\magnification=\magstep1 \documentstyle{amsppt} \baselineskip 14pt \NoBlackBoxes \nopagenumbers \define\R{\bold R} \define\Q{\bold Q} \define\Z{\bold Z} \define\e{\varepsilon} \def\lan{\langle} \def\ran{\rangle} \centerline{2008年度数学I演習小テスト(4)解説} \medskip \rightline{2008年6月16日} \rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)} \rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)} \rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp} \rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}} \bigskip 配点は[1] 10点,[2] (1) 15点,(2) 15点,[3] (1) 15点,(2) 15点 [4] 30点です. 最高点は100点(2人),平均点は60.6点でした. [2] については問題にミスプリントがあったので,全員にこの30点をつけた 上で,正しい問題について正しい答えを書いている人にはさらにその分の 点数を上積みしました.どうもすみません.上積み分を $x$ として, 点数は $30+x$ と書いてあります.これによって100点を超えた人(1人) は100点にしてあります. \bigskip [1] $f(x)=\sum_{n=0}^m c_n x^n$ と書いたとき,$n\le m$ では $f^{(n)}(0)=n! c_n$ であり,$n > m$ では $f^{(n)}(0)=0$ なので, Taylor 展開は $f(x)$ 自身に戻って $\sum_{n=0}^m c_n x^n$ となります. 単に $\sum_{n=0}^\infty \frac{f^{(n)}(0)}{n!} x^n$ と書いただけでは 元の定義そのものなので,何かを求めたとは認められません. 係数 $\frac{f^{(n)}(0)}{n!}$ が,元の多項式の $x^n$ の係数に一致すると 言うことが書かれていなくては0点です. \bigskip [2] (1) $f'_n(x)$ を整理して $\dfrac{(-x)^n}{1+x}$ となること より,$f_n(0)=0$ と合わせて $f_n(x)=\dsize\int_0^x \frac{(-t)^n}{1+t}\;dt$ となります. (これは (2) のヒントなので (2) に使えるような形に整理されていない ものは減点してあります.また,ちゃんと定積分で $0$ から $x$ までと 書かなくてはいけません.) (2) (1) の積分の形から $|f_n(x)| \le \dfrac{|x|^{n+1}}{1-|x|}$ なので $-1 < x < 1$, $n\to\infty$ のとき $f_n(x)\to 0$ となります. 一般に $\dsize\lim_{n\to\infty} \int g_n(x)\;dx= \int \lim_{n\to\infty} g_n(x)\;dx$ であるとは限らないので このような論法を使用しているものは減点です. 収束半径の話はまだやっていませんが,収束半径が1であることを示しても, そこから剰余項が0に収束することは導かれません. \bigskip [3] (1) まず $f'(x)=1/(1+x^2)$ より $$f'(x)=1-x^2+x^4+\cdots+(-x^2)^n+\frac{(-x^2)^{n+1}}{1+x^2}$$ となります.これより $$f^{(n)}(0)=\cases 0,&\quad\text{$n$ が偶数のとき},\\ (-1)^m (2m)!,&\quad\text{$n$ が奇数で $n=2m+1$ のとき} \endcases$$ となります.これより,Taylor 展開は $\dsize\sum_{n=0}^\infty \frac{(-1)^n}{2n+1} x^{2n+1}$ となります.(まだこれが $f(x)$ に等しいことは示していないので $f(x)=$ と書いてはいけません.) (2) [2] (2) と同様の論法で $$\arctan x=x-\frac{x^3}{3}+\frac{x^5}{5}-\cdots +(-1)^n\frac{x^{2n+1}}{2n+1}+\int_0^x \frac{(-t^2)^{n+1}} {1+t^2}\;dt$$ となります.最後の項は $|x|^{2n+3}$ で上から抑えられるので,$-1 < x < 1$, $n\to\infty$ のとき $0$ に収束し,(1) の無限級数が $\arctan x$ に等しくなります. こちらも [2] (2) と同様,説明なしに $\lim$ を $\sum$ の中に いきなり入れたものは不十分です.収束半径の話も [2] (2) と同様です・ \bigskip [4] $f(x)=(125/64+x)^{1/3}$ とおくと,求める答えは $f(3/64)$ です.$f'(x)=(125/64+x)^{-2/3}/3$, $f''(x)=-2(125/64+x)^{-5/3}/9$ より Taylor 展開は $$f(x)=\frac{5}{4}+\frac{16x}{75}- \frac{x^2(125/64+\theta x)^{-5/3}}{9}, \quad 0 < \theta < 1$$ となります.$x=3/64$ を入れると剰余項は $$0 <\frac{x^2(125/64+\theta x)^{-5/3}}{9} < \frac{1}{12500} =0.00008$$ と評価されます.$\dfrac{5}{4}+\dfrac{16x}{75}$ の部分は $x=3/64$ を入れると $1.26$ なので, $1.25992 < \root 3 \of 2 < 1.26 $ を得ます.切捨てで 小数点以下3桁まで聞かれているので答えは $1.259$ です. (本当の値は,$1.259921\cdots$ です.) Taylor 展開を使えとは言っていないので, $1.259^3=1.995616979$, $1.260^3=2.000376$ だから $1.259 < \root 3 \of 2 < 1.260$ であり小数点以下4桁以下を切り捨てて 答えは $1.259$ だ,というのも正解です. ただしこの方法は,あまり頭を使っていないので, $1.259^3$ を本当にちゃんと計算したかどうか怪しいものや 切捨てを誤っているもの,切捨ての説明がきちんと書かれて いないものは大幅に減点しました. たとえば何をどうしたのか言わずに≒を使ったり,両辺が正確に等しくは ないものを等号でつないでいたり,小数を$\cdots$でつないでどこまで 正確なのかきちんと示していないものなどです. (たとえば $0.1\cdots+0.2\cdots$ は $0.3\cdots$ かどうかわかりません. また,≒は意味が正確に定義された数学記号ではないので,数学の問題において 何をどうしたのか言わずに使ってはいけません.) $(1+x)^{1/3}$ の Taylor 展開を書いて $x=1$ を代入しても収束が とても遅いので役立たずです. \bye