11月17日(土):13:00~17:20
東京大学大学院数理科学研究科 (駒場キャンパス, 井の頭線駒場東大前下車)
於: 数理科学研究科大講義室
(渋谷寄り踏切から東大構内に入ると研究科棟はすぐ右手にあります。大講義室は渋谷寄りの一番奥にあります。)
13:00~13:50 俣野 博(東京大学大学院数理科学研究科)
世の中には「非線型現象」と呼ばれるものが数多く存在する.宇宙に現れ
るブラックホールも,波形を変えずに長い距離を伝播する光ソリトンも,大
気の流れも,いずれも非線型現象である.非線型現象とは,広い意味合いで
とらえれば,非線型のモデル方程式で記述される現象を総称する.やや狭い
意味合いでとらえれば,非線型性に固有の,つまり線型現象には見られない
特徴が強く現れた現象を指す.
では,非線型性に固有の特徴とは何であろうか?本講座では,身近な例を
中心に,力学系という数学的な枠組みによって非線型現象の特徴を浮き彫り
にすることを目指す.
14:00~14:50 吉田 善章(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
私たちを取りまくさまざまな複雑性を,現代科学の地平において捉えようと
する新たな科学運動が起こっている.本講座では,複雑系がもつ秩序を理解す
るための,微分方程式を使った力学系の立場からのアプローチについて述べる.
逆説的ないい方であるが,変動を研究するためには「変わらないもの」を調べ
る,というのが物理のやりかただ.変形に対して不変な性質を探すという意味
で「トポロジー」を調べるということもできる.銀河や太陽プラズマ,惑星大
気における「渦」に焦点をあてて解説する.
15:30~16:20 時弘 哲治(東京大学大学院数理科学研究科)
互いの衝突によって形を変えない,あたかも粒子のような波を,ソリトンと
呼ぶ.ソリトンの研究は,運河を伝わる孤立波の実験的な研究から始まった.
19世紀の終わりに,浅い水の波を記述する数理モデルとして,KdV 方程式と呼ば
れる非線形偏微分方程式が考案され,この方程式が期待通りに「ソリトン解」
を持つことが示された.しかし,複数のソリトンがどのように相互作用するか
が解明されたのは,比較的最近のことである.今日では,非線形現象のさまざ
まなモデル方程式にソリトン解の存在することが知られている.これらの方程
式は,いわゆる「可積分系」のもっとも基本的な例であり,豊富で美しい数理
構造を有している.
本講座では,私たちの身の回りに存在するさまざまなソリトンを紹介すると
ともに,ソリトン解を持つ非線型方程式の背後にある数理構造について入門的
な解説を行う.最近研究が進んできた離散問題に現れるソリトンについても触
れたい.
16:30~17:20 山本 昌宏(東京大学大学院数理科学研究科)
「逆問題へのお誘い」
--- 見えないものを観るための数学
逆問題は、結果についての情報から原因を推定する
問題である。
この意味で、原因がわかっていてその結果
を決定する順問題と逆の関係にある。
多くの場合、原因は隠れており、結果は
観測できる。その結果、逆問題においては
直接見たり触れたりすることができな
い対象を,実際に見たり聞いたりできるデータ
によって決定する問題になる。例えば、材料を壊すこと
なく内部の欠陥を表面での観測によって決定する
非破壊検査技術や医学で診断に有用なトモグラ
フィーなどは典型的な例である.観えないものを決定
することが逆問題のもつ共通の特質であるので,
観測データは限られたものとならざるを得ない.その
結果として,いろいろな困難さがつきまとう.
本講座では,実際の現場に現れる逆問題の事例
紹介をまず行う.次に逆問題特有の困難さに如何に
対処するかを数学解析の立場で簡単に解説したい.
参加無料、申し込み等は不要です。(数理科学研究科大講義室は約300名収容可)
連絡先
東京大学大学院数理科学研究科 片岡清臣(広報担当)
電話兼FAX:03-5465-7029
過去の解析学公開講座:1997年