連絡事項
8月 5日 期末試験採点講評(8月6日加筆修正)
問題1 (1) (1/2) log (x2+y2+z2) (2) log 3
問 (1) によって ω = d f は完全形式ですから、微分積分学の基本定理により、端点の座標を関数 f に代入して引き算すれば問 (2) の答が求まります。曲線のパラメータ表示をフルに使って計算する必要はありません。
問題2 求める行列の成分は次の通りである。
0 | −c3 sin θ | c2 sin θ |
c3 sin θ | 0 | −c1 sin θ |
−c2 sin θ | c1 sin θ | 0 |
問題3 (1) 2 (2・21/2−1) π/3
曲面のパラメータ表示を用いた面積要素の計算がきちんとできれば、あとは簡単な積分の問題です。重積分の極座標変換と混同して余計に r 倍して間違えたと思われる答案がありました。
問題4 (2) 停留点は (1, 0, 0), (0, 1, 0), (0, 0, 1), (6−1/3, 6−1/3, 6−1/3) の四つで、停留点での値のうちの最小のものは 3・6−2/3 すなわち 61/3 / 2 である。
ラグランジュ関数の停留点の計算は、やり方によって易しくも難しくもなります。関数の特徴を生かして臨機応変に計算するのが良いのですが、そのあたりの巧拙が得点に影響したように見受けられます。なお、与えられた関係式の定める曲面は閉集合ですが有界ではありません。
講義進行(夏学期)
講義の進行により、当初の予定を変更しました。
注意事項
遅刻厳禁・私語厳禁です。
授業中の携帯電話・スマートフォン・パソコン等の使用を禁止します。
授業内容に関わる質問は授業中にお願いします。授業内容で理解できない点があれば、その場で手をあげて大きな声で質問してください。 板書の書き誤りに気が付いたら、その場ですぐに指摘してください。
大人数に対するレポート等の返却を、個人のプライバシーに配慮しつつ、混乱なく速やかに行うために、名前を呼ばれたら、大きく手を挙げて、大きな声で『はい』と返事してアピールしてください。
提出物の名前には必ずふりがなを振ってください。
この授業は2年理科生向けのベクトル解析の講義です。 文科生も履修できます。
シラバスに書かれた授業の目標、概要は次の通りです。
空間や空間内の図形上の解析を中心に,多変数のベクトル値関数の取り扱いを学ぶ.数学Iで学んだ内容の発展であるがより幾何学的である.高次元の幾何学,相対性理論,場の理論,電磁気学,流体力学などを本格的に勉強する際には必要となる科目である.
この講義は、月曜日の 2限(10:40〜12:10)に教養学部523教室で行います。
この講義は数理科学IIIのシラバスの授業計画 (下に転載) に基づいて行います。
この講義の参考書として次の書籍をあげておきます。いずれも優れた書籍であると思います。
清水勇二「基礎と応用 ベクトル解析」
この講義にちょうど良い内容の教科書です。 ベクトル解析のスタンダードな内容がテーマごとに良くまとまっていて、学びやすいでしょう。
スピヴァック「多変数の解析学―古典理論への現代的アプローチ」
第2章§5§6,第3章§5§6および第4章以降がこの講義と関連する部分になります。
ベクトル解析の主要な定理であるストークスの定理を現代数学的な立場から扱うことを目標とし、それに至るまでの内容がシステマティックに書かれています。現代数学的な記述がなされているので、それに慣れないと学び難い面もあると同時に、手順を追ってしっかりと学べば、非常にすっきりとした理解に到達することができます。
ただし、種々の数学用語に関して、スタンダードでない訳語が主に使用されているので、読む際には注意が必要です。
この講義の成績は期末試験によって判定します。講義のなかで行う小テストやレポートなどは純粋に教育目的で行うものですので、その点数・評価は成績には影響しません。
授業計画
数理科学 III のシラバスに書かれた授業計画を転載しますので、参照してください。
陰関数と逆関数:関数による関係式f(x1,…,xn)=0があれば,適当な状況下では一つの座標を他の座標の関数として表現できること(陰関数定理)を学ぶ.また陰関数の微分と関係式の偏微分との関係を考察する.陰関数定理とその延長である逆関数定理を用いて,いくつかの関数の零点として表される図形(部分多様体)のパラメータ表示を考察する.このようなパラメータ表示の応用として,ラグランジュの未定乗数法にも触れる.
接ベクトルと接空間:空間図形の接ベクトルの意味をさまざまな角度(図形上の曲線に沿った速度ベクトル,方向微分,一次の微分作用素)から考察し,接ベクトル全体がつくるベクトル空間として接空間の概念を導入する.
ベクトル場:接ベクトルの空間分布であるベクトル場とベクトル場の力学的意味づけ(フロー)について簡単に解説する.関数から決まる勾配ベクトル場などの基本例にも触れる.
微分形式とその積分:多重積分の計算と変数変換則を復習し,このような変換則と調和する概念としての微分形式と,その積分(線積分・面積分・体積分)を学ぶ.多重積分を形式化することによって実際の計算が簡易化することを体験する.
