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\def\e{\varepsilon}
\def\Q{\bold Q}
\def\R{\bold R}

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\centerline{1998年度理科II, III類1年生 数学IA演習・小テスト解説(8)}
\rightline{1998年6月12日・河東泰之}
\rightline{数理科学研究科棟310号室 (電話 5465-7024)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{homepage http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}
\bigskip

配点は[1]から順に$15\times 2$, $15\times 2$, 40点です.
平均点は45.5点,最高は95点(1人)でした.

これで半分以上来ているので,期末テストについて少し書きます.
単位を取るためにはこれまでの問題例で言うと,次の問題程度は
ちゃんとできるようになって期末テストを受けてほしいと思います.

(3) [1], [3];(4) [1], [2]; (5) [1]; (6) [1], [3]; (7) [1]; (8) [1]

(これは,同じあるいはそっくりの問題が出ると言う意味ではありませんから
誤解しないでください.)以下,今回の略解です.

\bigskip
[1] (1) $z=x+iy$ ($x,y$は実数)と書くと,
$e^z=e^x(\cos y+i\sin y)$になる.実部と虚部に分ければ,
これが1になるためには,
$e^x\neq0$より,$y=n\pi$ ($n$は整数)が必要である.この時,
$\cos y=\pm 1$だから,$e^x=\pm1$となり,$x=0$, $y=2n\pi$
($n$は整数)を得る.これが必要十分条件なので,
$z=2n\pi i$ ($n$は整数)である.

(2) $\sin z=\dfrac{e^{iz}-e^{-iz}}{2i}$だから,これが
$0$になるということは,$e^{iz}=e^{-iz}$,つまり
$e^{2iz}=1$である.(1)より,答えは
$z=n\pi$ ($n$は整数)である.

[2] (1) $\tan x$の微分は$\dfrac{1}{\cos^2 x}$だから,
逆関数の微分をして,$y=\arctan x$のとき
$y'=\cos^2 y=\dfrac{1}{1+\tan^2 y}=\dfrac{1}{1+x^2}$
となる.

(2) 右辺のべき級数の収束半径は1である.よって,
$-1 < x <1$の範囲で項別微分を行って,
$$\left(x-\frac{x^3}{3}+\frac{x^5}{5}
-\frac{x^7}{7}+\frac{x^9}{9}-\cdots\right)'=
1-x^2+x^4-x^6+x^8-\cdots=\frac{1}{1+x^2}$$
である.これより,
$-1 < x < 1$の範囲で,
$$\arctan x = c+x-\frac{x^3}{3}+\frac{x^5}{5}
-\frac{x^7}{7}+\frac{x^9}{9}-\cdots$$
($c$は定数)となり,$x=0$を代入して$c=0$がわかるので,
問題の等式を得る.

\bigskip [3]
$\sin \dfrac{3}{4} < \dfrac{1}{\sqrt2} <\sin \dfrac{4}{5}$
を示せばよい.
$0 < x < 1$のとき,
$x-\dfrac{x^3}{6} < \sin x < x-\dfrac{x^3}{6}+\dfrac{x^5}{120}$
であるから,まず計算して,
$$\sin \dfrac{4}{5} > \dfrac{4}{5}\left(1-\frac{8}{75}\right)
=\dfrac{268}{375} > \dfrac{89}{125} = 0.712 > \frac{\sqrt2}{2}$$
を得る.
次に,
$$\sin \dfrac{3}{4} < \dfrac{3}{4}
\left(1-\frac{3}{32}+\frac{81}{256}\frac{1}{120}\right)=
\dfrac{3}{4}\left(\frac{29}{32}+\frac{27}{10240}\right)
< \frac{87}{125} + 0.002 < 0.696 + 0.002 < \frac{\sqrt2}{2}$$
なので,証明が終わる.

\bigskip
[1] (1)では,
$e^x(\cos y+i\sin y)=1$をどう処理しているのか曖昧なものがめだちました.
(1), (2)ともべき級数からいきなりやろうとしてもほとんど無理です.

[2] (2)は,Taylor展開でやろうとすると,まず$n$回微分していくのが
それほど簡単ではなく,さらに剰余項$\to 0$の証明がけっこうやっかいです.

[3]は,後半は$\cos \dfrac{3}{4} > \dfrac{\sqrt2}{2}$をチェックする
というのもあって,こっちの方が計算が楽です.
$\sin \dfrac{\pi}{6}=\dfrac{1}{2}$をきちんと証明した上で使うと言うのも
ありました.

\bye