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\def\ran{\rangle}
\def\supp{\text{supp}}

\centerline{数理科学 II 期末予備テスト解答・解説}
\medskip
\rightline{2002年6月27日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

配点は,[1]から順に $15\times 3$, 35, $20+15$, 30点です.
平均点は,69.3点で次のような得点分布でした.
採点はティーチングアシスタント
(大学院生)の竹内君です.返す答案はコピーが取ってあります.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit 
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--49 (点) && 50--59  && 60--69 && 70--79 && 80--89 && 90--99 && 100--109 && 110--145 & \cr
\vsp\t
& 23(人) &&  7 && 13 && 26 && 21 && 16 && 3 && 0 & \cr
\vsp\t
}}$$

すべての問題で,形式的に微分方程式の両辺を割ったりするときに,
分母が0になる場合の吟味が不十分なものは減点です.理論的根拠の説明など
は下記の略解では簡単にしてありますが,答案ではもっと詳しく書かないと
減点になります.本番の期末試験でも,形式,内容等は同程度のものが
出ます.(同じ,あるいはそっくりな問題が出るという意味ではありません.)

\bigskip
[1] いずれも,解の存在と一意性が使える形をしている.
(3) は定数係数の常微分方程式の一般論と言ってもよい.

(1) まず,$y=0, -1$ (定数関数)はいずれも解である.解の一意性より,
これ以外の解は,値 $0,-1$を取らないので普通に変数分離形として
解けばよい.
答えは $y=\dfrac{1}{c e^{-x}-1}$ ($c$ は任意の定数) または $y=0$.
あるいは,$y=\dfrac{c e^x}{1-c e^x}$ ($c$ は任意の定数)
または $y=-1$ と書いても同じことである.
もちろん分母が 0 になるところではこの関数は定義されていない.

(2) 非斉次の一階線形方程式と思ってもよいし,$2xy$ を右辺に移項して
変数分離形だと思ってもよい.$y=-\dfrac{1}{2}$ (定数関数)は解であり,
解の一意性より,これ以外の解は,値 $-\dfrac{1}{2}$を取らないことに注意する.
答えは $y=-\dfrac{1}{2}+c e^{x^2}$. ($c$ は任意の定数.)

(3) $t^2+2t+1=0$ の根は2重根 $t=-1$ だから,一般解は
$y=a e^{-x}+bxe^{-x}$ の形である.条件より,定数 $a,b$を求めると
$a=1$, $b=2$ となるので,$y= e^{-x}+ 2xe^{-x}$.

\bigskip
[2] $x\neq0$ では,$y'=\dfrac{2y}{x}+\dfrac{y^2}{x^2}$ と書けて,
解の存在と一意性が使える形をしており,さらにこれは同次形である.
この解は普通に$u=\dfrac{y}{x}$ とおいて解いて,
$y=\dfrac{x^2}{c-x}$ ($c$ は任意の定数)と,$y=0,-x$ 
である.($y=-x$の方は $c=0$の場合と思ってよい.)$c\neq0$の場合は,
「実数全体で定義された解」にならないので,残る候補は
$y=0,-x$だけである.これらは,$x=0$の場合も含めて解になっている
のでO.K.である.よって答えは$y=0,-x$.

\bigskip
[3] $y=e^{2x}, xe^{2x}, e^{-x}$の3つも解であることに
注意すると,$t=2$ が2重根,$t=-1$ が単根であるような3次方程式は
$t^3-3t^2+4=0$であるから,$a=-3, b=0, c=4$である.

3階の非斉次方程式は授業でやっていないが,2回のときの類推で
$y= k e^{3x}$ とおいて解を探してみると$k=1$ でよいことがわかる.
よって答えは,$e^{3x}$ である.(もちろん,これに
$c_1 e^{2x}+c_2 xe^{2x}+c_3 e^{-x}$を加えたものが一般解なので
この形を挙げてもよい.)

\bigskip
[4]
答えはもちろんいくらでもあるが,
たとえば,$y=cx(x-1)$が解になるように考えて,$\dfrac{y}{x(x-1)}$を
微分してゼロとおいて分母をはらうと,
$$-(2x-1)y+x(x-1)\dfrac{dy}{dx}=0$$
が出る.これが確かに条件を満たしていることが確かめられる.
この方程式では$x=2$のとき,$y=2$となる解は$y=x(x-1)$である.
($x\neq 0, 1$では解の一意性があるので,$y=cx(x-1)$の形で
$x=2$のときに$y=2$となるようにすればそれが唯一の解である.)
\bye