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\define\e{\varepsilon}

\centerline{解析学IV 小テストNo\. 14 略解・解説}
\medskip
\rightline{2000年7月18日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{{\tt e-mail: yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}

\bigskip

今回の配点は[1]から順に40, 30, 30点で,
平均は34.5点,最高は85点(1人)でした.
以下,簡単な解説をつけます.

\bigskip [1]
これはH\"olderの不等式で等号が成り立つ場合が起こることを確認する
だけです.答えは$\|f\|_p$です.

\bigskip [2]
$\e > 0$が与えられたとき,$n > 0$を十分大きく取れば
$f_n(x)=f(x)\chi_{\{x\mid -n \le x \le n\}}$,
$g_n(x)=g(x)\chi_{\{x\mid -n \le x \le n\}}$とおいて
$\|f-f_n\|_2 < \e$, $\|g-g_n\|_2 < \e$が成り立ちます.
$f, g$の代わりに$f_n, g_n$を使ったとき問題の極限は
明らかに0なので,求める極限も0であることがわかります.

$x$を固定して$t\to\infty$としたとき,$g(x+t)\to 0$と
いうのは誤りです.$L^2$というだけではそんなことは一般に
成立しません.

\bigskip [3]
(1) $\inf \{\mu (E)\mid E\subset X, \mu(E) > 0\} > 0$であることが
答えです.

まずこの条件が成り立っているとしましょう.
$E\in \Cal B$, $\mu(E) >0$について,$F\subset E$, $F\in\Cal B$ならば常に
$\mu(F)=0$または$\mu(E\setminus F)=0$となるとき$E$はatomである
と言います.上の条件より,任意に$E\in \Cal B$, $\mu(E) >0$
を取ったとき$E$内にatomが存在することが示せます.
このこととZornのlemmaと$\sigma$-finiteの仮定より,
$X=\sum_n X_n$ (disjoint union)で各$X_n$がatomになるような
表示が存在します.($n$は高々可算個.)しかも仮定より,
$c=\inf \mu(X_n) > 0$です.$X$上の可測関数は
$\sum_n c_n \chi_{X_n}$の形と思っていいので,$L^1$ならば$L^2$
であることがわかります.

次にこの条件が成り立っていないとしましょう.
$E_n\subset X$で$0 < \mu(E_n) < n^{-3}$となるものが取れます.
少し議論すれば,各$E_n$はdisjointと仮定できます.
このとき$f(x)=\dsize\sum_n \dfrac{\chi_{E_n}(x)}{\mu(E_n)^{1/2}}$とおけば
$L^1$だが$L^2$でない関数の例になっています.

(2) $\mu(X) < \infty$であることが答えです.
これが十分なことはCauchy-Schwarzの不等式からすぐに出ます.
逆に$\mu(X)=\infty$であったとしましょう.$\sigma$-finiteの仮定から
$X=\bigcup_n X_n$ (disjoint union)で$\mu(X_n) < \infty$であるように
取れます.いくつかの$X_n$をまとめて新たに番号を振りなおすことに
より,$\mu(X_n) > n^2$と仮定できます.
このとき$f(x)=\dsize\sum_n \dfrac{\chi_{X_n}(x)}{\mu(X_n)}$とおけば
$L^2$だが$L^1$でない関数の例になっています.

(1)は全滅でした.

\bigskip
(裏に続く)
\vfill\eject

それから演習の成績は「悪い方から2回分を除いた平均点」
をもとにつけるといいましたが,私は明日からイギリス出張なので
今日やる分を除いた14回分について,
「悪い方から2回分を除いた平均点」を計算したものを
青い数字で書いておきました.これに基づく
仮の成績も青字で横に書いてあります.最終成績がこれより
悪くなることはありません.最終成績は,今日の15回目も加えて
計算しなおして点がよくなる人にはその分をプラスし,さらに
期末試験の成績がその仮の
成績より特に良ければプラスアルファがつきます.それ以外の
場合は今の青い英字が演習の最終成績になります.
この青い平均点の分布は次のとおりです.最高点は88点でした.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit && \omit && \omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--9 (点) && 10--19 && 20--29 && 30--39 && 40--49 && 50--59 &&
60--69 && 70--79 && 80--89  & \cr
\vsp\t
& 17(人) &&  9 &&  9 && 8 && 6 && 4 && 2 && 5 && 2  & \cr
\vsp\t
}}$$

成績との対応は,60点以上がA(9人),
40〜59点がB(10人),
20〜39点がC(17人),
19点以下がD(26人)です.(かなり難し目の問題も
出しているので,低い点まで通してあります.)

それでは9月の試験でがんばってください.
\bye