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\define\e{\varepsilon}


\centerline{解析学XD・スペクトル理論レポート問題解説}
\medskip
\rightline{2005年2月23日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

\bigskip
概してよくできていました.7問中,5問半以上できていれば A にして
あります.レポート提出者は16名,成績が A, B, C, D の人は
それぞれ,11, 1, 2, 2 人でした.ごく簡単な説明を下に
つけておきます.

\bigskip [1]
よくできていたので特に解説はしません.

\bigskip [2]
$A^*A$ は自己共役で,ユニタリ対角化できるので,固有値を求める
ことにより,ノルムが簡単に $15+\sqrt{221}$ と求まります.
[1] より,これの平方根が $A$ のノルムです.$A$ 自身はユニタリ
対角化できないので,$A$ の固有値を求めても仕方ありません.

\bigskip [3]
$A$ が対称なことはすぐにわかります.自己共役であることを
示すには,$\text{Ker}(A^*\pm i)=0$ を示すか,$\text{Im}(A\pm i)$
が稠密であることを示します.あるいは,Fourier 変換すればもっと
すぐにできます.

\bigskip [4]
定義どおりまじめにやれば割と簡単にできます.よくできていました.

\bigskip [5]
授業でやった,$D(A^*)$ が稠密でない例と類似の工夫をすればできます.
だいたいは同じような作り方でしたが,細かい点はいろいろな工夫がありました.

\bigskip [6]
$D(A)$ は,$\{(1-z) g\mid g\in H^2\}$ であることを用いて
稠密性を示します.対称であることは単に計算すればできます.
Cayley 変換 $U$ は,$(Uf)(z)=zf(z)$ になります.

\bigskip [7]
0以外のスペクトルはすべて実数で多重度有限の固有値で,たかだか可算個しかなく,
0 以外の集積点を持ちません.
そこでそれらの固有値を $\{\lambda_n\}_n$ と書き,固有値 $\lambda_n$ の
固有空間への直交射影を $P_n$ と書けば $A=\sum_n \lambda_n P_n$ (強収束)
と書けることになります.

\bye