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\def\ran{\rangle}

\centerline{数理科学 II 中間テスト(1)解答解説}
\medskip
\rightline{2007年5月23日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

配点は,[1] が 10点$\times4$, [2], [3]が30点ずつです.受験者は
114人,最高点は100点(3人),平均点は66.2点でした.

\bigskip
[1] いずれも計算は簡単ですが,解が本当にそれしかないと言うことを
きちんと示さないと減点です.

(1) $y'=-2xy$ と見ると,右辺は連続で,$y$ で連続偏微分可能です.
よって,解の(存在と)一意性が成り立ちます.(存在も成り立ちますが,
これから具体的に解くので,必要なのは一意性の方です.)
まず,定数関数 $y=0$ は明らかに解であり,解の一意性よりその他の
解は値 $0$ を取りません.よって後者の場合は,
$\dfrac{1}{y}\dfrac{dy}{dx}=-2x$ と変形でき,両辺 $x$ で積分して
$\log|y|=-x^2 + c$ となります.($c$ は積分定数.) これより,
$y=\pm e^c e^{-x^2}$ となり,$\pm e^c$ のところを新たに $C$ と書き,
定数関数 $y=0$ も合わせると,
$y=C e^{-x^2}$ ($C$ は任意の定数) となります.

(2) $1+y^2\neq0$ なので
$\dfrac{1}{1+y^2}\dfrac{dy}{dx}=3x^2$ と変形して,両辺 $x$ で
積分すると,$\arctan y=x^3+C$ ($C$ は任意の定数) となります.
これより $y=\tan(x^3+C)$ ($C$ は任意の定数) となります.(同値変形
しかしていないので,解の存在と一意性の定理は不要です.)

(3) $x\neq 0$ なので $x$ で両辺を割ると
$y'+\dfrac{1}{x}y=-1$ という1階線形常微分方程式になります.
右辺を $0$ とした斉次方程式 $y'+\dfrac{1}{x}y=0$ をまず
考えると,$y'=-\dfrac{1}{x}y$ と書いた右辺が連続かつ $y$ で
連続偏微分可能なので,今考えている $x\neq0$ の範囲で解の
(存在と)一意性が成り立ちます.
定数関数 $y=0$ は明らかに解であり,解の一意性よりその他の
解は値 $0$ を取りません.よって後者の場合は,
$\dfrac{1}{y}\dfrac{dy}{dx}=-\dfrac{1}{x}$ と変形でき,
両辺 $x$ で積分して
$\log|y|=-\log|x| + c$ となります.($c$ は積分定数.) 
これより,$y=\dfrac{\pm e^c}{x}$ となり,
$\pm e^c$ のところを新たに $C$ と書いて
定数関数 $y=0$ も合わせると,
$y=\dfrac{C}{x}$ ($C$ は任意の定数) となります.元の
非斉次方程式に戻ると,定数変化法より
$y=\dfrac{a(x)}{x}$ とおいて,
$\dfrac{a'(x)}{x}=-1$ を解くことになります.この解は
もちろん $a(x)=-x^2/2+C$ ($C$ は任意の定数) なので,
元の微分方程式の解は $y=-x/2 +C/x$ ($C$ は任意の定数) と
なります.

同次形と思ってもできます

(4) これは元から1階線形常微分方程式なので
右辺を $0$ とした斉次方程式 $y'-2y=0$ をまず考えます.
これは何度もやった形で解は $y=C e^{2x}$ ($C$ は任意の定数) と
なります.元の非斉次方程式に戻ると,定数変化法より
$y=a(x) e^{2x}$ とおいて,
$a'(x)e^{2x}=2x^2$ を解くことになります.この解は
$a(x)=(-x^2-x-1/2)e^{-2x}+C$ ($C$ は任意の定数) なので,
元の微分方程式の解は $y=C e^{2x}-x^2-x-1/2$ ($C$ は任意の定数) と
なります.あるいは何らかの方法で,$x^2-x-1/2$ が一つの解であること
を見つけても O.K. です.(たとえば2次式の解があると見当をつけて
係数を決めればできます.)

\medskip
[2] 1階線形常微分方程式で,斉次形の解が $y=Cx^3$ でさらに
非斉次形の一つの解が $y=x^4$ であれば O.K. です.
前者から斉次方程式 $y'-\dfrac{3y}{x}=0$ が得られ,$y=x^4$ を
解にするには $y'-\dfrac{3y}{x}=x^3$ とすれば O.K. です.
($y'-\dfrac{3y}{x}=0$ の解が $y=Cx^3$ であるのは [1] と同様に
して簡単にわかります.)

これでよいことにするつもりでしたが,解の形 $y=Cx^3+ x^4$ が
$x=0$ でも定義されているのに,$y'-\dfrac{3y}{x}=x^3$ の形が
$x\neq0$ でしか考えられないのがまずいと思って,分母をはらって
$xy'-3y=x^4$ の形を書いた人が多くいました.しかしこう書くと,
$x \ge 0$ で $y=C_1 x^3+ x^4$,
$x \le 0$ で $y=C_2 x^3+ x^4$ という形の関数で $C_1\neq C_2$ 
であるものも($x=0$で微分可能につながっているので)
解になってしまいます.
こういうことで迷わないような形で問題を出すべきでした.
($x=0$ を含め,かつこの問題を回避したければ,
$$(xy'-3y-x^4)^2+(y''''')^2=0$$
と書くことはできます.$y=Cx^3+ x^4$ は4次以下なので5階微分は
0であり,また,5階微分まで存在しなくてはいけないことから
上の形で $C_1\neq C_2$ というケースが排除できるからです.)

\medskip
[3] $xy\neq0$ の範囲では,$y'=\dfrac{y^2-x^2}{2xy}$ と書けて,
この右辺は連続で,$y$ で連続偏微分可能なので,解の存在(と一意性)
の定理が使えます.よって考慮すべき可能性があるのは,
$a=0$ または $b=0$ の場合だけです.しかし,$a,b$ の片方だけが
$0$ である場合は,元の微分方程式は明らかに満たされません.
これより,$a,b$ の片方だけが$0$ である場合は答えに含まれます.
残りは $a=0, b=0$ の場合ですが,これまでの考察だけではこの場合は
わかりません.そこで,元の微分方程式を解くことにします.

まず $xy\neq0$ の範囲で考えて,$y'=\dfrac{y^2-x^2}{2xy}$ を
解くことにします.これは同次形なので,$y=ux$ とおくと,
$u'x+u=\dfrac{u^2-1}{2u}$ となります.$u^2+1\neq0$ なので
$\dfrac{-2u}{u^2+1}\dfrac{du}{dx}=\dfrac{1}{x}$ となり,両辺を
$x$ で積分して $-\log(u^2+1)=\log |x|+c$ 
($c$ は積分定数) を得ます.これより,
$\dfrac{y^2}{x^2}+1=\pm e^{-c}\dfrac{1}{x}$ となり,
$\pm e^{-c}$ を新たに $2C$ とおいて分母を払うと
$y^2+x^2=2Cx$, すなわち $(x-C)^2+y^2=C^2$ ($C$ は0でない定数)
を得ます.$y=0$ のところでこの関数を連続につなごうとすると,
微分可能にすることができなくなります.また,$x=0, y\neq0$ の
部分はこの関数たちのグラフが通りません.これより,答えは
「$a=0$ または $b=0$」であることがわかります.(原点を通る解は
ないということです.)

\bye