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\centerline{2000年度3年生解析学IV期末テスト解説}
\rightline{河東泰之}
\rightline{2000年9月15日}
\rightline{数理科学研究科棟323号室 (電話 5465-7078)}
\rightline{{\tt e-mail: yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}

\bigskip
答案に赤字で書いてあるのが,期末試験の点数と解析学IVの最終成績,
青字で書いてあるのが演習の小テストの「悪い方から2回分を除いた
平均点」と演習の最終成績です.A〜Dの成績が丸で囲ってある場合は,
下記の規則によってプラスアルファされた成績であることを示します.

期末試験の配点は,[1]から順に30, 30, 20, 25, 25の130点満点です.
最高点は125点(1人)で得点分布は次のとおりでした.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit &&\omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--19 (点) && 20--39 && 40--49 && 50--59  && 60--69 && 70--79 && 80--89 &&
90--99 && 100-- & \cr
\vsp\t
& 10(人) &&  14 && 3 && 10 && 5 && 3 && 5 && 1 && 4 & \cr
\vsp\t
}}$$

平均点は46.7点でした.成績との対応は,
50点未満がD,50点〜59点がC,60〜79点がB,
80点以上がAです.ただし,人によっては演習の
小テストの成績が特に良かったのでプラスアルファがついています.
この結果,A, B, C, Dの人数はそれぞれ,12, 7, 11, 25人となりました.
また演習の成績は計算間違いを修正し,15回目も考慮に入れた成績が
書いてあります.成績との対応は前に言ったとおり,
19点未満がD,20点〜39点がC,40〜59点がB,60点以上がAです.
また演習で一度も小テストを受けていない人には「未受験」の
「未」が書いてあります.
こちらも人によっては期末テストの成績が特に良かったのでプラス
アルファがついていて,また14回終了時点での「最終成績がこれより
悪くなることはない」という規則が適用されている人もいます.
これらの結果,A, B, C, Dの人数はそれぞれ,10, 10, 19, 23人となりました.

演習の青い平均点の分布は次のとおりで,最高点は79点でした.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit && \omit && \omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--9 (点) && 10--19 && 20--29 && 30--39 && 40--49 && 50--59 &&
60--69 && 70--79 & \cr
\vsp\t
& 16(人) &&  10 &&  11 && 8 && 7 && 1 && 5 && 4  & \cr
\vsp\t
}}$$

以下各問題について簡単に解説します.

\bigskip [1]
たとえば,$(0,0)$, $(1/2^n,n)$, $(1/2^{n-1},0)$, $(1,0)$を
折れ線でつないだようなグラフを持つ関数を$f_n(x)$とすればできます.

\bigskip [2]
(1) 積分記号下での微分によって,$F'(t)=\dfrac{-1}{t^2+1}$となりますが,
積分記号下での微分ができる条件をチェックしないといけません.それには
積分の中身を$t$で偏微分したものが「$t$によらない」可積分関数で
抑えられていることを示す必要があります.そのためには$t\in(0,\infty)$
としてはできなくて,$t$の動く範囲を$(t_0,\infty)$ (ただし$t_0$は
任意に固定した正の数)などのように限定しないといけません.

(2) (1)よりまず,$F(t)=c-\arctan t$であり,$t\to\infty$として
$c=\pi/2$を得ます.$t\to\infty$のときの
積分値の極限の計算にはたとえばLebesgueの収束定理が使えます.
$t=0$のときの考察から$c$を決めている人もたくさんいましたが,
$t=0$のときの$F(t)$の式は可積分でないのでこれには問題があります.

\bigskip [3]
$\sqrt{f(x)}$, $\sqrt{g(x)}$に対してCauchy-Schwarzの不等式を
使うんですが,これらが$L^2(X)$に入るとは仮定してないので,
そうならない場合を別に考える必要があります.このとき左辺は
無限大なので確かに大丈夫です.(左辺が$\infty\times0=0$の形に
ならないことに注意する必要があります.)

\bigskip [4]
これは小テストNo\. 5 [3]の解答に似た方針がありましたが,
今$\R$の測度が無限大なのでさらに注意が必要です.

各$n$について,
$$\mu(\{x\in[-n,n]; |f_n(x)| > c_n \})<\frac{1}{2^n}$$
となるような正の実数$c_n$を取ります.ここで$[-n,n]$の測度が
有限であることを使っています.あとは,
$a_n=1/(c_n2^n)$とすれば小テストNo\. 5 [3]の解答と同様にしてできます.

$f_n(x)$の上限を(どこかの開区間で)取るというような方針は,無限大に
なることを防げないのでダメです.また問題では,$f_n(x)$は
「実数値」と言っているの
で$\pm\infty$は値にとりません.

\bigskip [5]
小テストNo\. 14 [3]に両方向の包含関係の問題が出ているのでその
(1), (2)を合わせた,「$\inf \{\mu (E)\mid E\subset X, \mu(E) > 0\} > 0$
かつ$\mu(X) < \infty$」というので論理的に正しい答えなんですが,これを
さらに整理してもっと簡単な形で答えて欲しいと思っていました.
しかし,上の形以上に簡単にしている人はいませんでした.この形を
さらに整理すると次の答えになります.

まず,$E\in \Cal B$, $\mu(E) >0$について,$F\subset E$, $F\in\Cal B$ならば常に
$\mu(F)=0$または$\mu(E\setminus F)=0$となるとき$E$はatomである
と言います.すると上の条件は,「$X$が有限個のatomのdisjoint unionである
こと」と言い換えられます.これがいちばん簡単な答えです.

\bye