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RIMS共同研究(公開型)  「表現論とその周辺分野の広がり」

日時
2017年6月20日(火)–6月23日(金)
場所
京都大学数理解析研究所 420号室(アクセス
世話人
阿部 紀行( 

スケジュール

[PDF(概要も含む)]
9:50–10:5011:05–12:0513:20–14:2014:35–15:3515:50–16:50
20日(火) 田内 島本
21日(水) 大島 Alex 小寺 宮本 元良
22日(木) 池田岳 池田薫 織田・示野 跡部 久保
23日(金) 松本 和地

講演概要

田内 大渡(東京大学大学院数理科学研究科)  「Multiplicity of degenerate principle series with infinite orbits」

$G$を実簡約リー群,$P$をその極小な放物型部分群,$H$を$G$の実簡約閉部分群とする.このとき,$P$開軌道が等質多様体$G/H$上に存在すること,もしくはそれと同値なことであるが,$G/H$上の$P$軌道の個数が有限であるとき,正則表現$C^{\infty}(G/H)$が$G$の各表現を高々有限回ずつしか含まないことが,小林俊行・大島利雄両氏により代数解析を用いる手法で証明された.また小林俊行氏はより一般に,一般放物型部分群$Q$に対して,もし$Q$が$G/H$上に開軌道を持たなければ,$C^{\infty}(G/H)$は,一般旗多様体$G/Q$上に実現されるある既約表現を,重複度無限で含むというより精密な結果を,ポアソン変換の一般化を用いることで証明している.今回の講演ではこれらを踏まえ,$G/H$上に$Q$開軌道が存在したとしても,もし$G/H$上の$Q$軌道が無限個存在するならば,$C^{\infty}(G/H)$は,$G/Q$上に実現されるある既約表現を重複度無限で含むということ を,向き付けに関するある条件の仮定のもとで,ドラームによるカレントの理論を用いて,証明する.

島本 直弥(東京大学大学院数理科学研究科)  「Description of infinite orbits on multiple flag varieties of type A」

簡約型等質空間$X=G/H$上の関数空間にあらわれる$G$の既約表現の重複度が有限であることと,$H$が実旗多様体$G/P_G$上に開軌道を持つこととが同値であることが1990年初頭に小林・大島によって発見・証明された.このような空間$X$は小林によって実球等質空間と名付けられた.一方,$H$が実旗多様体$G/P_G$に開軌道を持つことは,軌道が有限個であることと同値であると1990年代までにBrion, Vinberg, Kimelfeld, Bien, 小林,松木らによって証明されている.

他方,$G$の一般の放物型部分群$P$による旗多様体$G/P$においては,$H$が$G/P$上に開軌道を持ちながらも,軌道の個数が無限個になることが起こりうる.Magyar-Weyman-Zelevinskyは1998年に,$G$として一般線形群$GL_n$の$m$回直積群,$G$の簡約部分群$H$としてその対角部分群をとった時,$G/P$上の$H$軌道が有限個となるような放物型部分群$P$を分類し,さらにその場合の軌道の組み合わせ論的な記述を行った.

この分類に漏れる例として,$4\leq m\leq n+1$を満たす$n,m$の組に対し,$G$を先述した$GL_n$の$m$回直積群,放物型部分群$P$として$GL_n$のミラボリック部分群の$m$回直積群を取ると(この時,旗多様体$G/P$は$G$多様体として$n-1$次元射影空間の$m$回直積と同型になる),これは$G/P$上の$H$軌道が無限個でありながらも開軌道を持つ典型的な例となる.本講演では,この状況における軌道分解の具体的な記述方法を紹介する.また,この軌道分解について,軌道の次元公式や閉包関係などについても解説したい.

大島 芳樹(大阪大学大学院情報科学研究科)  「極小表現の指標と極小冪零軌道」

According to the orbit method, minimal representations of real reductive groups correspond to minimal nilpotent orbits. On the other hand, works of Kashiwara and Schmid-Vilonen give the character of any admissible representation in terms of characteristic cycles of equivariant sheaves on the flag variety. Based on their results, we relate the characters of minimal representations to minimal nilpotent orbits for metaplectic groups and indefinite orthogonal groups.

Leontiev Alex(東京大学大学院数理科学研究科)  「2つのゲーゲンバウアー多項式に関連する積分公式について」

2つのGegenbauer多項式に関連する積分公式を与える.得られた公式の特殊値や極限値と,既知の古典的な結果およびWarnaar,Varchenko,Tarasovなどによる種々のSelberg型積分の特殊値との関連について説明したい.主結果の複数の証明方法を挙げる.

