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\def\R{{\bold R}}
\def\e{{\varepsilon}}

\centerline{数学I A (理科I類17,18,27,28組)後期期末テスト略解・解説}
\rightline{1995年2月 河東泰之}
\bigskip

答案の上に赤い数字が2つ書いてありますが,左側の数字が
期末試験そのものの点数(各問35点,140点満点)で,右側の
点数(○で囲ってある数字)がこの科目の最終成績
(教務課に提出したもの)です.また,演習を取っている人には
演習の成績が,そのさらに右に青い数字で書いてあります.
これらの算出法は次のとおりです.

まず,学期末試験の点数を,$x_1$点,
11月16日の中間テストの点数を,$y_1$点,
1月11日の中間テストの点数を,$y_2$点とします.
($x_1$が100を越えた場合は$x_1$を100とおき直します.)
そして,最終成績$x$を
$$x=0.6x_1+0.2\max(x_1,y_1)+0.2\max(x_1, y_2)$$
と決めます.
(これは,10月に宣言した通りの決め方です.)

演習については,次のように成績を付けました.
まず,
$$\align
a&= \min(30, \hbox{演習時間中に前で解いた年間通算回数}\times 6),\\
b&= \hbox{年間2回のレポート(いずれも30点満点)のうちのいいほうの点数},\\
c&= \hbox{年間4回の演習時間中のテストのうちいいほうから2回分の点数},
\endalign$$
とおいて,
演習の点数$y$を,
$y=\min(100, a+b+0.35c)$とするのですが,
講義の最終成績2回の平均が80点以上でかつ,$y$よりも大きい場合は,
講義の最終成績2回の平均を演習の成績にします.
(これも,10月に宣言した通りの決め方です.最後の規則が適用されて
点数が上がった人は4人でした.)
以上すべて,1点未満は四捨五入しました.

期末試験そのものの
平均点は,71点,得点分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--39 (点) && 40--59 && 60--79 && 80--99 && 100--119 && 120--139 &&140 & \cr
\vsp\t
& 7(人) &&  8 &&  11 && 9 && 5 && 3 && 1 & \cr
\vsp\t
}}$$


また,後期最終成績の平均は69点,得点分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--24 (点) && 25--49  && 50--64 && 65--79 && 80--99 && 100 & \cr
\vsp\t
& 0(人) &&  8 &&  9 && 9 && 9 && 9 & \cr
\vsp\t
}}$$

演習の最終成績については,平均は73点,得点分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--24 (点) && 25--49  && 50--64 && 65--79 && 80--99 && 100 & \cr
\vsp\t
& 3(人) &&  6 && 2  && 4 && 11 && 12 & \cr
\vsp\t
}}$$

\bigskip [1] 
これは難しすぎたようで,ほとんどの人が0点で,ちゃんとできた人は
1人だけでした.まず,私の考えていた答から説明します.

$-1 < x < 1$の時
$$\frac{1}{1-x}=1+x+x^2+x^3+x^4+\cdots\tag1$$
です.右辺は収束半径1のべき級数なので,何回でも項別微分でき,2回
項別微分することにより,
$-1 < x < 1$で
$$\frac{2}{(1-x)^3}=2\cdot1+3\cdot2x+4\cdot3x^2+5\cdot4x^3+6\cdot5x^4+\cdots\tag2$$
を得ます.$-1 < x < 1$の時$0\le x^2 < 1$ですから,$x$のかわりに$x^2$を代入するこ
とができ,両辺2で割って,
$$\frac{1}{(1-x)^3}=\frac{2\cdot1}{2}+\frac{3\cdot2}{2}x^2+\frac{4\cdot3}{2}
x^4+\frac{5\cdot4}{2}x^6+\frac{6\cdot5}{2}x^8+\cdots=
\sum_{n=0}^\infty\frac{(n+2)(n+1)}{2}x^{2n}\tag3$$
となります.
この(3)の右辺は収束半径1のべき級数ですから,$-1 < x < 1$の範囲で実解析的と
なり,$x=0$におけるTaylor展開は,このべき級数自身になります.
また,(3)のべき級数は,収束半径1を持ち,$x=\pm1$では明らかに
収束しないので,上の等式が成り立つ範囲は,ちょうど$-1 < x < 1$です.

こうやれば,ほとんど計算せずにすむ問題のつもりだったのですが,
こうやった人は一人もいませんでした.

ほとんどの人が直接微分を繰り返して,ぐしゃぐしゃになっていました.
(ただ微分して,Taylor展開するだけなら,前期の問題のはずですね.
わざわざ後期に出したのは,実解析関数の話を使って欲しかったからです.)
微分する方針でできていたのは,
$$\frac{1}{(1-x^2)^3}=\cdots$$
と部分分数分解してそれぞれ微分する,というやり方の人だけでした.
これなら,まあまあできるくらいの計算量です.(この部分分数
分解も後期の内容でした.)

それから,(1)のかわりに,
$x\in(-1,1)$の時
$$\frac{1}{1-x^2}=1+x^2+x^4+x^6+x^8+\cdots$$
とやってから両辺3乗するという方針も2人いました.
3乗する計算さえちゃんとやれば,これはけっこう楽なのですが,
実際は計算を間違えていました.

項別微分して,(2)のような式を出すというのは,
「べき級数は収束半径内で実解析的になる」という証明のところで
やったんですが,皆さんおぼえていないようでした.

\bigskip [2] 


\bigskip [3] 
これは,極座標に変換する問題です.(それ以外の方法ではちょっと
できないでしょう.)
極座標では,
$$\int_0^{2\pi}\int_0^\infty r^2 e^{-r^4}r\;dr\;d\theta=
\int_0^{2\pi}\left[\frac{-1}{4}e^{-r^4}\right]_0^\infty\;d\theta=
\frac{\pi}{2}$$
となります.(これで,広義積分がちゃんと収束していることも
わかります.)
これはかなりできていて,計算ミスがいくらか
あったくらいです.

\bigskip [4] 
これは,積分の順序を入れ替えれば計算が易しくなる,という問題でした.

$0\le x\le 1$, $2-2\sqrt{1-x}\le y\le 2+2\sqrt{1-x}$
という条件は,
$0\le y\le 4$, $0\le x\le y-y^2/4$と書けるので,
累次積分を
$$\align
\int_0^4\int_0^{y-y^2/4} xy^4\;dx\;dy
&=\int_0^4\left[\frac{x^2}{2}y^4\right]_0^{y-y^2/4}\;dy\\
&=\int_0^4\frac{1}{32}(4y-y^2)y^4\;dy\\
&=\frac{1}{32}\int_0^4 y^8-8y^7+16y^6\;dy\\
&=\frac{1}{32}\left[\frac{y^9}{9}-y^8+\frac{16}{7}y^7\right]_0^4\\
&=\frac{4^8}{32}\left(\frac{4}{9}-1+\frac{4}{7}\right)\\
&=\frac{2048}{63}
\endalign
$$
と計算できます.

直接もとのままで計算してももちろんでき,
計算を間違えなかった人はちゃんと同じ答になっていました.
どちらにしろ,計算ミスはたくさんありました.
正しい方針でやっていれば,計算ミスはそれほど減点していない
つもりです.

\bye