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\centerline{数理科学 II 中間テスト(2)解答解説}
\medskip
\rightline{2003年7月15日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip


配点は順に $15\times 3$, 20, 20, 15, 10+10点の120点満点です.
採点ミスがあると思う人は,ただちに申し出て下さい.
(返却する答案は,すべてコピーが取ってあります.)

このテストの最高点は 93点(1人),平均点は49.2点,その得点の
分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&& \omit &&\omit &&\omit
&\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--49 (点) && 50--59 && 60--69
&& 70--79  && 80--89 && 90--99 && 100-- & \cr
\vsp\t
&  49 (人) && 22 &&  18 && 7  && 6 &&  4 && 0 & \cr
\vsp\t
}}$$

このテストでは,しかるべき得点分布になるように配点,採点基準
で調節してもらう予定でしたが,残念ながらそのようになっていません.
そこで当初の予定を変更し,最終成績に加味する中間テストの点数
としては今回の点数を 1.3 倍したものを使います.(ただし100点を
超えた場合は100点で頭打ちです.) 式で書けば,
中間テストの点数を $x$, 期末テストの点数を $y$ としたとき,
最終成績は $0.7 y + 0.3 \max(y, \min(100, 1.3 x))$ (を四捨五入
した点数)となります.

解答と簡単な解説は次のとおりです.

\bigskip
[1] (1) 解の存在と一意性が使える形.$y=0$ は明らかに解.
それ以外の解は値0をとらないので,$y^2$で両辺を割って,変数分離形.
答えは $y=\dfrac{1}{x^2+C}$, $C$ は定数, または $y=0$.

\medskip (2) $\sin x\neq 0$ では,解の存在と一意性が使える形.
$\sin x$ で両辺を割れば1階線形方程式.$y=\cos x$ は特殊解なので,
$y =C \sin x+\cos x$ を得る.ここまでだと,$x=n\pi$ を超えるときに
$C$ の値が変わるかもしれないが,$x=n\pi$ の点でも $y$ が微分可能につな
がっていないといけないので $C$ は全体で定数で,これだけが解.

\medskip (3) 解の存在と一意性が使える形.
右辺を $4x^2$ としたときの特殊解と,
右辺を $e^x$ としたときの特殊解と,
右辺を $0$ としたときの一般解を足せばよい.答えは
$y = C_1 e^x + C_2 e^{2x} + 2x^2 + 6x + 7 - x e^x$.

\bigskip
[2] 2次方程式の根が $t=1\pm i$ になるように選ぶことにより,
斉次方程式 $y''-2y'+2y=0$ を得る.あとは,$e^{2x}$ が特殊解に
なるように非斉次方程式の右辺を決めればよい.答えは
$y''-2y'+2y=2e^{2x}$ である.(両辺に0でない定数をかけてもよい.)

\bigskip
[3] これは完全形の微分方程式で,$x^2+y^2=c$ となる.
一般解は $y=\pm\sqrt{c-x^2}$ ($c$ は正の定数)で,$x$ の動く範囲は
$-\sqrt c < x < \sqrt c$ である.($x=\pm\sqrt c$ では微分可能で
ない.) また,この解が通らない点は,
$\{(a,0)\mid a\text{は任意の実数}\}$であるから,これが解を持たない
初期値の集合である.

あるいは,$y\neq0$ の範囲では,両辺を $y$ で割れば,普通の変数分離形
になり,解の存在と一意性が使える形になる.ほかにあるかもしれない解の
可能性は,グラフが $y=0$ という直線上に乗っている場合しか残されていない
が,そのような解は
ないことはすぐにわかるので,こちらからも上と同じ結論が導かれる.

\bigskip
[4] 3次方程式 $t^3+at^2+bt+c=0$ は少なくとも一つの実根 $\alpha$
を持つ.$y=e^{\alpha x}$ が有界な解であるためには, $\alpha=0$が
必要十分であるので,まず $c=0$ を得る.
次に,$t^3+at^2+bt+c=0$ が重根 $0$ を持ってしまうと
有界でない関数 $y=x$ を解に持ってしまうので,0 は単根.このとき
2次方程式 $t^2+at+b=0$を見ると,微分方程式のすべての解が有界になるための
必要十分条件は,この2次方程式が0でない純虚数の2根を
持つことである.あわせてすなわち,答えは,$a=c=0$, $b > 0$.

\bigskip
[5]
(1) $f(x+1)$ を次々微分していったものは,
$f'(x+1), f''(x+1), f'''(x+1)$ なので,$y=f(x)$が
$y'''+ay''+by'+cy=0$ を満たせば,$y=f(x+1)$ も満たす.
また写像$A$が,和と定数倍を保つこともすぐにわかる.

$f(x)$ のありうる形は,指数関数,三角関数などに限られているので
すべての可能性を列挙して,それぞれについて $A$ を記述してもできるが
めんどうである.

(2) 条件を言い換えると,$f(x)=f(x+1)$となる解がある,ということである.
さらに言い換えれば,周期1の周期関数が解になる,ということでもある.
ここで,周期1というのは,定数である場合や,周期が $1/k$ ($k$は正の整数)
である場合も含んでいる.よって,条件は「定数関数を解に持つか,
$\sin 2k\pi x$ を解に持つ」ということである.(後者の場合,自動的に
$\cos 2k\pi x$ も解になる.) これらの場合をあわせて答えは,
$c=0$ または 「ある自然数 $k$ に対して
$c=4k^2\pi^2 a$ かつ $b=4k^2\pi^2$」である.

\bye