連絡事項
8月 2日 期末試験採点講評
問題1から問題3までの最終的な答とよくみられた間違いなどについて述べます。ここではルート2を 21/2 と表記します。
問題1 1/y2
問題文に 「 x, y の式として、なるべく簡単な形で答えよ 」 とあるので、これ以外の答はすべて不正解です。問題が解けて答が出たら、問題文をもう一度よく読んで、自分の出した答が問題の要件を満たしているかどうか確認しましょう。
なお、言うまでもありませんが、たとえ答があっていても、それに至る計算に誤りがある場合には不正解と判定します。また、そのような答案との整合性から、計算の途中経過の省略が甚だしい答案については、不正解と判定する場合があります。
問題2 (1) 2π (2) 8 log (1+21/2)
微分形式 ω は閉形式ではないので、グリーンの公式により (1) と (2) の答が一致するとは言えません。定義通りに線積分を計算しましょう。
問題3 (x, y)=(1, 0), (-1, 0) のとき最小値 1
この問題の場合には、方程式 f (x, y)=0 によって定まる曲線は平面の閉集合ですが、有界ではありません。しかし、各正数 R に対して f (x, y)=0 かつ g (x, y) ≦ R で定まる集合は有界な閉集合となり、R が十分に大きければ空でないので、g (x, y) は最小値を持ち、最小値を取る点は特異点または停留点となります。このことに注意して、特異点を確認したうえで未定乗数法を適用します。結論としては特異点はなく、ラグランジュ関数 F について、たとえば Fx=0 と Fy =0 から λ を消去した式を計算すると x=y または y=0 または x+y=0 が得られます。それぞれ吟味して g (x, y) の値を求めると、x=y のときは 21/2 となり、y=0 のときは 1 となります。また x+y=0 となる点は f (x, y)=0 上にはなく、不適です。以上から最小値は 1 であることがわかります。
ところで y=0 のときの縁付き Hessian の値は負ですので、この場合は極小になることがわかります。一方、事実として x=y のときは極大でも極小でもありませんが、縁付き Hessian の値が 0 であるために極値判定ができません。つまり、縁付き Hessian の値が 0 のとき、そうだからといって極大でないとも極小でないとも言えません。従って、この問題の場合には、縁付き Hessian の値からただちに最小値を決定することはできず、さらに詳しい考察が必要になります。それよりは g (x, y) の値を計算して大きさを比較するほうがはるかに簡単です。
問題4
問 (1) では、実際に計算して確認することが問題の趣旨なので、計算の途中経過を省略してはいけません。きちんと計算して確認したことが文面から読み取れない場合には、公平性の観点から、解けていないものとみなします。
答案に「題意は示された」と書くのは、言葉の使い方を誤っているうえに、いかにも受験数学に毒されている感じがします。大学生にもなって「題意は示された」などと書くのは恥ずかしいのでやめましょう。
講義進行(夏学期)
講義の進行により、当初の予定を変更しました。
注意事項
遅刻厳禁・私語厳禁です。
授業中の携帯電話・スマートフォン・パソコン等の使用を禁止します。
授業内容に関わる質問は授業中にお願いします。授業内容で理解できない点があれば、その場で手をあげて大きな声で質問してください。 板書の書き誤りに気が付いたら、その場ですぐに指摘してください。
大人数に対するレポート等の返却を、個人のプライバシーに配慮しつつ、混乱なく速やかに行うために、名前を呼ばれたら、大きく手を挙げて、大きな声で『はい』と返事してアピールしてください。
提出物の名前には必ずふりがなを振ってください。
この授業は2年理科生向けの微分積分学続論の講義です。 文科生も履修できます。 理科生についてはクラス指定により理科 I 類33組~39組が対象となります。
シラバスに書かれた授業の目標、概要は次の通りです。
数学 I で学んだ多変数の微積分の補足として2変数のベクトル値関数を取り上げ,その取り扱い方法と幾何学的・物理的意味を学ぶ.3変数あるいはより多くの変数を扱う方法については,数理科学 III で学習する.数学や物理など数学を本格的に使う分野,あるいは電磁気学・流体を扱う分野に将来進む場合は,数理科学 III を併せて履修しておくことが望ましい.
この講義は、火曜日の 2限(10:40~12:10)に教養学部532教室で行います。
この講義は数理科学Ⅰのシラバスの授業計画 (下に転載) に基づいて行います。
この講義の参考書として次の書籍をあげておきます。
小林昭七「続 微分積分読本 — 多変数 — 」裳華房
小沢哲也「曲線 幾何学の小径」培風館
この講義の成績は期末試験によって判定します。講義のなかで行う小テストやレポートなどは純粋に教育目的で行うものですので、その点数・評価は成績には影響しません。
授業計画
数理科学 I のシラバスに書かれた授業計画を転載しますので、参照してください。
講義内容はおおむね以下の通りであるが,担当教員によって内容に多少の変化がある.
陰関数定理と逆関数定理:関係式f(x,y)=0によって結ばれた2つの変数x,yがあったとき,yをxの関数(関数fによって表される陰関数)として表せるための条件を考察する.また変数変換とその応用について学ぶ.
平面曲線の幾何:1で学習したことに基づき,方程式f(x,y)=0が定める曲線のパラメータ表示,接ベクトルと法ベクトル,曲率,弧長などの求め方を考える.
平面上のベクトル場と線積分:ベクトル場の概念を説明し,関数が定める勾配ベクトル場などの基本的例とその意味を考える.また平面のベクトル場(またはベクトル場に対応する微分1形式)の曲線上の積分(線積分)を調べる.
条件付き最大最小問題:f(x,y)=0という拘束条件を受けている変数x,yの関数g(x,y)について,その極大・極小を求めるラグランジュの未定乗数法を学び,幾何学的意味を考察する.
面積分:空間内の曲面を2つのパラメータによって表し,曲面上の積分によって面積などを表すことを学ぶ.重積分に関する変数変換公式を完全にマスターすることが重要である.
グリーンの定理とガウスの定理:平面の中の閉曲線上での線積分を曲線が囲む領域での面積分に帰着するグリーンの定理とガウスの定理を学び,平面ベクトル場の回転と発散の意味を考察する.
過去の連絡事項
6月17日 問題 2.4 の解答の訂正
問題 2.4 の解答にある縁付き Hesse 行列の (2, 2) 成分と (3, 3) 成分が -6 になっていますが、正しくは -10 でした。従って - det B = -567/4 となります。
指摘してくれた学生さん、どうもありがとう。
7月 2日 境界に関する注意
縦線領域でグリーンの定理が成立するためには、縦線領域の上下の境界を表わす関数が連続であれば十分で、それらが微分可能である必要はありません。横線領域についても同様です。ただし、縦線領域でも横線領域でもない一般の領域に関しては、境界が曲線が連続なパラメータ表示を持つという仮定では不十分なので、話の流れとして、全体を通じて境界は区分的に C1級の曲線であると仮定しました。
7月 8日 問題3解答の訂正
問題3.5の分母にミスがありましたので、次の通り訂正してください。
x4 + y4 + 2x2y + 2xy2 + x2 + y2
→
x4 + y4 - 2x2y - 2xy2 + x2 + y2
なお、分子の計算では、方程式 x3 - 3xy + y3 = 0 を用いて次数を下げます。