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\centerline{解析学IV 小テストNo\. 6 略解・解説}
\medskip
\rightline{2000年5月30日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{{\tt e-mail: yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}}
\rightline{{\tt http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}

\bigskip

今回の配点は[1]から順に30, 30, 20, 20点で,
平均は21.1点,最高は65点(1人)でした.
採点はTeaching Assistantの勝良君です.
簡単な解説をつけます.

\bigskip [1]
$x\ge 1$では$4/x^2$, $x \le 1$では$x^{-1/2}$というのが
可積分関数で,これが問題の関数列を上から抑えているので
Lebesgue の収束定理が使えて,答えは
$\dsize\int_0^\infty e^{-x}\;dx=1$です.

これは比較的簡単な問題のつもりだったんですが,ちゃんとできていたのは1人
だけでした.$x\ge 1$での上からの評価を誤って$e^{-x}$などで抑えよう
としている人がたくさんいました.
$x\ge 1$で関数列が単調増大というのも何人かいましたが誤りです.

\bigskip [2]
(1) まず,考えている完全加法族は$\N$上のすべての部分集合の
集合で,測度は1点の測度が1であるように入れています.このとき
複素数値可測関数とは単なる複素数列のことで,これが可積分とは
和が絶対収束するということです.この対応がわかっていない人が
とてもたくさんいました.このとき,Lebesgueの収束定理に
対応するステートメントは次のようになります.

収束する無限級数$\dsize\sum_{n=1}^\infty b_n$で$b_n\ge0$となるものと,
$k=1,2,3,\dots$に対し数列$\{a_n^k\}_{n=1,2,3,\dots}$
があって,各$n$ごとにすべての$k$について
$|a_n^k|\le b_n$が成り立っているとする.また各
$n$ごとに,$k\to\infty$のとき数列$\{a_n^k\}_k$は$a_n$に
収束するとする.このとき
$$\lim_{k\to\infty} \sum_{n=1}^\infty a_n^k =
\sum_{n=1}^\infty a_n$$
が成り立つ.

(2) まず,$\dsize\sum_{n=1}^\infty a_n^k$, $\dsize\sum_{n=1}^\infty a_n$
はいずれも絶対収束することに注意します.
$\e > 0$が任意に与えられたとき,$\dsize\sum_{n=N+1}^\infty b_n < \e$
となる$N$を選びます.次に$k > K$ならば$n=1,2,\dots,N$について,
$|a_n^k-a_n| < \e/N$となるように$K$を選びます.すると,$k > K$の
とき,
$$\align
&|\sum_{n=1}^\infty a_n^k - \sum_{n=1}^\infty a_n|\\
\le & \sum_{n=1}^N |a_n^k-a_n| +
\sum_{n=N+1}^\infty |a_n^k|+ \sum_{n=N+1}^\infty |a_n|\\
< & \e+\e+\e\endalign$$
となるので,証明が終わります.

\bigskip [3]
自然数$n$に対し,$E_n=\{x \in X\mid |f(x)| \le n\}$,
$f_n(x)=f(x)\chi_{E_n}(x)$とおくと各$f_n(x)$は有界関数で,
単調収束定理より
$$\int_X |f(x)-f_n(x)|^2 \;d\mu
=\int_X |f(x)|^2\;d\mu-\int_X |f_n(x)|^2\;d\mu \to 0$$
となります.だから十分大きい$n$について$g(x)=f_n(x)$と
おけばだいじょうぶです.

$f(x)\ge0$の場合に帰着した後,
単関数で下から近似してLebesgueの収束定理を使っても同様にできます.

実際は1番目の不等式は2番目の不等式と問題の仮定から導かれますが,
まだ授業でやってないので別に書いてあります.

\bigskip [4]
まず,$a_1 > a_ 2 > a_3 > \cdots \to 0$となる数列で,
$\dsize\int_{\R} |f(x-a_n)-f(x)|\;dx < 1/2^n$となるものを
選びます.(授業でやったことよりこのような数列は選べます.)
これに対して
$g_n(x)=\max(f(x), f(x-a_1),\dots, f(x-a_n))$とおくと,
これは単調増大関数列です.
$$x_+=\cases
x,& \text{$x \ge 0$のとき,}\\
0,&\text{それ以外のとき.}\endcases$$と書くことにすると,
$$0\le g_1(x)-f(x)=(f(x-a_1)-f(x))_+ \le |f(x-a_1)-f(x)|$$
だから,
$$\int_\R (g_1(x)-f(x))\;dx \le 
\int_{\R} |f(x-a_1)-f(x)|\;dx < 1/2$$
となります.さらに,$g_2(x)=\max(g_1(x),f(x-a_2))$より
$$g_2(x)-g_1(x)=(f(x-a_2)-g_1(x))_+ \le (f(x-a_2)-f(x))_+
\le |f(x-a_2)-f(x)|$$
だから,
$$\int_\R (g_2(x)-g_1(x))\;dx \le 
\int_{\R} |f(x-a_2)-f(x)|\;dx < 1/2^2$$
となります.以下同様で,$g(x)=\sup_n g_n(x)$とおくと
すべての$n$について$g(x)\ge f(x-a_n)$であって,また
$g_n(x)$は単調増大だから単調収束定理より,
$$\align
&\int_\R g(x)\;dx = \lim_{n\to\infty} \int_\R g_n(x)\;dx\\
=&\lim_{n\to\infty} \int_\R (f(x)+(g_1(x)-f(x))+\cdots+
(g_n(x)-g_{n-1}(x)))\;dx \\
< & \int_\R f(x)\;dx +1\endalign$$
となって$g(x)$は可積分です.

この問題は一人もできてませんでした.

\bye