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\begin{document}
\centerline{2016年解析学IV追試解説}
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\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室 (電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
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配点は1番から順に,15, 20, 15, 15, 20, 15点で,45点以上の
場合に解析学IVも解析学特別演習Iも合格(可)になります.
受験者14人中5人が合格となりました.最高点は70点でした.
\boxed{不可の人には12月に追々試を行いますので掲示に注意してください.}

解答解説は以下の通りです.

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[1]
例はたくさんありますが,例えば次のものが簡単でしょう.

$g(x)=\max(1-|x|,0)$ とおき,$f_k(x)=g(k(x-k))$ とおけば大丈夫です.

連続性を満たしていない例を挙げた人がたくさんいました.

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[2] $\infty > f_k(x)\ge 0$ a.e. と問題にはっきり書くべきでした.すみません.
しかしこれが解答の妨げになっている様子はありませんでしたのでそのまま採点
しました.

$N\to\infty$ のとき $\mu(\{x\in[0,1]\mid f_k(x)>N\})\to 0$ なので,
$N_k >0$ を十分大きくとれば $E_k=\{x\in[0,1]\mid f_k(x) \le N_k\}$ と
おいたとき $\mu(E_k)>1-1/2^k$ となります.このとき $c_k=1/(2^k N_k)$
とおけば(2)も成り立ちます.

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[3] $z=x+iy$, $x,y\in\mathbb R$, $y\neq 0$ とおきます.
$\displaystyle|f(t)\frac{1}{t-z}|\le \frac{|f(t)|}{|y|}$ で 
$y$ が固定されていれば$f(t)$ の可積分性より
$\displaystyle f(t)\frac{1}{t-z}$ は可積分となります.

$y$ を固定して $x$ を動かします.
$\displaystyle\frac{\partial (f(t)\frac{1}{t-z})}{\partial x}=
\frac{f(t)}{(t-x-iy)^2}$
であり,この絶対値は $\displaystyle\frac{|f(t)|}{|y^2|}$ でおさえられます.
$\displaystyle\frac{1}{|y|^2}$ は定数なので,$f(t)$ の可積分性より
積分記号下での微分が可能であり,
$$\frac{\partial F(z)}{\partial x}=\int_0^1 \frac{f(t)}{(t-x-iy)^2}\;dt$$
となります.

今度は$x$ を固定して $y$ を 閉包が$0$ を含まない
開区間 $(a,b)$ の範囲で動かします.
$\displaystyle\frac{\partial (f(t)\frac{1}{t-z})}{\partial y}=
\frac{if(t)}{(t-x-iy)^2}$
であり,この絶対値は $\displaystyle\frac{|f(t)|}{|y^2|}$ でおさえられます.
$y$ の動く範囲が$(a,b)$ に限定されているので
$\displaystyle\frac{1}{|y|^2}$ は定数で抑えられ,
$f(t)$ の可積分性より積分記号下での微分が可能であり,
$$\frac{\partial F(z)}{\partial y}=i\int_0^1  \frac{f(t)}{(t-x-iy)^2}\;dt$$
となります.これによって,$F(z)$ は Cauchy-Riemann 方程式を
満たすことがわかります.

次に,$y$ を 閉包が $0$ を含まない開区間 $(a,b)$ の範囲に限定して,
$x,y$ を動かすと,
$\displaystyle\frac{1}{|(t-x-iy)^2|}$ は定数で抑えられるので,
$\displaystyle\frac{\partial F(z)}{\partial x}$,
$\displaystyle\frac{\partial F(z)}{\partial y}$ の両方について,
極限を取るときに Lebesgue の収束定理が使え,これらの関数はともに
連続となります.これによって,$F(z)$ は $C^1$級となるので
上と合わせて,$F(z)$ の正則性が示されました.

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[4] $kx$ を新たに $x$ とおく置換積分で,問題の積分は
$\displaystyle\int_{-\infty}^\infty f(x/k) e^{-x^2}\;dx$ となります.
$|f(x/k)|$ は有界で,$e^{-x^2}$ が $k$ によらない可積分関数のため,
$f(x/k)\to f(0)$ と Lebesgue の収束定理により,求める極限は
$f(0)\displaystyle\int_{-\infty}^\infty  e^{-x^2}\;dx=\sqrt{\pi}f(0)$
となります.

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[5] $f*f$, $f*f*f$ を順に定義通り計算すれば答えは 
$\displaystyle\frac{\pi}{\sqrt3}e^{-x^2/3}$ となります.

\bigskip
[6] 例はたくさんありますが,例えば次のものが簡単でしょう.

$g(x)=\max(1-|x|,0)$ とおき,$f(x)=\sum_{k=1}^\infty k g(e^k(x-k))$
とおけば大丈夫です.

連続性を満たしていない例を挙げた人がたくさんいました.

\end{document}