\magnification=\magstep1
\documentstyle{amsppt}
\def\a{\alpha}
\def\be{\beta}
\def\ga{\gamma}
\def\e{\varepsilon}
\def\Q{\bold Q}
\def\R{\bold R}

\nopagenumbers

\centerline{1998年度理科II, III類1年生 数学IA演習・小テスト解説(12)}
\rightline{1998年7月10日・河東泰之}
\rightline{数理科学研究科棟310号室 (電話 5465-7024)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{homepage http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}
\bigskip

配点は[1]から順に25, 15$\times 3$, 30点です.
平均点は54.2点,最高は99点(1人)でした.

\bigskip [1] 
問題の積分で$x=\e t$と言う置換を行い,
$$\int_{-1/\e}^{1/\e}\frac{1}
{t^2+1}(f(\e t)-f(0))\;dt+\int_{-1/\e}^{1/\e}\frac{1}
{t^2+1}f(0)\;dt
$$
と2つに分ける.後者が$\pi f(0)$に近づくので前者が
0に近づくことを言えばよい.
そのため,$\delta > 0$に対し,
$$\cases
|t| < \sqrt{\e_0} \Rightarrow |f(t)-f(0)| < \dfrac{\delta}{2\pi},\\
2 \max |f(t)|\left(\dsize\int_{-\infty}^{-1/\sqrt{\e_0}}\dfrac{1}
{t^2+1} \;dt+ \dsize\int_{1/\sqrt{\e_0}}^{\infty}\dfrac{1}{t^2+1} \;dt
\right) < \dfrac{\delta}{2}\endcases$$
となるような$\e_0 > 0$を選ぶ.すると,
$0 < \e < \e_0$のとき,
$$\align
&\left|\int_{-1/\e}^{1/\e}\frac{1}
{t^2+1}(f(\e t)-f(0))\;dt\right|\\
\le&
\left |\int_{-1/\sqrt{\e}}^{1/\sqrt{\e}}\frac{1}
{t^2+1}(f(\e t)-f(0))\;dt\right|+
2 \max |f(t)|
\left |\int_{-\infty}^{-1/\sqrt{\e}}\frac{1}
{t^2+1}\;dt+\int_{1/\sqrt{\e}}^\infty\frac{1}
{t^2+1}\;dt \right|\\
 <& \delta\endalign
$$
であるのでO.K.になる.

\bigskip
これは大体もっともらしいことを書くことは
それなりにできていましたが,厳密に証明するのはなかなか
やっかいです.普通に置換積分すると関数の方と積分区間の方の
両方に$\e$が出てくるので,簡単にはlimitと積分の順序交換は
できません.その辺が雑にしてあるのは15点です.上のように$\sqrt\e$
で分けると言うような議論が必要ですが,そうしている人は1人だけでした.

\bigskip [2] 
(1) $|x-x'| < \sqrt\e$, $|y-y'| < \sqrt\e$なら
$|f(x,y)-f(x',y')| < \e$なので一様連続.

(2) $y$の一変数関数$y^2$が一様連続ではないことを使うと,
この$f(x,y)$も一様連続でないことがわかる.

(3) $e^{-x^2}$は有界で一様連続.これを使うと
$f(x,y)$も一様連続であることがわかる.

\bigskip
これは前にやった1変数の時とほとんど同じで,わかっている人には
全く簡単でしょうが,依然あやしい人が少なからずいます.

(1)で,「周期関数だから一様連続」とだけ書いている人がけっこう
いましたが,もうちょっと説明して欲しいところです.まず「連続関数
だから」というのは(明らかなことですが根拠の一つなんだから)
はっきり書いた方がいいでしょう.
それから,「$[0,2\pi]\times[0,2\pi]$上では連続だから一様連続.
周期性により$\R^2$でも一様連続」というのは完全に正しいですが,
「周期関数だから$\sin x$も$\sin y$も一様連続.だからかけても
一様連続」と書いている人がいて,これは違います.一変数の
一様連続関数の積は2変数の一様連続関数とは限りません.(例: 
$f(x,y)=xy$.)単に「周期関数だから一様連続」と書いたのでは
後者のように誤解しているのかもしれないのであまりよくありません.
できるだけ善意に解釈したつもりですが.

\bigskip [3] 累次積分と思って積分の順序が入れ替えられる.すると
$$\int_0^{\pi} \int_0^{2\pi}\cos^2 y\;\sin^4 y\;  \sin(x+y) \;dx\;dy$$
になるが,内側の$x$での積分をした段階で0だから答は0.

\bigskip
授業で,2変数のRiemann積分はまず$x$,ついで$y$という順に行った
累次積分と等しいことを示しました.$x$, $y$を入れ替えれば当然,
まず$y$,ついで$x$という順に行った
累次積分とも等しいことになるので,積分の順序は入れ替えられて,
上のように簡単にすぐ答が出ます.もちろん元の順序でやっても
ちゃんと答え0になって,ほとんどの人はそうやっていましたが,
けっこう計算がめんどうですね.

\bye