時間が許せば,対称性破れ作用とこの積分公式について触れる. この研究は小林俊行先生との共同研究である.

小寺 諒介(京都大学大学院理学研究科 数学教室)  「Cherednik algebras and quantized Coulomb branches」

$n$次対称群と位数$l$の巡回群とのwreath積を$W$とする. $W$に付随するspherical rational Cherednik代数は,商特異点$\mathbb{C}^{2n}/W$の量子化を与える代数としてEtingof-Ginzburgによって導入された. 一方,Braverman-Finkelberg-中島は,あるconvolution代数を用いて3次元ゲージ理論のクーロン枝とその量子化を定義し,ジョルダン箙に付随する場合にはクーロン枝が$\mathbb{C}^{2n}/W$となることを示した. こうして$\mathbb{C}^{2n}/W$の量子化の二つの異なる構成が得られたため,その二つの代数を比較せよという問題が生じる.

この問題に対する答えとして,中島啓氏との共同研究で,二つの代数の間の明示的な同型を構成し,量子化のパラメータの対応を決定した. 講演では,この結果と,今後期待される表現論への応用について述べる.

宮本 賢伍(大阪大学情報科学研究科)  「Self-injective cellular algebras of polynomial growth representation type」

We classify Morita equivalence class of indecomposable self-injective cellular algebras which have polynomial growth representation type, assuming that the base field has an odd characteristic.

元良 直輝(京都大学数理解析研究所)  「Wakimoto representations for W-algebras」

W代数とは, $\mathbb{C}$上のLie代数$\mathfrak{g}$, そのべき零元$f$, 複素数$k$によってパラメトライズされる頂点代数の族である.二次元共形場理論の中で, Virasoro代数の一般化として構成・発展してきたW代数は, Drinfeld-Sokolov還元に付随するBRSTコホモロジーとして定義される.実際, $\mathfrak{g}=\mathfrak{sl}_2$のときW代数はVirasoro代数に一致する.ところが, 一般の$\mathfrak{g}$, $f$に対してW代数の代数構造は定義の複雑さゆえよく分かっていない.本講演では, affine Lie代数$\hat{\mathfrak{g}}$の脇本表現を用いることで, W代数の自由場実現を構成し, スクリーニング作用素を使ってその構造を調べることができることを示す.さらに時間が許せば, 応用としてA型のW代数の“coproduct”構造についても述べる.

池田 岳(岡山理科大学)  「Pieri-rule of K-theory ring of maximal Isotropic Grassmannians」

We reprove the Pireri-rule of K-theory ring of the maximal orthogonal Grassmannian due to Buch and Ravikumar. The rule combinatorially calculates the multiplicative structure constants of the two K-theory classes of the structure shaves of Schubert varieties with one associated to a special Schubert variety. In order to give the rule, we introduce a combinatorial object called the set-valued decomposition tableaux. We also give a conjecture describing arbitrary structure constants. The talk is based on joint work with Soojin Cho and Maki Nakasuji.

池田 薫(慶應義塾大学経済学部)  「Classification the singlar points of the Toda lattice on the flag manifold by the faces of Weyl chamber」

$G$をsplitな連結半単純Lie群とする.$\mathfrak{g}:=\mathrm{Lie}G$とする.$G$はsplitだから$\mathfrak{g}$はroot分解可能.それを$\mathfrak{g}=\mathfrak{h}\oplus \bigoplus_{\alpha\in\Delta}\mathfrak{g}_\alpha$とする.ここに$\mathfrak{h}$はCartan部分代数で$\Delta$はrootの集合とする.$\mathfrak{n}=\bigoplus_{\alpha\in \Delta_+}\mathfrak{g}_\alpha$, $\mathfrak{b}=\mathfrak{h}\oplus \mathfrak{n}$をそれぞれ上三角べきゼロ代数,上三角Borel代数とする.$\overline{\mathfrak{n}}$, $\overline{\mathfrak{b}}$をそれぞれのoppositeとする.$G, N, B, H, \overline{N}, \overline{B}$ は対応するドイツ文字のLie代数をLie環とするLie群とする.戸田格子とは$(d/dt)W_\infty(t)=-(W_\infty(t)\Lambda_0 W_\infty(t)^{-1})_-W_\infty(t)$であらわされる方程式である.ここで$W_\infty(t)\in \overline{N}$,$\Lambda_0$はシフト行列で$(\cdot)_-$は$\mathfrak{n}_-$への射影とする.戸田格子の解はGauss分解$W_\infty(t)^{-1}W_0(t)=e^{t\Lambda_0}$により得られる.ここで$W_0(t)\in B$とする.Gauss分解不可能な点で$W_\infty(t)$は特異点(極)を持つ.$G=SL_n(\mathbb{R})$の場合は$SL_n(\mathbb{R})$の元の$n-1$個の首座小行列式の零点により定義されるsingular divisorと$e^{t\Lambda_0}$が交差するとき極が生じる.本講演では旗多様体上の戸田格子の特異点をWeyl領域の側面の集合を用いて分類する.旗多様体上の特異点が$G/B$上の$\overline{N}$の部分群の軌道として実現できることを用いて特異点の主$H$束によるブローアップによりその連結成分とWeyl領域を関連付ける.このブローアップにより旗多様体上の戸田格子の特異点集合はある種の散乱データとみなすことが可能でその同値変形としてWeyl領域の側面が対応する. 関連するKodama, Casianの研究では戸田格子の特異点の集合が$G$のLangrands双対の実旗多様体のコホモロジー群の情報を与えていることが示されている.

