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\def\R{{\bold R}}
\def\e{{\varepsilon}}

\centerline{数学I A (理科I類17,18,27,28組)前期期末テスト略解・解説}
\rightline{1994年10月 河東泰之}
\bigskip

答案の上に数字が二つ書いてありますが,左側の数字が
期末試験そのものの点数(各問25点,125点満点)で,右側の
点数(○で囲ってある数字)が正式のこの科目の成績
(教務課に提出したもの)です.
この算出法は次のとおりです.
(演習の成績は1年間の通算でつけるので,今回は何もつけていません.)

まず,学期末試験の点数を,$x_1$点,
5月18日の中間テストの点数を,$y_1$点,
6月29日の中間テストの点数を,$y_2$点とします.
次に$x_1$に5を加え,さらに100を越えた場合は$x_1$を100とおき直します.
そして,総合点$x$を
$$x=0.4x_1+0.3\max(x_1,y_1)+0.3\max(x_1, y_2)$$
とおき,さらに
$45\le x<50$の場合は$x=50$とおき直します.こうして得られた$x$が
総合成績です.(これは,4月に宣言したものより,甘い方向に
少し変わっています.)

期末試験そのものの
平均点は,62.4点,得点分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--19 (点) && 20--39  && 40--59 && 60--79 && 80--99 && 100--124 && 125 & \cr
\vsp\t
& 5(人) &&  8 &&  8 && 12 && 6 && 5 && 1 & \cr
\vsp\t
}}$$


また,総合成績の平均は67.7点,得点分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--24 (点) && 25--49  && 50--64 && 65--79 && 80--99 && 100 & \cr
\vsp\t
& 3(人) &&  4 &&  12 && 7 && 12 && 7 & \cr
\vsp\t
}}$$

\bigskip [1] 
答えは「(定数関数0に)一様収束している」です.
$x\in [0,\infty)$の時,
$0\le x/(1+nx)<1/n$なので,任意の$\e>0$に対し,
自然数$N$を$N>1/\e$となるように取れば,
$n\ge N$の時すべての
$x\in [0,\infty)$に対して
$|0-x/(1+nx)|<1/n<\e$となって,証明が終わります.

収束先の計算を間違えて,たとえば$1/x$に収束するなどと
勘違いした人が結構いました.

一様連続と混同したり,また「各点収束なので,一様収束」
などと誤った主張をした人もいました.(これが
誤りであることは,
たとえば
関数列$\left\{\dfrac{x^2}{1+nx}\right\}_{n=1,2,3,\dots}$を
考えればわかります.)

\bigskip [2] 
これは,もちろん高校数学のようにやってもできますが,一番簡単なのは
Taylor展開することです.$x=0$のときは明らかで,
$x>0$の時は,
$f(x)=(1+x)^{3/2}$とすると,
$f'(x)=3(1+x)^{1/2}/2$,
$f''(x)=3(1+x)^{-1/2}/4$,
$f'''(x)=-3(1+x)^{-3/2}/8$なので,Taylorの定理より,
$f(x)=1+3x/2+3x^2/8-(1+c)^{-3/2}x^3/16$が成り立つような
$c$が$0<c<x$の範囲に存在します.
$-x^3/16\le-(1+c)^{-3/2}x^3/16\le 0$
ですから問題の式を得ます.

あるいは,右側の不等式をこうやって示したあと,左側については
もう1次高いTaylor展開を使うこともできます.

Taylor展開を有限次で止めずに,無限級数に展開した人も
かなりいました.しかしこうすると,収束の問題が生じてしまいます.
実際,この例では
$x>1$で収束しなくなってしまうので,問題の$x\ge0$という
条件に適合しなくなります.

\bigskip [3] 
これは,$f(tx,ty)=t^k f(x,y)$
の両辺を$t$で2回微分して,$t=1$とすれば,
問題の式そのものが出ます.この方法($t$で微分したあと,$t=1$とおく)
は,2変数のTaylor展開のところでやったのですが,みんな
忘れてしまったのか,できはよくありませんでした.

また,
条件$f(tx,ty)=t^k f(x,y)$を満たす$f$は,
$k$次の項だけからなる多項式であることを言おうとしている
人が結構いましたが,これは誤りです.

\bigskip [4] 
これは,標準的な計算問題ですが,計算ミス,極値条件の
思い違いなどがたくさんありました.

まず,普通に微分していくと,
$$\align
f_x&=(4x-2xy^2-4x^3)e^{-x^2-y^2},\\
f_y&=(2y-4x^2y-2y^3)e^{-x^2-y^2},\\
f_{xx}&=(4-20x^2+4x^2y^2-2y^2+8x^4)e^{-x^2-y^2},\\
f_{xy}=f_{yx}&=(-12xy+4xy^3+8x^3y)e^{-x^2-y^2},\\
f_{yy}&=(2-4x^2-10y^2+8x^2y^2+4y^4)e^{-x^2-y^2}
\endalign$$
となります.
そこで,$f_x(x,y)=f_y(x,y)=0$の点を探すと,
$(x,y)=(0,0),(\pm1,0),(0,\pm1)$の5通りとなります.
これらについて,Hessianを見れば,
$(x,y)=(0,0)$で,極小値$0$,
$(x,y)=(\pm1,0)$で,極大値$2/e$をとることがわかります.

