私のところで大学院入学を希望する方へ
以下は,東大数理の大学院志望者向け紹介のページに2024年に書いたものに少し加筆したものです. 私の研究についてのもう少し詳しい説明はここにあります.さらに詳しいことを知りたい場合は,(研究者向けに書いたものですが)日本語の記事がここにいくつかあるので,眺めていただくと雰囲気が分かるかもしれません. また,私自身がこれまでどうやって来たかをお話ししたインタビュー動画と,私の2024年ごろまでの研究についての東大での講演のビデオがあります.指導教員選びの参考になるかもしれません.なお,私を指導教員に希望する場合は,できるだけ早い段階で連絡を取っていただければお互いのために便利かと思います.学年や現在の所属は問いません.対面あるいはオンラインで面談をすることも歓迎です.
氏名:今野 北斗(こんの ほくと)
分野名:幾何学
キーワード:4次元多様体,ゲージ理論,微分同相群
現在の研究概要:
ゲージ理論の展開およびそのトポロジー・微分幾何学への応用を行っています.
4次元は多様体の分類理論の中で特異的な次元ですが,(物理学のゲージ理論由来の)ある非線形偏微分方程式を4次元多様体上で考えると,舞台となった4次元多様体のトポロジー・幾何学の興味深い情報を引き出せることが知られています.
私の研究の中心は,ゲージ理論を4次元多様体の族に対して展開する「族のゲージ理論」の基礎を確立し,様々な幾何学的問題に応用することです.
とりわけ重要な応用の対象は4次元多様体の微分同相群です.
この位相群を,主に他の次元との比較,位相的カテゴリーと可微分カテゴリーとの比較の観点から調べています.
ゲージ理論や4次元多様体に関連するその他の諸課題も研究中です.
隣接する次元である3次元多様体のFloer理論も使います.
これまでに行ってきた研究の一部を挙げると,エキゾチックな4次元多様体の研究,4次元多様体内のエキゾチックな余次元1, 2の部分多様体および埋め込みの研究,4次元多様体への群作用の研究,4次元多様体の正スカラー曲率計量の存在問題や正スカラー曲率計量のなす空間の研究,3次元多様体内の結び目とそれが4次元多様体内で張る曲面の研究などです.
なお,ゲージ理論は元々は物理学に由来するものですが,私自身のこれまでの研究は物理との関係を調べているわけではなく,もっぱら数学の中の問題意識で研究を行っています.
- 自らが心から面白いと思える研究課題を見いだして欲しいと思います. そのような課題を見いだし,解決するためにも,主体的であることと,他者と多くの議論をすることを推奨します.
- 特定の分野で専門性を高めることと幅を拡げることは研究の両輪で,どちらも重要です. 私のおすすめは,まずは自分が世界で一番詳しい領域をひとつ作って,それを足がかりに興味を拡げていくことです.
- 私の見てきた範囲では,これこれでなければ研究者として上手くいかないとか,これこれであれば上手くいくというタイプの主張には,大抵反例がありました. 研究者を志す場合,最終的には自分なりのやり方を見つけるしかないのだと思います. 様々な視点や価値観を持つ人と接した経験はその上で有効です. 積極的に国外を訪れ,多くの人と交流することを推奨します.
- 学部レベルの幾何系の科目で扱われるもの:多様体,微分形式,ホモロジー,コホモロジー,基本群と被覆空間
- ベクトル束・主束とその上の接続と曲率.例えば今野宏「微分幾何学」の第2章や第6章の内容です.
- 特性類.例えば Milnor-Stasheff の "Characteristic Classes" が定評ある本です.
- 調和積分論 (Hodge理論) とそれに必要な関数解析.例えば Warner の教科書 "Foundations of Differentiable Manifolds and Lie Groups" の6章 "The Hodge Theorem" をきちんと理解していることが目安です.そこで出てくるSobolev空間や楕円型偏微分作用素の一般論は必須です.Hodge理論の主張のみ書かれていて証明の詳細が省かれている本も多いですが,ゲージ理論の準備としては証明とそれに使われる道具を把握しておくことが不可欠です.
なお,予備知識というわけではありませんが,私に近いゲージ理論研究の雰囲気を知りたい場合は,深谷賢治「ゲージ理論とトポロジー」,笹平裕史「サイバーグーウィッテン方程式―ホモトピー論的手法を中心に」,上正明・松本幸夫「4次元多様体I, 4次元多様体II」などの本を眺めてみると,どのようなものかより分かるかもしれません.