適当な数値計算法でコンピュータで解けばよいではないか!」というご意見もあるかと思いますが、ご承知のように、微分方程式は連続する量を扱い、通常のコンピュータは離散量を扱っているため、コンピュータでの計算はどうしても近似計算となります。もとの問題に合った適切な近似をしなければ、オーバーフローを起こしたり、あるいは実は異なる微分方程式の解を近似していた、ということさえ起こりえます。どのような近似法が正当であるか、つまり真に求めたい解を近似しているのかを研究することは、解析学の重要な課題の一つです。したがって、ただコンピュータをやみくもに動かせばよいというものではありません。

 

形態変動解析学の重要なテーマの一つは、非線形偏微分方程式(特に非線形発展方程式)の解析と言えるでしょう。典型的な数学上の問題を次に紹介します。

 

(1) 解の存在性と一意性

 

 

「与えられたデータに対して方程式を満たす解がただ一つ存在するか?」とう問題です。初期値問題の場合は、短い時間解が存在するのか?(局所解の存在問題)、さらにそれが長い時間存在するのか?(大域解の存在問題)が重要になります。非線形問題ですので、有限時間でカドのような特異点の出現が起こりうるので、その対応が鍵になります。

 

(2) 解の挙動

 

  「長時間経過後にどのような形や形態になっていくのか?」といった問題です。一定の形に落ち着いた場合は、対応する現象で観察されやすい、安定な形である可能性が大きいと考えられます。

 

(3) 特異点解析と弱解

 

  一粒の液滴がちぎれたりするなど、初期形状が滑らかであっても解は滑らかでなくなることがあります。このように特異点が発生すると、微分方程式の解とみなすことは困難になり、発生以降の状態を追跡するためには「解」概念の拡張が必要になります。またどのような形の特異点が現れるのかを解析することも重要な研究課題です。

 

(4) 近似法の解析

 

  同じ現象でもさまざまなモデルがあります。これらモデルの相互の関係、特にあるモデルの近似になっているかどうかを考察することは重要です。

 

これらの問題について、変分解析、粘性解析、実解析、関数解析、確率解析等からさまざまな手法が考案され、形態変動解析学は日進月歩の分野です。

 

本サイトの <基本文献紹介> について

 

 

 

 

3次元ユークリッド空間の中を動く閉曲面で、その法線方向の速度(法速度)が平均曲率に等しいことを要求している平均曲率流方程式や、2次元ユークリッド空間の中を動く閉曲線で、その法速度が曲率に等しいことを要求している曲線短縮方程式、それらを一般化したいわゆる曲面の発展方程式について、基本的文献を紹介します。網羅的ではありませんが、参考になりましたら幸いです。

 

これらの問題について、変分解析、粘性解析、実解析、関数解析、確率解析等からさまざまな手法が考案され、形態変動解析学は日進月歩の分野です。平均曲率流方程式は、1956年に材料科学者W. W. Mullinsが金属の焼きなまし時の金属粒界(結晶面)の変動を記述するために導入した方程式です。大雑把にいえば、表面積を最も減少させるように、曲面を法線方向に動かすということを要請している方程式です。例えば初期形状が球面の場合、中心は変わらず球のまま有限時間で一点に縮む形状変化が解となります。しかし、くびれが細いダンベルの場合は、有限時間でくびれの部分がちぎれてしまい、くびれの部分に特異点が出現します。平均曲率流方程式については上記 (1)、(2)、(3)、(4) のいずれもこの数十年の研究によってかなり明らかになってきました。またそこで生み出された手法は、他のさまざまな問題の解析のヒントになる事柄が多いので、ここではまず平均曲率流方程式についての文献を主体に紹介します。

   

このサイトについて

 

この「形態変動解析学国際センター」はWeb上のセンターです。形態変動解析学についてご紹介をしてまいります。

 
   Last updated: April 28, 2017
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