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\def\ran{\rangle}

\centerline{数理科学 II 中間テスト(2)解答解説}
\medskip
\rightline{2007年6月20日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

配点は,[1] が 10点$\times4$, [2], [3]が30点ずつです.受験者は
133人,最高点は100点(2人),平均点は51.8点でした.
[2], [3]が少し難しかったようで,期末試験ではもう15〜20点ほど
点が出るようにします.返却する答案はコピーが取ってあります.

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[1] いずれも計算は簡単ですが,解が本当にそれしかないと言うことを
きちんと示さないと減点です.

(1) まず,$x\neq0$ の範囲で考えます.両辺を $x$ でわったものは
解の(存在と)一意性の定理が使える形になっています.
定数関数 $y=0$ は明らかに解なので,その他の解は値$0$を取りません.
その場合は,両辺を $y$ で割って,
$y'/y^2=1/x^2$ となります.両辺積分して,
$-1/y=-1/x+C$ となり,整理して $y=x/(1-Cx)$
($C$ は任意の定数) を得ます.次に $x=0$ でどうつながるかを
見ます.$y=x/(1-Cx)$ を $x=0$ でも連続にするには $y=0$ と
おかなくてはなりません.こうおくと,$C$ の値が何であっても
$x=0$ のとき $y'=1$ となって微分可能になり $x>0, x<0$ で
$C$ の値が違っても微分可能につながり,$x=0$ でも微分方程式は
成立していることがわかります.よって解は,
$y=0$ または,
$$y=\cases x/(1-C_1x),&x \ge 0\hbox{の時,}\\
x/(1-C_2x), & x < 0\hbox{の時,}\endcases$$
($C_1,C_2$ は任意の定数) となります.

(2) 同次形なので,$y=ux$ とおいて $u$ の方程式に直すと,
$u'x=u^2$ となります.これは $x\neq0$ の範囲で考えているので
そこで解の(存在と)一意性の定理が使える形になって,また
定数関数 $u=0$ は明らかに解です.よってこれ以外の解では
$u$ は値 $0$ を取りません.その場合は,$u$ で両辺を割って積分すると,
$-1/u=\log|x|+C$ ($C$ は任意の定数) を得ます.$y$ の式に戻すと,
$y=0$ または $y=-x/(C+\log|x|)$ ($C$ は任意の定数) となります.

(3) 右辺を$0$とした斉次方程式の解は $C e^{-x}$ ($C$ は任意の定数) 
であることは簡単にわかります.右辺を $e^{-x}$ とした非斉次方程式
の解の一つは $ax e^{-x}$ ($a$ は定数) の形で探して,
$x e^{-x}$ となります.さらに,右辺を $x$ とした非斉次方程式
の解の一つは,1次式で探して $x-1$ となります.以上をあわせて,
$C e^{-x} + x e^{-x} +x-1$ ($C$ は任意の定数) となります.

(4) 右辺を $0$ とした斉次方程式の解は,$t^2-3t+2=0$ の解が
$t=1,2$ であることより,$C_1 e^x +C_2 e^{2x}$ 
($C_1,C_2$ は任意の定数) となります.
右辺を $2x^2$ とした非斉次方程式の解の一つは,2次式の中で
探して,$x^2+3x+7/2$ となります.以上をあわせて,
$C_1 e^x +C_2 e^{2x} +x^2+3x+7/2$ 
($C_1,C_2$ は任意の定数) となります.

\medskip
[2] $t^2+pt+q=0$ の解を考えて場合わけします.

(I) まず,$q\neq0$ とします.このとき,定数関数 $y=r/q$ が
非斉次方程式の解の一つとなるので,問題の微分方程式の
解は,「斉次方程式の一般解」$+r/q$ の形になります.
$+r/q$ はあってもなくても,値が実数全体を取るかどうかに
関係ないので無視してかまわず,以下(I)では$r=0$の場合
を考えて,さらに場合を分けます.

(Ia) $p^2-4q>0$ の場合.
もう一度場合わけします.

(Ia-1) $q<0$ の場合.$t^2+pt+q=0$ の解は,正の実数
$\alpha$ と負の実数 $\beta$ になります.
$e^{\alpha x}-e^{\beta x}$ は解の一つで,すべての実数値を取るので
この場合は O.K. です.また,$q<0$ であれば
自動的に $p^2-4q>0$ になるので,条件としては $q<0$ だけを
書けばよいことになります.

