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\define\ep{{\varepsilon}}
\def\limsup{\mathop{\overline{\hbox{lim}}}}
\def\liminf{\mathop{\underline{\hbox{lim}}}}

\centerline{解析学IV 小テストNo\. 14の簡単な解説}
\medskip
\rightline{1996年7月23日}
\rightline{河東泰之}

\bigskip
ほぼ壊滅的なできで,ほとんどの人は0点でした.
最高点は20点(3人),平均点は3.8点です.

それから,青い数字で書いてあるのは演習の(悪い2回分を除いた)
平均点とそれに基づく仮の成績です.期末試験の成績がこの仮の
成績より特に良ければプラスアルファがつきますが,そうでなければ
これが演習の最終成績になります.
この平均点の分布は次のとおりです.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit && \omit && \omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--9 (点) && 10--19 && 20--29 && 30--39 && 40--49 && 50--59 &&
60--69 && 70--79 && 80--100 & \cr
\vsp\t
& 17(人) &&  11 &&  2 && 5 && 1 && 4 && 3 && 5 && 1 & \cr
\vsp\t
}}$$

成績との対応は,60点以上がA,
40〜59点がB,
20〜39点がC,
19点以下がDです.(何回か難しい問題も出したことがあり,
本来今年度より必修からはずすはずだった演習なので,20点でも
通しますが,期末試験についてはそんなことはしません.)

問題の正解を以下に示します.みんなできていないので詳しく書きます.
まず基本的な考え方は,次の通りです.

・もし$\{f_n(x)\}_n$が有界であれば,Lebesgueの収束定理が使える.

・$\{f_n(x)\}_n$は一般に有界ではない.しかし,$\|f_n\|_2\le1$ということは
2乗して積分してもなお一様に有界なのだから,2乗する前の
関数値が大きいところは「少し」
しかない.だから,その「少し」の部分で関数値を有界になるように
変更してやって,Lebesgueの収束定理に持ち込み,この変更が積分値に
ほとんど影響しない事を示せばよい.そのためにCauchy-Schwarzの不等式を
用いる.

実際の証明は次のとおりです.

\bigskip
通常のように,$f_n, f$を正の部分,負の部分に分けて,
$f_n=f_{n,+}-f_{n,-}$, $f=f_+-f_-$とする.$\|f_{n,\pm}\|_2\le1$で,
$f_{n,\pm}\to f_\pm,\;\;\hbox{a.e.}$だから,最初から$f_n\ge 0$,
$f\ge0$として一般性を失わない.

一般に$g\in L^2(0,1)$, $g \ge0$と$K\ge 0$に対し,
$$g^{(K)}(x)=\cases K,&\hbox{$g(x)\ge K$の時,}\\
g(x),&\hbox{$0\le g(x) < K$の時,}\endcases$$
とおく.この時,すべての$K\ge 0$について,
$f_n^{(K)}(x)\to f^{(K)}(x),\;\;\hbox{a.e.}$である.よって,
Lebesgueの収束定理(有界収束定理)
より,$\dsize\int_X f_n^{(K)}(x)\;dx\to
\int_X f^{(K)}(x)\;dx$である.また,
$\mu(X)=1$を使って,Cauchy-Schwarzの不等式より,
$$0\le \dsize\int_X f_n^{(K)}(x)\;dx\le \|f_n^{(K)}\|_2\le1$$だから,
$0\le \dsize\int_X f^{(K)}(x)\;dx\le 1$である.ここで,$K\to 0$とすれば,
単調増大に$f^{(K)}(x)\to f(x)$だから,単調収束定理より,
$\dsize\int_X f(x)\;dx\le 1$となり,$f(x)$は可積分である.

一般に$g\in L^2(0,1)$, $g \ge0$, $\|g\|_2\le1$とし,また
$K > 0$とする.この時,$E=E(g\ge K)$とおけば,
$K^2 \mu(E)\le \|g\|_2^2\le 1$だから,Cauchy-Schwarzの不等式を
使って,
$$0\le \int_X(g(x)-g^{(K)}(x))\;dx\le
\int_X \chi_E(x) g(x)\;dx\le\|\chi_E\|_2 \|g\|_2=
\sqrt{\mu(E)}\le\frac{1}{K}$$
となる.

これより,
$$\int_X f_n^{(K)}(x)\;dx\le
\int_X f_n(x)\;dx \le
\int_X f_n^{(K)}(x)\;dx+\frac{1}{K}$$
を得るので,$\dsize\limsup_{n\to\infty}\int_X f_n(x)\;dx
\le \int_X f^{(K)}(x)\;dx+\frac{1}{K}$となる.ここで,$K\to\infty$
として単調収束定理を用いて,
$\dsize\limsup_{n\to\infty}\int_X f_n(x)\;dx \le
\int_X f(x)\;dx$を得る.同様に,
$\dsize\int_X f(x)\;dx\le
\liminf_{n\to\infty}\int_X f_n(x)\;dx$を得るので,結局
$\dsize\int_X f(x)\;dx=
\lim_{n\to\infty}\int_X f_n(x)\;dx$を得る.

\bigskip\bigskip
まあ,これは確かに難しいんですが,いろいろと重要な基本事項を組み合わせて
使っているのでよく復習しておいてください.

\bye