まず,
$f_x(x,y)=f_y(x,y)=0$の点を探すところで,計算ミス,勘違い
がかなりありました.また,偏微分の計算ミスも
たくさんありました.

この問題は,関数がきれいな形をしているため,答えの
見当は次のように簡単についてしまいます.ですから,
計算ミスで違う答になった人は本来,おかしいということに
気付くべきです.

まず,$(x,y)=(0,0)$で$f(x,y)=0$, その他の点で$f(x,y)>0$
となるのは明らかなので,$f(0,0)$が最小値です.
次に$f(x,y)=(x^2+(x^2+y^2))e^{-x^2-y^2}$と書いて,
$x^2+y^2=r^2$ $(r>0)$という円周上で考えれば,
明らかにこの円周上での最大値は
$f(\pm r, 0)=2r^2 e^{-r^2}$
です.$r>0$を動かせば,
関数$2r^2 e^{-r^2}$の最大値は$0<r<\infty$に一ヶ所あり,
$r=1$のときの
$2/e$であることはすぐにわかります.
ですから結局,
$(x,y)=(0,0)$で,最小値$0$,
$(x,y)=(\pm1,0)$で,最大値$2/e$をとることがわかり,
これ以外に極値はないことは,関数のグラフを思い浮かべれば
容易に「推定」できます.(「証明」には
もう少し議論がいりますが.)

このように,まずだいたいどんなグラフになるかを考えるのは
重要なことです.

また,$X=x^2, Y=y^2$とおいて,
$(2X+Y)e^{-X-Y}$の問題に直そうとしている人が何人か
いましたが,これは$x=0$または$y=0$のところで問題があるので
かなりくふうしないとうまくいきません.

\bigskip
5番は証明問題なので,まず省略のない完全な証明を示します.

\bigskip [5A] 
まず$A, B$はいずれも空ではないので,
$a_0\in A$, $b_0\in B$となる有理数$a_0, b_0$を取る.もちろん,
$a_0<b_0$である.
次に$a_0+kr/2$ ($k=0,1,2,\dots$)という形の有理数を考えると,
$k=0$の時,$A$の元となり,$k\ge 2(b_0-a_0)r$の時,
$B$の元となるので,ある$k$に対して,
$a_0+kr/2\in A$, $a_0+(k+1)r/2\in B$となることがわかる.
(厳密には,背理法で$k$に関する数学的帰納法を使う.)このとき,
$a=a_0+kr/2\in A$, $b=a_0+(k+1)r/2\in B$と
おけば
$0<b-a=r/2<r$である.

\bigskip [5B] 
$a_1\le a_n<b_n\le b_1$より,数列$\{a_n\}_n$, $\{b_n\}_n$
はいずれも有界である.
数列$\{a_n\}_n$は単調増大, 数列$\{b_n\}_n$は単調減少なので,
それぞれ極限値$\alpha$, $\beta$を持つ.
$$\beta-\alpha=\lim_{n\to\infty}b_n
-\lim_{n\to\infty}a_n=
\lim_{n\to\infty}(b_n-a_n)=
\lim_{n\to\infty}|b_n-a_n|=0$$
だから,$\alpha=\beta$である.
$n$を任意に決めたあと,$m>n$という$m$全体を考えて
$a_n\le a_m<b_m\le b_n$で,$m\to\infty$とすれば,
$a_n\le \alpha=\beta\le b_n$を得るので,
任意の自然数$n$について
$\alpha\in [a_n, b_n]$である.

次に,$\alpha'$がすべての
自然数$n$について
$\alpha'\in [a_n, b_n]$を満たしたとすると,
$a_n\le \alpha'\le b_n$で,$n\to\infty$として,
$\alpha\le\alpha'\le\beta=\alpha$となる.よって,
すべての$[a_n, b_n]$にふくまれる実数は$\alpha$一つだけである.

\bigskip

[5A]は,ほかにも方針はありますが,ほとんどの答案は,だいたいできているか,
まるでおかしいかの二つに一つでした.

[5B]は,まずいきなり
$\lim_{n\to\infty}|b_n-a_n|=0$だから,
$\lim_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}b_n$
とかいたものがたくさんありましたが,
これでは論理的に飛躍しており,
$\lim_{n\to\infty}a_n$, $\lim_{n\to\infty}b_n$
が存在することを先に示さなくてはなりません.
(例えば,$a_n=b_n=n$といった数列を考えてみてください.)

また,
$\lim_{n\to\infty}a_n=\lim_{n\to\infty}b_n=\alpha$としたあと,
すべての$n$に対し,$a_n<\alpha<b_n$と書いた人もかなりいましたが,
これは
$a_n\le \alpha\le b_n$でないといけません.
(例えば,$a_n=0$, $b_n=1/n$, $\alpha=0$.)

最後の「一つだけ」存在する,という点もいいかげんな解答がけっこう
ありました.


\bye