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\centerline{数理科学 II 期末テスト解答解説}
\medskip
\rightline{2007年7月27日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

配点は [1] が 15点$\times3$, [2], [3], [4] が各25点の計120点満点です.
この点数 $x_2$ が上に赤で書いてあります.
第2回中間テストの点数を $x_1$ とすると,最終成績 $x$ は前に予告したとおり,
$x=0.3\max(x_1,x_2)+0.7x_2$ (を四捨五入したもの) として計算します.
(ただし $x_2$ が100点を超えていたら100点で頭打ちです.) 
これが青で書いてある点数で,教務課に報告されるものです.
採点ミスがあると思う人は,ただちに申し出て下さい.
(返却する答案は,すべてコピーが取ってあります.)

期末テスト自体の最高点は120点(2人),平均点は69.4点,その得点の
分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&& \omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--49 (点) && 50--59 && 60--69
&& 70--79  && 80--89 && 90--99 && 100-- & \cr
\vsp\t
& 31 (人) && 13 &&27 && 30 && 18 && 16  && 15 & \cr
\vsp\t
}}$$

最終成績(青い数字)の平均点は69.3点,その得点の
分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&& \omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--49 (点) && 50--59 && 60--69
&& 70--79  && 80--89 && 90--99 && 100 & \cr
\vsp\t
& 31 (人) && 12 && 28  && 30 && 18 && 16 && 15 & \cr
\vsp\t
}}$$

これによって,A, B, C, D の人数はそれぞれ,49, 44, 26, 31人となります.

\bigskip
[1] (1) $x\neq 0,1$ では,
$y'=(2x-1)y/(x^2-x)$ と書けて,右辺とその $y$ による偏微分は
連続なので解の一意性が使えます.定数関数 $y=0$ は明らかに解であり,
解の一意性より他の解は値0を取りません.その場合は,
変数分離として
$$\int\frac{dy}{y}=\int\frac{2x-1}{x^2-x}\;dx$$
と計算できて,$\log|y|=\log|x^2-x|+C$ ($C$ は積分定数)となります.
これより,$y=\pm e^C (x^2-x)$ を得ます.ここで,$\pm e^C$ を
新たに $c$ とおいて,$y=0$ も解であったことを思い出すと,
$y=c(x^2-x)$ ($c$ は任意の定数)となります.
これは今のところ,$ x < 0, 0 < x < 1, 1 < x$ の場合で,
この3つのそれぞれの場合で $c$ の値が異なるかも知れません.

しかし,$x=0,1$ で微分可能になるようにつなぐには,
$x < 0, 0 < x < 1, x > 1$ の各区間で $c$ が共通でなくてはいけません.
逆に $y=c(x^2-x)$ ($c$ は任意の定数)とすれば,$x=0,1$ でも
微分方程式は満たされています.よって,答えは
$y=c(x^2-x)$ ($c$ は任意の定数) です.

$x=0,1$ でどうつながるかを考察していない人がたくさんいました.
単に連続につなぐと言うだけでは不十分です.

(2) これは1階線型方程式で,右辺を0とした斉次方程式
$y'=y\cos x$ をまず考えます.この右辺もそれを $y$ で偏微分したものも
連続なので解の一意性が使えます.定数関数 $y=0$ は明らかに解であり,
解の一意性より他の解は値0を取りません.その場合は
変数分離として $\log |y|=\sin x +C$ ($C$ は積分定数) と
解けます.(1) と同様に定数関数 0 もあわせて,
$y=ce^{\sin x}$ ($c$ は任意の定数)と書けます.

元の方程式の解の一つとして$y=(x^3/3+x^2+3x)e^{\sin x}$ がすぐに
見つかるので,答えは
$y=(x^3/3+x^2+3x+c)e^{\sin x}$ ($c$ は任意の定数)となります.
もちろん定数変化法でもできます.

(3) 右辺を0とした斉次方程式については,
2次方程式 $t^2-4t+t=0$ の解が2重解 $t=2$ であることより,解は
$y=(c_1 x+c_2)e^{2x}$ ($c_1, c_2$ は任意の定数)となります.
$y= x^2 e^{2x}$ が非斉次方程式の解の一つであることは
すぐにわかるので,答えは $y=(x^2+c_1 x+c_2)e^{2x}$
($c_1, c_2$ は任意の定数)となります.
これももちろん定数変化法でもできます.

\medskip
[2] 二つの解の差を取った,$\sin x-e^x$ は右辺を 0 とした斉次方程式
$y^{(n)}+c_{n-1}y^{(n-1)}+\cdots+c_1y'+c_0y=0$ の解であることになり
ます.このとき授業の一般論より,この斉次方程式は解,
$\sin x, \cos x, e^x$ を持つことになり,$n$ は3以上となります.
$(t-1)(t^2+1)=t^3-t^2+t-1$ より,
$y'''-y''+y'-y=0$ が$\sin x, \cos x, e^x$ を解に持つ,もっとも
階数の低い定数係数線形常微分方程式です.あとは,非斉次方程式の
右辺を $x+e^x$ が解になるように決めればよいので.
$y'''-y''+y'-y=1-x$ が求める答えです.

