\magnification=\magstep1
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\def\a{\alpha}
\def\be{\beta}
\def\ga{\gamma}
\def\e{\varepsilon}
\def\de{\delta}
\def\Q{\bold Q}
\def\R{\bold R}

\nopagenumbers

\centerline{1998年度理科II, III類1年生 数学IA演習・小テスト(6)解説}
\rightline{1998年6月2日・河東泰之}
\rightline{数理科学研究科棟310号室 (電話 5465-7024)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{homepage http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}
\bigskip

配点は[1]から順に40, 30, 30点です.
平均点は45.1点,最高は100点(1人)でした.略解は次のとおりです.

\bigskip
[1] $f(x)$は多項式なので無限回微分可能である.Taylorの定理より
$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\dfrac{f''(a)(x-a)^2}{2}+\cdots+
\dfrac{f^{(n)}(a)(x-a)^n}{n!}+
\dfrac{f^{(n+1)}(\xi)(x-a)^{n+1}}{(n+1)!}$$
となる.$\xi$は$x$と$a$の間の数であるが,
$f(x)$は$n$次多項式であることより最後の項は0である.
よって,
$$f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\dfrac{f''(a)(x-a)^2}{2}+\cdots+
\dfrac{f^{(n)}(a)(x-a)^n}{n!}$$
が答である.

どうも$\xi$の入った最後の項が0であると
いう認識のない人がたくさんいました.
$\xi$の入ったままの答でも正しいことは正しいわけですが,
ちゃんと状況が分かっているとは思えませんので,大幅に減点し
ました.

また,いきなり$\dsize\sum_{k=0}^\infty
\dfrac{f^{(k)}(a)(x-a)^k}{k!}$と書いている人もけっこういましたが,
こう書くためには,$\xi$の入っている部分が0に収束することを
示す必要があります.今の場合,「収束している」どころか
$k$が$n+1$以上のところではずっと0なわけですが,そのことを
きちんとことわらなくてはいけません.また,ことわったあとで
あれば,実は無限和ではなくて有限和だという
認識がなくてはいけません.

また$n$次多項式と言っている以上,$f(x)$が決まれば$n$は
決まっているわけですが,「$\exists N,\;\; n > N \Rightarrow\cdots$」
のように$n$がだんだん大きくなっていくかのように思っている人も
少なからずいました.

\bigskip [2]
(1) $x\neq 0$のとき,平均値の定理の拡張形によって
$$\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f(x)-f(0)}{g(x)-g(0)}
=\frac{f'(\xi)}{g'(\xi)}$$
となる$\xi$が$x$と0の間にある.$x\to 0$のとき,$\xi\to 0$
だから,
$\dsize\lim_{x \to 0} \dfrac{f(x)}{g(x)}=
\dsize\lim_{x \to 0} \dfrac{f'(x)}{g'(x)}$
である.

(2) $F(x)=f(1/x)$, $G(x)=g(1/x)$とおけば,(1)に帰着できて
$\dsize\lim_{x \to \infty} \dfrac{f(x)}{g(x)}
=\dsize\lim_{x \to \infty} \dfrac{f'(x)}{g'(x)}$
であることがわかる.

(1)の方で,$$\frac{f(x)}{g(x)}=
\frac{\dfrac{f(x)-f(0)}{x}}{\dfrac{g(x)-g(0)}{x}}$$
ですが,$f(x)$, $g(x)$は$x=0$で微分可能とは言っていないので
この変形ではできません.

\bigskip [3] 逆関数の微分,合成関数の微分によって,
$$f^{(k)}(x)=(-1)^{k+1}\frac{1}{4}\cdot
\frac{3}{4}\frac{7}{4}\frac{11}{4}
\cdots\frac{4k-5}{4}(1+x)^{1/4-k}$$
を得る.よって,
$$\align
f(x)&=1+\frac{1}{4}x+
\sum_{k=2}^n (-1)^{k+1}\frac{1}{4}\cdot
\frac{3}{4}\frac{7}{4}\frac{11}{4}
\cdots\frac{4k-5}{4}\cdot\frac{x^k}{k!}\\
&\quad\quad+(-1)^{n}\frac{1}{4}\cdot
\frac{3}{4}\frac{7}{4}\frac{11}{4}
\cdots\frac{4n-1}{4}\cdot\frac{x^{n+1}}{(n+1)!}(1+\xi)^{1/4-n-1}
\endalign$$
である.ここで,
$$
\left|(-1)^{n}\frac{1}{4}\cdot
\frac{3}{4}\frac{7}{4}\frac{11}{4}
\cdots\frac{4n-1}{4}\cdot\frac{1}{(n+1)!}\right|\le \frac{1}{n+1}$$
であり,また$-1/2 < x < 1/2$より,
$\left|\dfrac{x}{1+\xi}\right| < 1$であることが,授業でやった
$\log (1+x)$のTaylor展開のときと同様にわかるので,
$$\left|x^{n+1}(1+\xi)^{1/4-n-1}\right|
\le 2^{1/4} \left|\frac{x}{1+\xi}\right|^{n+1}\to 1$$
である.これより,Taylor展開ができて,答えは
$$f(x)=1+\frac{1}{4}x+
\sum_{k=2}^\infty (-1)^{k+1}\frac{1}{4}\cdot
\frac{3}{4}\frac{7}{4}\frac{11}{4}
\cdots\frac{4k-5}{4}\cdot\frac{x^k}{k!}$$
である.

剰余項($\xi$の入った項)が0に収束することをきちんと示さなくては
いけません.いきなり無限級数を書くのは論理的に大幅な
飛躍だし,その
収束半径が1(以上)であることを示しても,それではTaylor
展開できることの証明になっていません.

本当はこのTaylor展開は,$-1 < x < 1$ で正しい式ですが
剰余項の評価を簡単にするため,$-1/2 < x <1/2$にしました.

\bye