(Ia-2) $q>0$ の場合.$t^2+pt+q=0$ の解は,二つの実数
$\alpha, \beta$ で共に正か,共に負になります.
このとき,解は $C_1 e^{\alpha x} + C_2e^{\beta x}$ の形の関数
で,これはすべての実数値を取ることはできません.
($C_1, C_2$ は任意の定数.)

(Ib) $p^2-4q=0$ の場合.
$t^2+pt+q=0$ の解は,二重解
$\alpha$ で正か負になります.
このとき,解は $C_1 e^{\alpha x} + C_2 xe^{\alpha x}$ の形の関数
で,これはすべての実数値を取ることはできません.
($C_1, C_2$ は任意の定数.)

(Ic)  $p^2-4q<0$ の場合.もう一度場合わけします.

(Ic-1) $p=0$ の場合.$t^2+pt+q=0$ の解は,純虚数
$\pm \alpha i$ ($\alpha$ は$0$でない実数) となります.
このとき,解は $C_1 \sin(\alpha x) + C_2 \cos(\alpha x)$ の形の関数
で,これはすべての実数値を取ることはできません.
($C_1, C_2$ は任意の定数.)

(Ic-2) $p\neq0$ の場合.
$t^2+pt+q=0$ の解は,
$\alpha\pm \beta i$ ($\alpha, \beta$ は実数,
$\alpha,\beta\neq0$) 
となります.このとき
$e^{\alpha x} \sin (\beta x)$ は解の一つで,
すべての実数値を取るのでこの場合は O.K. です.

(II) $q=0$ の場合.さらに場合わけします.

(IIa) $p\neq0$ の場合.さらに場合わけします.

(IIa-1) $r=0$ の場合.
このとき,解は $C_1 + C_2 e^{-px}$ の形の関数
で,これはすべての実数値を取ることはできません.
($C_1, C_2$ は任意の定数.)

(IIa-2) $r\neq0$ の場合.
$y=rx/p$ は解の一つで,
すべての実数値を取るのでこの場合は O.K. です.

(IIa) $p=0$ の場合.さらに場合わけします.

(IIb-1) $r=0$ の場合.
$y=x$ は解の一つで,
すべての実数値を取るのでこの場合は O.K. です.

(IIb-2) $r\neq0$ の場合.
このとき,解は $rx^2/2+C_1 x+ C_2$ の形の関数
で,これはすべての実数値を取ることはできません.
($C_1, C_2$ は任意の定数.)

以上をあわせて次の4つのケースが答えです.

(1) $q < 0$.

(2) $p^2-4q<0$, $p\neq0$.

(3) $p\neq 0$, $q=0$, $r\neq 0$.

(4) $p=q=r=0$.

\medskip
[3] (1) $1-(x-y)^2$ が0でないところでは,両辺これで割ると,
解の存在定理が使える形になるので,その点を通る解は存在します.
一方,$1-(x-y)^2=0$ であれば,微分方程式は左辺が $0$, 右辺が
$2$ となるので,その点では解はありません.よって答えは
$y=x\pm1$ です.

(2) $u=y-x$ とおきかえると,微分方程式
$(1-u^2)(u'+1)=1+u^2$
を得ます.これより,$(1-u^2)u'=2u^2$ となります.ある点で
$1-u^2=0$ になったとすると,その点では左辺は $0$, 右辺は
$2$ なので,この微分方程式は成り立ちません.その他の場合は,
両辺を $1-u^2$ で割ることができ,解の(存在と)一意性が使える
形になります.この場合は,定数関数 $u=0$ は明らかに解であり,
その他の解は値$0$を取りません.この場合については
$(1-u^2)u'=2u^2$ の両辺を $u$ で割って積分すると,
$-1/(2u)-u/2=x+C$ ($C$ は任意の定数) となります.
$u=y-x$ として分母を払うと,
$(x+C)^2-(y+C)^2=1$ を得ます.$y=x\pm1$ 上の点は解は通らない
ことに注意してこれを解いて,$y=x$ または
$y=-C\pm\sqrt{(x+C)^2-1}, y=x$ です.
($y=-C\pm\sqrt{(x+C)^2-1}$ における $x$ の範囲は
$x>1-C$ または $x<-1-C$ です.)

\bye