ストークスの定理:面積分と線積分,体積分と面積分を結ぶ公式であるストークスの定理と,その特殊ケースとしてグリーンの定理,ガウスの定理を学ぶ.この二つの定理によってベクトル場の発散や回転の流体力学的意味付けを理解する.
4月28日 レポートについて
本日の授業で演習問題を配布し、レポート課題を出しましたが、出席している学生数が想定よりも多かったので、次のように変更します。
問題1.3, 1.4, 1.5 から1題を選択してレポートを提出してください。
余った表紙は次回に取っておいてください。
授業に出席せずにレポートの添削だけを受けることはご遠慮ください。
5月12日 指導方針について
レポートは提出せずに、答え合わせだけしたいから解答がほしいという意見がありました。
言うまでもなく、数学の学習に際しては、内容を正しく理解し、もって定理や公式を正しく運用する技能を身に着けることが大切ですが、解答を見て答え合わせするだけでそれができるようになるとは限りません。
現在あるいは過去の学習で誤った理解をしてしまった場合には、その誤りを見つけ出して正す必要がありますが、誤りの内容は千差万別ですので、それをすべて列挙して解説するわけにはいきません。(典型的に誤りについては、講義で言及するように心がけていますが、私の経験では、身に染みて話を聞かない学生が多い印象です。)
また、人は機械ではありませんので、定理や公式の運用を間違えることがあります。間違えてしまったときに、その間違いに自分で気づき、自分でそれを正すことができるような実力をつけることが非常に大切です。解答を見て答え合わせをする学習ばかりでは、そのような実力はなかなか向上しません。
以上の点から見ると、黒板を用いた発表形式の演習がもっとも実力向上に効果的なのですが、学生数と時間数から言って、この授業で実施するのは無理なので、そのかわり、一部の課題についてではありますが、レポートや小テストの添削指導によって実力向上を目指す方針です。問題が易しすぎたり難しすぎたりすると目的が達成されませんので、そうならないように選択式にしたり、難易度を変えたりしますが、必ずしも100パーセントうまく行くわけではないので、その点はご容赦ください。
もちろん、自分で答え合わせのできる状況で、答え合わせをしながら学習することにも意義がありますが、その目的のためには、この講義で挙げている参考書に掲載された問題に取り組むことができます。従って、それに加えて講義で配布した問題全部に解答を与える必要は認められません。しかし、まったく解答を出さないと言っているわけではなく、必要に応じて解答を配布することもあります。一部の問題については、解答の書き方のお手本として詳細な模範解答を配布する場合もあります。(ただし、それをお手本と考える学生は少数で、単なる詳しい解説としか受け取らない傾向が見られるのが残念です。)
5月12日 内積に関する質問について(5月14日追記)
授業終了後に「・・・を正規直交基底とする内積を与え」の意味が分からないという質問がありました。この文章は「・・・が正規直交基底となるように内積を定め」と言い換えても同じです。
これでも意味の分からない人は、数学IIの理解が不十分と思われます。こういうこともあろうかと考えて、4月14日の最初の授業のなかで内積という言葉の意味について触れましたので、これ以上は繰り返しませんから、各自で数学IIの内容を復習してください。
5月14日 レポートについて
指示に従っていないレポートがたくさんありました。
複数の問題の解答をひとまとめにして提出したもの
ノートの切れ端やルーズリーフをレポート用紙代わりにしたもの
ほとんど式ばかりで文章を書いていないもの
綴じ方の間違っているもの
課題として指定した問題以外の問題を解いて提出したもの
複数の問題の解答をひとまとめにして提出したもので、提出時に申し出て一部を削除したもの一名についても、公平性の観点から指示に従ってやり直して5月19日に提出してください。
提出時刻は5月19日授業開始時とします。これより遅れたものは受け取りません。
5月27日 板書について
陰関数定理の結論(2)の Jacobi 行列の式で a を x に訂正し、(a, b) を (x, g(x)) に訂正して下さい。
陰関数定理の証明で U と V の選び方の説明が不適切でしたので、来週の授業で訂正します。
6月 2日 未定乗数法の最後の部分
時間が無くなって省略しましたが、大したことではないので書いておきます。次のように Lagrange 乗数 λ = (λ1, . . . ,λm) の値を定めました。
λ = gx (a, h(a)) fy (a, h(a))-1
この式の両辺に右から行列 fy (a, h(a)) を掛けると
λfy (a, h(a)) = gx (a, h(a))
となります。移項すると
gx (a, h(a)) − λfy (a, h(a)) = 0
となりますが、これは Lagrange 関数について Fy (λ, a, h(a)) = 0 が成り立つことにほかなりません。これと,すでに示した Fx (λ, a, h(a)) = 0 と Fλ (λ, a, h(a)) = 0 を合わせると、(grad F) (λ, a, b) = 0 となります。ただし b = h(a) です。
6月 2日 板書の書き誤りについて
「m個の変数が残りの変数の関数として表される」と書くべきところ、「m個の変数の関数として残りの変数が表される」と書いてしまった箇所がありますので、訂正してください。
指摘してくれた学生さん、どうもありがとう。気づいたらすぐに指摘してくれると助かります。