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\def\R{{\bold R}}
\def\ep{{\varepsilon}}

\centerline{1996年度解析学IV期末テスト}
\rightline{1996年9月10日}
\rightline{河東泰之}

\bigskip
$$\boxed{\hbox{問題用紙は2枚あります}}$$
\bigskip

答案用紙は,[1]と,[2]以降を別の紙に
書いてください.最初の15分間はノートなど
$\boxed{\hbox{何も見ないで}}$やってください.
15分たったところで,
[1]の答案用紙だけを集めます.その後は
自筆ノート持ち込み可で行います.
(本,プリント,人のノートのコピーなどは不可です.)
そして,時間の最後に
[2]以降のほうの答案用紙を集めます.
時間は合計3時間です.
問題はたくさんありますが,1問20〜30点(あるいは
それ以上)でつける予定なので,適当に選択して解いてください.

\bigskip [1]
次の4つの定理のステートメントを書け.

(1) Beppo Leviの定理.(単調収束定理ともいう.)

(2) Fatouのlemma.

(3) Lebesgueの収束定理.

(4) Fubiniの定理.

\bigskip [2]
$(X, \Cal B, \mu)$を測度空間とし,
$f(x)$を$X$上の実数値可測可積分関数とする.
$E\in\Cal B$に,$\dsize\int_E f(x)\;d\mu$を対応させる
写像$\Phi$は,$\Cal B$上の加法的集合関数である
ことを示せ.

(これは授業で「明らか」と言った基礎的な事実である.
わざわざ証明を聞いているのだから,どのような
定理を用いてどのような条件を確認しているのか,詳しく説明すること.
安易に「明らかに」などと書いたものは大幅に減点する.)

\bigskip [3]
$(X, \Cal B, \mu)$を測度空間とし,$\{f_n(x)\}_{n=1,2,\dots}$を
$X$上の可測可積分関数の列で,以下の3条件を満たすものとする.

(1) すべての$n$について,$f_n(x)\ge 0\;\;\hbox{a.e.}$

(2) 定数$C$で,すべての$n$について,
$\dsize\int_X f_n(x)\;d\mu \le C$となるものが取れる.

(3) $X$上ほとんどいたるところ,$\{f_n(x)\}_n$は,$f(x)$に
収束する.

この時,$f(x)$も,$X$上可積分で$\dsize\int_X f(x)\;d\mu\le C$と
なることを示せ.

\bigskip [4]
$\R$の部分集合$A$に対し,$A$のLebesgue測度が0であることと,
次の条件は同値であることを示せ.

「可算個の区間$I_n=(a_n, b_n)$が次の3条件を満たすように
取れる.

(1) $A\subset \dsize\bigcup_{n=1}^\infty I_n$.

(2) $\dsize\sum_{n=1}^\infty \mu(I_n)<\infty$.

(3) 任意の$x\in A$は,$\{I_n\}_n$のうち無限個に属する.」

ただし,ここで$\mu(I_n)$は区間$I_n$のLebesgue測度,すなわち
$b_n-a_n$を表す.

\bigskip [5]
(1) $f(x)\in L^2(\R)$と$\ep > 0$が任意に与えられたとする.
この時,$\R$上の連続関数$g(x)$で,ある有界区間の外では
0となり,$\|f-g\|_2 < \ep$となるものが存在することを示せ.

(2) $f(x), g(x)\in L^2(\R)$としたとき,
$f*g$が定義できて,$\R$上の連続関数を定めることを示せ.

\bigskip [6] 各$n=1,2,3,\dots$について,
$[0,1]$上の正値連続関数$g_n(x)$が次の
2条件を満たしているとする.

(a) $x\notin [\dfrac{1}{n+1},\dfrac{1}{n}]$ならば,$g_n(x)=0$.

(b) $\dsize\int_0^1 g_n(x)\;dx=1$.

この時,$[0,1]\times[0,1]$上の関数$f(x,y)$を,
$$f(x,y)=\dsize\sum_{n=1}^\infty(g_n(x)-g_{n+1}(x))g_n(y)$$
と定める.この時,次の問いに答えよ.

(1) $\dsize\int_0^1 \left(\int_0 ^1 f(x,y)\;dx\right)dy$と,
$\dsize\int_0^1 \left(\int_0 ^1 f(x,y)\;dy\right)dx$を求めよ.

(2) この例ではFubiniの定理の仮定の何が成り立っていないのか,説明せよ.

\bigskip [7]
$f(x)$を$\R$上のLebesgue測度に関する正値可測可積分関数とする.
$\R$上の半開区間$I=(a,b]$に対し,$\nu(I)=\dsize\int_a^b f(x)\;dx$
と定め,さらに有限個の半開区間$I_k$, $(k=1,2,\dots,n)$のdisjoint
union $I$について,$\nu(I)=\dsize\sum_{k=1}^n \nu(I_k)$と定める.
(ただし,$I=(a,b]$で,$b=\infty$の時は,$I=(a,\infty)$と見なす.)
この$\nu$は,半開区間有限個のdisjoint union全体の上の
有限加法的測度になる.授業でやったようにこれを使って外測度
$\Gamma$を定義し,そこから$\Gamma$-可測集合や,
$\Gamma$-可測集合上の測度を定める.
この時,次のことを示せ.

(1) $\R$上のBorel集合は$\Gamma$-可測である.

(2) $\R$上のBorel集合$A$について,
$\Gamma(A)=\dsize\int_A f(x)\;dx$である.

ただし,$\R$上のBorel集合とは,$\R$上の開集合全体を含む
最小の完全加法族に属する集合のことである.

\bye