私がここ数年(あるいは大学院で数学をやり始めて以来?)関心を持っているのは 無限次元多様体とくにリーマン多様体上の道の作るパス空間、 閉道のなすループ空間上の解析である。とくにそれらの空間には、 Brown運動の確率測度が入るのでそれによりラプラシアンにあたるものなどが 定義される。 いま特に等周不等式の周辺に関心があるが、それについて少し説明しよう。 多様体がユークリッド空間であれば、ループ、パスのそれぞれには ガウス測度が入り等周不等式、対数ソボレフ不等式等も成立する。 (対数ソボレフ不等式は等周不等式から示される。) こんなところに、等周不等式がでてくるのは不思議かも知れないが、 気体分子運動論にでてくる次のPoincareによる事実から 当然ともいえるのである。 すなわち、d-次元のガウス測度は、半径がn^{1/2}のn-次元球面の一様測度の d-次元成分への射影のn→∞で得られる。そこで極限移行で球面上の 等周不等式がそのままガウスのケースには成立するのである。 実は、パス空間では一般のリーマン多様体上でやはり等周不等式が成立する。 この有限次元の時にはLevy-Gromovの等周不等式と呼ばれる不等式は Ricci曲率が正のときに成立するものである、そうではないような パス空間でもガウスの時のように成立するのは興味深い。 ところでこれらの等周不等式は統計力学的にはなんらかの意味があるの だろうか? いわゆる対数ソボレフ不等式は相転移の有無と関係が あるが。。。
1997年度前期の講義のためにマルコフチェーンの 巡回セールスマンの問題やbipartite graphのマッチングの問題 などへの応用を少し、勉強している所です。 なかなか面白い。うまく講義で説明できるかどうか???
現在(1998年秋)は10月17日の情報科学特別講義の「確率論と情報科学」の 講義でオプションの価格付の話の準備をしている。 マルチンゲールの表現定理が市場の完備性オプションの初期価格 決定の鍵になるのは面白い。 参考に講義で使用したプリントを置いておきます。 (pdf file, 101KB ) (tex file )