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\def\lan{\langle}
\def\ran{\rangle}
\def\supp{\text{supp}}

\centerline{数学IV・中間テストの解答・解説}
\medskip
\rightline{1998年1月9日}
\rightline{河東泰之}

\bigskip
配点は,[1]から順に15, 20, 15, 20, 30点です.

平均点は,61.5点で次のような得点分布でした.
返す答案はコピーが取ってあります.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--49 (点) && 50--59  && 60--69 && 70--79 && 80--89 && 90--99 && 100 & \cr
\vsp\t
& 27(人) &&  14 &&  13 && 15 && 13 && 7 && 11 & \cr
\vsp\t
}}$$

言うまでもないことだと思っていましたが,
答案に答しか書いてない人が何人かいましたので,
ここで書いておきます.数学の答案は,当然,途中の経過を書くものです.
答だけでは,カンニングしたのかもしれないし,間違った方法でたまたま
答が合ったのかもしれません.[1]については機械的に公式に入れるだけなので,
答だけでも満点をつけましたが,他の問題では大幅に減点しました.

\bigskip [1] 
逆行列は$$
\left(\matrix
2 & -1 & 1\\
-4 & 3 & -2 \\
-11 & 8 & -5
\endmatrix\right)
$$
である.

これは単純な計算問題で,検算も簡単なので,1ヶ所でも
数字が違っていれば0点です.

\bigskip [2] 
$\det A=4t^3-12t+8=0$を解くと,
$t=1,-2$を得る.このうち$A$のrankが2なのは$t=-2$
の方である.このとき,$Ax=0$となる$x$は,
$\left(\matrix 2s \\ s \\ -2s \endmatrix\right)$
の形のもの全体($s$は実数)である.

$t=-2$までで10点です.

\bigskip [3] 1列目と2列目を加えると3列目に
なっているので,つねに$\det A=0$であり,$A$は
0行列ではないので,$A$のrankは1か2のいずれかである.
Rankが1になるのは,$A$を縦に区切った3本の縦ベクトル
がすべて平行になるときで,これは$t=1$のときである.
その他のときはrankは2である.

「$A$は0行列ではないからrankは0ではない」というのが抜けていると
1点減点です.

\bigskip [4] 
$\det(tI-A)=t^3+t^2+15at$だから,
これを$f(t)$とおいて,$f(t)=0$が2重根を持つように
パラメータ$a$の値を定めればよい.$f'(t)=3t^2+2t+15a$
だから,$f(t)=f'(t)=0$を解いて,
$(t,a)=(0,0),(-1/2,1/60)$の2組の解を得る.
どちらの場合も$\det(tI-A)=0$の解は実際に2重根と他の
1根になっているので答えは$a=0,1/60$である.

$\det(tI-A)$の計算を間違えた人は,(特に惜しい人以外は)0点です.
$a=0$, $a=1/60$のそれぞれに10点です.

\bigskip [5] 
まず$A$の固有値を求めると$2t^3-3t^2+t=0$を
解いて$1,1/2,0$となる.この3根は
すべて異なるので$A$は対角化できて,
$$A=\left(\matrix
1 & 2 & 1 \\
0 & 1 & -1 \\
2 & 0 & 5 
\endmatrix\right)
\left(\matrix
1 & 0 & 0 \\
0 & 1/2 & 0 \\
0 & 0 & 0
\endmatrix\right)
\left(\matrix
-5 & 10 & 3 \\
2 & -3 & -1 \\
2 & -4 & -1 
\endmatrix\right)$$
となる.
これより,
$$\lim_{n\to\infty}A^n=\left(\matrix
1 & 2 & 1 \\
0 & 1 & -1 \\
2 & 0 & 5 
\endmatrix\right)
\left(\matrix
1 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 0
\endmatrix\right)
\left(\matrix
-5 & 10 & 3 \\
2 & -3 & -1 \\
2 & -4 & -1 
\endmatrix\right)=
\left(\matrix
-5 & 10 & 3 \\
0 & 0 & 0 \\
-10 & 20 & 6
\endmatrix\right)
$$
を得る.

固有値が求まっただけだと3点です.
\bye