\magnification=\magstep1
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\def\be{\beta}
\def\ga{\gamma}
\def\e{\varepsilon}
\def\Q{\bold Q}
\def\R{\bold R}

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\centerline{1998年度理科II, III類1年生 数学IA演習・小テスト解説(11)}
\rightline{1998年7月7日・河東泰之}
\rightline{数理科学研究科棟310号室 (電話 5465-7024)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{homepage http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}
\bigskip

配点は[1]から順に40, 30, $10\times3$点です.
平均点は44.4点,最高は100点(3人)でした.

\bigskip [1] $0\le x\le \pi/2$の範囲では,$\dfrac{2x}{\pi}\le \sin x \le 1$
だから,$\log\dfrac{2}{\pi}+\log x \le \log\sin x \le 0$になります.
ここで,$\log\dfrac{2}{\pi}+\log x$が$[0,\pi/2]$で広義積分できることは
すぐわかるので,$\log\sin x$についてもO.K.です.

$\log\sin x$が負であることを忘れて反対向きの評価をしている人がけっこう
いました.また,広義積分の収束の問題が生じるのは$x\to0$の方であって,
$x\to \pi/2$の方は最初から何も問題はありません.

実はうまく置換積分を行うとちゃんと値が求まって,$-\dfrac{\pi}{2}\log2$
になります.

\bigskip [2]
置換積分で漸化式を求めて,
$$I_n=\cases
\dfrac{n-1}{n}\dfrac{n-3}{n-2}\cdots\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{\pi}{2},
\quad\text{$n$が偶数のとき},\\
\dfrac{n-1}{n}\dfrac{n-3}{n-2}\cdots\dfrac{2}{3},
\quad\text{$n$が奇数のとき}\endcases$$
となります.これは高校でもよくやるものですね.

\bigskip [3]
(1) Taylor展開するか,あるいは微分するかで,$[0,1]$上で
$1-x^2 \le e^{-x^2}$, $[0,\infty)$上で$1+x^2 \le e^{x^2}$が
わかるので,$n$乗して積分して問題の積分の不等式が出ます.

(2) 普通に置換積分すると,
$$\int_0^{\pi/2}\sin^{2n+1} t\;dt < 
\frac{1}{\sqrt n}\int_0^\infty e^{-t^2}\;dt <
\int_0^{\pi/2}\sin^{2n-2} t\;dt$$
となります.


(3) $I=\dsize\int_0^\infty e^{-t^2}\;dt$とおくと,
(2)より$\sqrt{n} I_{2n+1} < I < \sqrt{n} I_{2n-2}$となるので
$1 < \dfrac{I}{\sqrt{n} I_{2n+1}} < \dfrac{I_{2n-2}}{I_{2n+1}}$
がわかります.($I_n$は[2]の積分.)
一方,$0\le \sin x \le 1$より
$I_n > I_{n+1} > I_{n+2}$で,[2]の答より$\dfrac{I_n}{I_{n+2}}\to 1$だから,
$\dfrac{I_n}{I_{n+1}}\to 1$であって,上の不等式より
$I=\dsize\lim_{n\to\infty}\sqrt{n} I_{2n+1}$がわかります.
すると
$$\lim_{n\to\infty}\sqrt{n} I_{2n+1}=
\lim_{n\to\infty}\sqrt{n I_{2n+1} I_{2n}}=
\lim_{n\to\infty}\sqrt{\dfrac{n\pi}{(2n+1)2}}=\dfrac{\sqrt{\pi}}{2}$$
となるから,求める積分は$2I=\sqrt\pi$です.

この積分は有名なもので,たとえばMathematicaでも公式としておぼえている
ので,すぐに答が返ってきます.
これは本当は,あとでやる極座標を使うともっと簡単にできます.

\bye