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\def\ran{\rangle}
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\centerline{数理科学 II 期末テスト解答・解説}
\medskip
\rightline{2002年7月30日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

問題 [3] の条件 (3) で,$y(x)$ が定数関数0ではない,というのを
書き忘れました.たいへん申し訳ありません.
(Web 上にあるファイルは修正済みです.)
しかし,この問題に手をつけた人は2人を除いて,
$y(x)$ が定数関数0ではない
という意味だと思って解いていたのでそのまま採点しました.
文字通りに解釈した2人の人はもちろん正解です.この場合,
答えにはパラメータが一つ入ったままになります.

配点は順に $10\times 3$, 20, 20+10, 20点の100点満点です.
この点数$x_2$が上に赤で書いてあります.
答えがあっていて説明不足の場合,「説明不足」,「理由不十分」,
「なぜか?」などと書いた上で,答えに丸がついていますが,それは
減点されているのであって満点ではありませんから注意してください.
中間テストの点数を$x_1$とすると,最終成績$x$は前に予告したとおり,
$x=0.3\max(x_1,x_2)+0.7x_2$として計算します.($x_1$は
100点を超えていたら100点で頭打ちです.)これが青で書いてある点数で,
教務課に報告されるものです.採点ミスがあると思う人は,ただちに申し出て
下さい.(返却する答案は,すべてコピーが取ってあります.これまで
点数を修正したのは部分点の足し算ミスによる1回だけです.)

期末テスト自体の最高点は 97点(1人),平均点は63.4点,その得点の
分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&& \omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--49 (点) && 50--59 && 60--69
&& 70--79  && 80--89 && 90--99 && 100 & \cr
\vsp\t
&  28 (人) && 17 && 17  && 22 && 9 && 21 && 0 & \cr
\vsp\t
}}$$

最終成績(青い数字)の平均点は66.3点,その得点の
分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&& \omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--49 (点) && 50--59 && 60--69
&& 70--79  && 80--89 && 90--99 && 100 & \cr
\vsp\t
& 24 (人) && 15 && 15  && 25 && 14 && 21 && 0 & \cr
\vsp\t
}}$$

以下略解と解説です.
すべての問題で,形式的に微分方程式の両辺を割ったりするときに,
分母が0になる場合の吟味が不十分なものは減点です.理論的根拠の説明など
は下記の略解では簡単にしてありますが,答案ではもっと詳しく書かないと
減点になります.

\bigskip
[1] (1) $u=y/x$ とおけば同次形としてできる.または,一階線型方程式として,
まず右辺を0とした斉次方程式を解いてもよい.そのあとは,定数変化法を使うか,
$y=x\log x$ が特殊解であることを使う.答えは,$y=x+x\log x$.

解の一意性については $x > 0$ なので $x$ で割って,
$y'=y/x +1$ と書いて右辺を $f(x,y)$ とおけば,$f(x,y)$ も $f_y(x,y)$ も
今考えている $x > 0$ の範囲で連続なので授業でやった一般的定理が使える.

(2) 一階線型方程式として,
まず右辺を0とした斉次方程式を解く.そのあとは,定数変化法を使うか,
$y=x^2$ が特殊解であることを使う.
答えは,$y = 2 e^{-1+1/x}+x^2$. 解の一意性については(1)と同様.
 
(3) まず右辺を0とした斉次方程式を解く.そのあとは,定数変化法を使うか,
$y=e^x$ が特殊解であることを使う.答えは
$y=(2x-1) e^{2x}+ e^x$. 解の一意性については(1)と同様にするか,
または定数係数線形常微分方程式の一般論を使えば,右辺の $e^x$ が実数全体で
連続なことより一意性が出る.

3問それぞれについて,解の一意性の説明が不十分なものは2点減点です.

\bigskip
[2] 一階線型方程式として,
まず右辺を0とした斉次方程式を解く.そのあとは,定数変化法を使うか,
$y=-e^{-x^2}/4$ が特殊解であることを使う.
解の一意性については[1]と同様にできるので一般解は
$y=C e^{x^2}-e^{-x^2}/4$. $|x|\to\infty$ のとき,$y(x)\to 0$ となるため
には $C=0$ が必要十分なので,$y=-e^{-x^2}/4$.

解の一意性の説明が不十分なものは4点減点です.

\bigskip
[3] 上のように,(3)には $y(x)$ が定数関数 0 ではないという条件がついて
いるものとする.まず,(2)より $y=e^{2x}$ と $y=x e^{2x}$ が問題の微分
方程式の解であり,$t$ の3次方程式 $t^3+at^2+bt+c=0$ は,$t=2$ を
重根に持つ.$a, b, c$ は実数なので,この3次方程式はもう一つの実根
$t=\alpha$ を持つ.もし,$\alpha=2$ であれば一般解は
$y=C_1 e^{2x} + C_2 x e^{2x} + C_3 x^2 e^{2x}$ となるが,この形の解が
条件(3)を満たすことはできない.$\alpha\neq2$ であれば一般解は
$y=C_1 e^{2x} + C_2 x e^{2x} + C_3 e^{\alpha x}$ となるが,この形の解が
条件(3)を満たすためには,$C_1=C_2=0$ で,$\alpha=-1$ が必要.このとき,
$C_3\neq 0$ で(3)が満たされる.よって,答えは $\alpha=-1$ のときの
$a=-3, b=0, c=4$ である.

またこのとき,一般解は
$y=C_1 e^{2x} + C_2 x e^{2x} + C_3 e^{-x}$ となるので後半の答えは
$y=(-x+4/3) e^{2x}-4 e^{-x}/3$.

いきなり,(3)より $y=C e^{-x}$ の形である,とするのは正しい結論ですが
説明が不十分です.また,$\alpha=2$ の場合を考えていないものも不十分です.
説明の不足の程度によって,2から4点の減点です.

\bigskip
[4] 前半は,$y_0=1$ (定数関数)から始めて定義どおり計算すれば,
$y_n=1+x+x^2/2+\cdots+x^n/n!$となります.この極限はもちろん
$y=e^x$ でこれが答えです.[注意] にも書いてあるとおり,いきなり
微分方程式を解いてしまえば答えの $y=e^x$ はすぐ出ますが,それは
問題で聞いていることと違うので,これだけ書いてあっても点数は
ありません.

\bye