\medskip
[3] $y_1$ の形は
$z_0+\alpha z_1+ \beta z_2$ ($\alpha, \beta$ は任意の実数)で,
$y_2$ の形は
$w_0+\gamma w_1+ \delta w_2$ ($\gamma, \delta$ は任意の実数)です.
よって,$V$ の元は,
$z_0-w_0+\alpha z_1+ \beta z_2-\gamma w_1- \delta w_2$
($\alpha, \beta,\gamma, \delta $ は任意の実数) の形です.
($\alpha z_1+ \beta z_2$, $\gamma w_1+ \delta w_2$ の部分は
それぞれ斉次方程式の解です.)
これらがベクトル空間をなすには,定数関数0がこの形に書けなければ
いけません.これより,
$w_0-z_0=\alpha z_1+ \beta z_2-\gamma w_1- \delta w_2$
($\alpha, \beta,\gamma, \delta $ はある実数) となります.
(ただちに $w_0=z_0$ となるわけではありません.二つの特殊解
が同じでなくてはいけない,と書いている人が多くいましたが,「うまく
特殊解を選ぶと一致させられる」というのが正しいステートメントです.)
以下これが成り立ったとしましょう.すると,$V$ は,
$\alpha z_1+ \beta z_2+\gamma w_1+\delta w_2$
($\alpha, \beta,\gamma, \delta $ は任意の実数) の形の関数
全体からなる集合となります.この次元が2になる条件を
求めるのですが,$\alpha z_1+ \beta z_2$
($\alpha, \beta$ は任意の実数) の形の関数全体が2次元になることが
授業でやったことよりわかります.(Wronskian が 0でないからです.)
よって,$V$ が2次元になるためには,
$w_1, w_2$ が いずれも$\alpha z_1+ \beta z_2$
($\alpha, \beta$ は任意の実数) の形をしていないといけません.
このとき,$w_1, w_2$ は斉次方程式 $y''+ay'+by=0$ の解に
なります.$w_1, w_2$ の形は授業でやってあるので,そのことから,
2次方程式 $t^2+ct+d=0$ の解がいずれも,
2次方程式 $t^2+at+b=0$ の解であることがわかります.二つの方程式
の役割を入れ替えても同じ論法が使えるので,結局
2次方程式 $t^2+at+b=0$ と 2次方程式 $t^2+ct+d=0$ は同じもので
なくてはならず,$a=c$, $b=d$ が導かれます.さらに
$w_0-z_0=\alpha z_1+ \beta z_2-\gamma w_1- \delta w_2$
と書けたことを使うと,$w_0$ はもともと,$y''+cy'+dy=g(x)$ の
解であったのですが,$y''+ay'+by=f(x)$ の解でもあることが
わかります.これより,$f(x)=g(x)$ が導かれます.

以上で,$a=c$, $b=d$, $f(x)=g(x)$ が必要条件であることが
わかりましたが,これが十分条件であることはすぐにわかるので,
これが答えです.

\medskip
[4] (1) $t^3+at^2+bt+c=0$ は実数の解を少なくとも一つ持ちます.
その一つを $\alpha$ とします.すると微分方程式は解
$e^{\alpha x}$ を持ちますが,これが有界になるには $\alpha=0$ で
なくてはならず,このとき $c=0$ となります.

次に $t^2+at+b=0$ の解を考えますが,上と同様に考えて,これが0以外の
実数解を持つことはできません.また解0をもってしまうと,もとの
$t^3+at^2+bt+c=0$ が2重解0を持つことになり,このとき $y=x$ が
微分方程式の解になりますがこれは有界ではありません.よって
2次方程式 $t^2+at+b=0$ は実数解を持ちません.よって
$a^2-4b < 0$ となります.このとき $t^2+at+b=0$ の解は
$\beta\pm\gamma i$ ($\gamma\neq0$) の形になりますが,すると
微分方程式は解 $y=e^{\beta x}\sin \gamma x$ を持ち,これが
有界になるためには $\beta=0$ すなわち $a=0$ が必要です.
よって,$a=c=0$, $b > 0$ が必要となります.

逆にこのとき,微分方程式の解は
$c_1 + c_2 \sin \sqrt b x + c_3 \cos \sqrt b x $
($c_1, c_2, c_3$ は実数) となり,これは有界です.よって求める
必要十分条件は $a=c=0$, $b > 0$ です.

(2) すべての解が有界と仮定します.解の一つを取ると,解全体は,
[この解]$+$[(1)の解] の形で表されます.今一つ取った解は
有界なので,(1) の解の部分もすべて有界でないといけません.
これより,(1)で求めた条件が必要条件であることがわかります.
(このような説明なしに,いきなり「(1)の条件が必要である」
と述べるのは説明が少し不足しています.)

そこで $a=c=0$, $b>0$ の場合を考えますが,
もし $b\neq1$ であれば,解の一つとして
$(\cos x)/(1-b)$ が取れます.これは有界なので,すべての解が
有界となります.

$a=c=0$, $b=1$ のときは,
$y=(-x \sin x)/2$ が解の一つですがこれは有界ではありません.

以上あわせて,$a=c=0$, $b>0$ かつ,$b \neq1$ が答えです.

\bye