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\centerline{2002年度全学ゼミナール演習問題}
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\rightline{2002年5月1日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室 (電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}

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これらは自分で理解を深めるための問題です.別にレポートにするとか,
前で解くとかいったものではありません.

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[1] 次の事を示せ.これらはいずれも授業中に「簡単にできる」と
言ったことである.

(1) 有限超実数 $\alpha$ に対し,
$$A=\{a\mid a\text{\ は実数で\ } a < \alpha\}$$
とおく.$a_0=\sup A$とすると,$\alpha$ は $a_0$に無限に近い.

(2) $\alpha,\beta$ が無限小超実数ならば $\alpha+\beta$ も
無限小超実数である.

(3) 超実数 $\alpha$ に対し,$\alpha$ が無限小であるための
必要十分条件は $|\alpha|$ が無限小であることである.

(4) $I$ を実数の区間,$f(x)$ を $I$ 上で定義された実数値関数と
する.$f(x)$ が $x=a\in I$ で連続であるための必要十分条件は,
任意の超実数 $\alpha \in {}^* I$ について
$\alpha$ が $a$ に無限に近ければ $f(\alpha)$ が $f(a)$ に
無限に近いことである.

(5) $a,b$ を $a < b$ であるような実数とし,
$I=[a,b]$ とする.$\alpha\in{}^*I$ を取って $\alpha$ の standard
part を $c$ とする.このとき,$c\in I$ である.

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[2] $(a_n)$ を実数列とする.$\dsize\lim_{n\to\infty} a_n =\infty$で
あるための必要十分条件は,すべての無限大超自然数 $\omega$ に
たいして $a_\omega$ が正の無限大超実数になることであること
示せ.

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[3] $\alpha$ を 0 でない超実数とする.
$|\alpha|$ が無限大であることの必要十分条件は
$1/\alpha$ が無限小である.この事を示せ.

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[4] $(a_n)$, $(b_n)$は実数列で,それぞれ実数$a,b$に収束するとする.
このとき,超準解析を使って以下のことを示せ.

(1) 実数列$(a_n b_n)$は$ab$に収束する.

(2) $a\neq0$とすると,十分大きい$n$について
実数列$(b_n/a_n)$を考えることができ,その収束先は$b/a$である.

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[5] 超自然数 $\alpha,\beta$ に対し最大公約数が存在することを
示せ.(超自然数に対し,約数の概念が定義され,
二つの超自然数に対しては,その共通の約数であるような超自然数たちの
中で最大のものが存在することを示せ,という意味である.)

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[6] $(a_n)$を実数の有界列とする.実数 $a$ について下の2条件が同値で
あることを示せ.

(1) ある無限大超自然数 $\omega$ に対し,$a_\omega$ が $a$ に
無限に近い.

(2) $(a_n)$ の部分列で $a$ に収束するものがある.

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[7] $\sin x$ の $x=0$ における Taylor 展開を $n$ 次で切った多項式
を $f_n(x)$ とおく.($n$ は自然数である.) $\alpha$ を
有限超実数,$\omega$ を無限大超自然数としたとき,
$f_\omega(\alpha)$ が無限小であったとする.このとき,$\alpha$ の
standard part について何が言えるか.

\bye