\magnification=\magstep1
\documentstyle{amsppt}
\def\a{\alpha}
\def\be{\beta}
\def\ga{\gamma}
\def\e{\varepsilon}
\def\de{\delta}
\def\Q{\bold Q}
\def\R{\bold R}

\nopagenumbers

\centerline{1998年度理科II, III類1年生 数学IA演習・小テスト(5)解説}
\rightline{1998年5月22日・河東泰之}
\rightline{数理科学研究科棟310号室 (電話 5465-7024)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{homepage http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}
\bigskip

5月29日の講義は5月祭のため休みです

配点は[1]から順に40, 30, 30点です.[1]は
定義がちゃんとわかっているかどうかだけの問題です.間違えた
人はよく復習しておいてください.[2]はちょっと,[3]はかなり難しいでしょう.
平均点は42.8点,最高は100点(1人)でした.

[1]の前半で,下の解答の$\de_1$, $\de_2$は一般に異なる値ですから,
$\min(\de_1,\de_2)$を取るという操作が必要です.それが
抜けているものは10点引きです.

[3]で,$f(x) > g(x)$, $f(x) = g(x)$, $f(x) < g(x)$の
3通りに分けるというのは多くの人が気づいていましたが,
そのあとが不十分な人が大半でした.$f(x) > g(x)$と
なるような$x$の集合は一般にはきわめて複雑なものです.
区間でも,無限個の重ならない区間の和でもありません.
(同様に,$f(x) = g(x)$となる$x$の集合もきわめて
複雑なものです.$\{x_1,x_2,\dots\}$などと書けるものでは
ありません.)だから,「$f(x) > g(x)$となる部分での連続性
は明らか」というような書き方は重大な飛躍です.下の解答例
のようにもっときっちり書かないといけません.
たとえば,「$f(x)\ge g(x)$のとき,$h(x)=f(x)$, $f(x) < g(x)$
のとき,$h(x)=0$」と定義した関数$h(x)$はもちろん
一般に連続ではありません.この例とこの問題との違いがはっきりわかるような
証明が必要です.

下に略解をつけます.

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[1] 簡単なことですが,詳しく書きましょう.

(1) $\Rightarrow$ (2)
任意に$\e > 0$を取る.この$\e > 0$に対して(1)を使うと,
$$\align
&\exists \de_1 > 0, \;\; a < x < a+\de_1 \Rightarrow |f(x)-\a| < \e,\\
&\exists \de_2 > 0, \;\; a-\de_2 < x < a \Rightarrow |f(x)-\a| < \e,
\endalign$$
である.よって,$\de=\min(\de_1, \de_2)$とおけば,
$$ 0 < |x-a| < \de \Rightarrow |f(x)-\a| < \e$$
であるので,(2)がわかる.

(2) $\Rightarrow$ (1)
任意に$\e > 0$を取る.この$\e > 0$に対して(2)を使うと,
$$\exists \de > 0,\;\; 0 < |x-a| < \de \Rightarrow |f(x)-\a| < \e$$
である.この$\de$を使うと,
$$\align
&a < x < a+\de \Rightarrow |f(x)-\a| < \e,\\
&a-\de < x < a \Rightarrow |f(x)-\a| < \e,
\endalign$$
だから,(1)の2つの等式が得られた.

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[2] $\a=\dsize\limsup_{n\to\infty} a_n$とおく.
授業でやったBolzano-Weierstrassの定理の証明より,
$\a\in A$である.
$\be > \a$のとき,$\be$
に収束する$\{a_n\}_n$の部分列が存在しないことを
示せば,(1), (2)が同時に証明できる.
そのような部分列があったとしよう.$\a < \ga <\be$と
なる$\ga$を任意に取る.部分列が$\be$に収束しているので,
$\ga$より$a_n$が大きくなる番号$n$が無限個存在する.
すると,すべての$k$について,$\dsize\sup_n \a_{n+k} > \ga$
であるから,$\dsize\limsup_{n\to\infty} a_n \ge \ga$
となって,矛盾が出た.

\bigskip
[3] $a\in \R$を任意に取る.次の3つの場合分けによって,
$h(x)$が$x=a$で連続であることを示す.

(1) $f(a) > g(a)$の場合.

$\a=f(a)-g(a)$とおくと,$\a > 0$である.一方
$f(x)-g(x)$は$x=a$で連続だから,
$$\exists \de_1 > 0, \;\; |x-a| < \de_1 \Rightarrow
\a/2 < f(x)-g(x) < 3\a/2$$
である.よって,$|x-a| <\de_1$の範囲では,$h(x)=f(x)$
である.

さて,任意に$\e >0$が与えられたとする.$f(x)$の$x=a$
における連続性より,
$$\exists \de_2 > 0, \;\; |x-a| < \de_2 \Rightarrow
|f(x) - f(a)| < \e$$
がわかる.そこで$\de=\min(\de_1,\de_2)$とおけば,
$|x-a| < \de$のとき,$|h(x)-h(a)| < \e$であるから,
$h(x)$は$x=a$で連続である.

(2) $f(a) < g(a)$の場合.

(1)と全く同様である.

(3) $f(a) = g(a)$の場合.

任意に$\e >0$が与えられたとする.$f(x), g(x)$の$x=a$
における連続性より,
$$\align
&\exists \de_1 > 0, \;\; |x-a| < \de_1 \Rightarrow |f(x)-f(a)| < \e,\\
&\exists \de_2 > 0, \;\; |x-a| < \de_2 \Rightarrow |g(x)-g(a)| < \e,\\
\endalign$$
である.これより,
$\de=\min(\de_1,\de_2)$とすれば,
$|x-a| < \de$のとき,
$|h(x)-h(a)| < \e$がわかるので,$h(x)$は$x=a$で連続である.

\bye