織田 寛(拓殖大工),示野 信一(関西学院大理工)  「Small $K$タイプに付随したRiemann対称空間上のベクトル束における球変換」

For a connected simple real Lie group $G$ of non-compact type, Wallach introduced a class of $K$-types called small. We classify all small $K$-types for all simple Lie groups and prove except just one case that the spherical function for any small $K$-type $(\pi,V)$ can be expressed as a product of hyperbolic cosines and a Heckman-Opdam hypergeometric function. As an application, the inversion formula for the spherical transform on $G\times_K V$ is obtained from Opdam's theory on Cherednik transforms.

跡部 発(東京大学大学院数理科学研究科)  「A conjecture of Gross-Prasad and Rallis for metaplectic groups」

$p$進簡約代数群の既約スムース表現が generic であるとは,それが Whittaker 模型を持つ時言う. Whittaker 模型の一意性により,generic 表現は表現論及び数論の両分野で多くの応用を持つ. 一方で,局所 Langlands 予想 (LLC) は既約スムース表現を L パラメーターで分類する. Gross-Prasad は Rallis に触発されて,generic 表現に対応する L パラメーターの判定法を予想した. これを Gross-Prasad と Rallis の予想 (GPR) という. 近年,古典群に関して (GPR) は Gan-Ichino により証明された. 本講演では,シンプレクティック群の二重被覆であるメタプレクティック群に関して (GPR) を議論する.

久保 利久(龍谷大学経済学部)  「Algorithm on determining the reducibility points for generalized Verma modules of scalar type」

Generalized Verma modules (also known as parabolic Verma modules) are one of the central objects in representation theory of complex simple Lie algebras. Recently we explicitly determine the reduciblity points for scalar generalized Verma modules for all maximal parabolic subalgebras of the simple complex Lie algebras. In this talk we shall describe how to determine such points. This is based on a joint work with Haian He and Roger Zierau.

松本 久義(東京大学大学院数理科学研究科)  「スカラー型一般化バルマ加群のannihilatorについて」

ある種のWeyl群作用での整合性がある2つのスカラー型一般化バルマ加群のannihilatorは一致するというBorho-Jantzenの結果があるが,スカラー型一般化バルマ加群の間の準同型の分類をするという観点からはその逆が成り立つかどうかが問題になる.無限小指標が正則ならば$\tau$不変量を比較して容易に逆は示せるが,無限小指標が正則出でないと$B_2$型で反例があることが知られている.一方Borho-JantzenはA型の場合には正則でない時も含めて一般に逆が言えることを示している.この講演ではBorho-Jantzenとは別のアプローチでA型の場合の別証が得られることを論じたい.また,合わせてB型C型の場合についても触れたい.

和地 輝仁(北海道教育大学 教育学部)  「$b$-functions of prehomogeneous vector spaces of classical, parabolic type」

複素リー代数において,その単純ルート系の部分集合をとると放物型部分代数が決まる.そして,その冪零根基に自然に入る次数について次数が最小の斉次成分空間には,レビ部分代数に対応するリー群が概均質に作用する.これを放物型概均質ベクトル空間と呼ぶ. 本講演では,古典型の複素リー代数に対して,放物型概均質ベクトル空間の相対不変式の多変数$b$関数を,奇数型Capelli恒等式を応用して求める.