1. Frank Merle 氏
題名: Dynamics of solitons in non-integrable systems
Part 1: Introduction
Part 2: Solitons in the generalized KdV equation -- behavior after collision --
Part 3: Blow-up in the nonlinear waves equation -- singularities and solitons --
要旨:
完全可積分系であるKdV方程式においては,多重ソリトン解の構造はすでに詳しく解明されており,
ソリトンどうしが衝突した後,各ソリトンの形状がすぐに元通りに復元するなどの性質もよく知られている.
しかし方程式中の指数を変えて得られる一般化KdV方程式の場合は,非可積分系であるため,
多重ソリトン解の便利な表示式は存在せず,ソリトンどうしの衝突後に何が起こるのか,
理論的には未解明であった.Merle氏は,最近Yvon Martel氏と共同でこの問題を解決し,
衝突後にわずかな欠損が生じるもののソリトンの形状が見事に復元することを証明するとともに,
大きなソリトンが微小なソリトンと衝突した際に生じる位相(phase)のズレに関して,
KdV方程式の場合と全く違う現象が起こることも明らかにした.
本講義では,第2部(全3回)で上の結果を紹介する.第3部(全2回)では,
非線形波動方程式の解の爆発に関する Hatem Zaag 氏との最近の共同研究の成果を紹介する.
とくに,これまで未解明であった爆発境界面の特性点付近での性質が今回の研究で解明され,
特異性の微細構造が多重ソリトンで表されることが明らかになった.
この結果をできるだけわかりやすく解説する.
論文ファイル:
martelmerleCMP.pdf Merle-Zaag.pdf
スライドファイル:
Slide-GKdV.pdf Slide-NW.pdf
2. 中西 賢次 氏
題名: シュレディンガー写像及び熱流における調和写像の漸近安定性と振動現象について
要旨:
平面から球面への調和写像をシュレディンガーや熱流で時間発展させたときの漸近安定性を回転対称下で調べる.
この問題は,調和写像の写像度が低いほど摂動部との空間遠方相互作用が大きくなる所が難しく,
実際写像度2の熱流では初期摂動に応じて非自明な時間漸近挙動が現れる.この講演では,
非線形シュディンガー方程式の場合をモデルとして比較しながら、漸近安定性を示す一般的な手続きとそこからの変更点,
必要となる線形評価などについて解説する.
3. 水町 徹 氏
題名: 長波長近似モデルと孤立波の安定性
要旨:
KdV方程式をはじめとする長波長近似の非線形分散型方程式は,
水面波の運動やプラズマ中のイオンの運動を記述することで知られている.
KdV方程式のソリトン解は安定的に伝播することが知られていたが,
近年変分法に基づいたアプローチで非可積分系のモデルの場合にもソリトン解とよく似た解が安定的に存在することが証明された.
第1回目の講演ではに変分原理に基づいた安定性の結果について概説し,
次にFermi-Pasta-Ulam格子やある種の流体のbidirectional modelなど変分原理から安定性がうまく説明できないモデルの場合について述べる.
第2回目の講演では,長波長近似モデルの孤立波の線形安定性の結果について概説し,
孤立波の線形安定性から漸近安定性を示す方法を紹介する.
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