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\centerline{2000年度全学自由研究ゼミナールの講義内容}
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\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{{\tt e-mail: yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}}
\rightline{{\tt http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
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この講義は,教養課程の1, 2年生を対象にした自由選択のコースです.
毎週木曜日の16:20〜17:50に,数理科学研究棟の056号室で講義を行います.

この3次元空間の中での,ひもの絡まり具合を数学的に調べるのが,
結び目の理論というもので,位相幾何学の一分野として現在さかんに
研究されています.一方,量子力学の数学的構造やLie群の表現論に
関連してvon Neumannは,1930年代に作用素環というものの研究を
始めました.これは無限次元の行列の理論ともいうべきものですが,
普通に考えると,結び目の理論とは何の関係もありません.
(私の専門は,この作用素環の理論です.)
しかし,Jonesは1984年に下記の論文[J]で,作用素環の理論を
使うと,結び目に多項式を対応させるまったく新しい方法が
作り出せることを示しました.この対応は現在ではJones多項式
と呼ばれており,Jonesはこの発見により1990年のフィールズ賞を
受賞しました.現在では,Jones多項式と
そのさまざまな一般化を非常に初等的に扱う方法がいくつも知ら
れていていろいろなところで紹介されています.私もこれまで,
一般,あるいは高校生向けなどに話したり,書いたりしたことがありますが,
やり方によっては中学生でもわかるような方法で説明することができます.
しかしこの講義は大学の講義であり,時間もある程度まとまって取れるので,
ここでは一番もともとの方法に近いように,無限次元行列を中心にした
やり方で初歩から解説します.受講のための数学的予備知識としては,
通常の行列に関する慣れだけで十分なので新1年生でもだいじょうぶなはず
ですが,一方抽象的な論理性についてはかなり高度の理解力があるという前提で
講義を行います.その意味で,数学に特に熱意のある人の受講を期待します.

なお,イタリア,ルーマニア出張のため,6月22, 29日は休講です.

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参考文献

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[J] V. F. R. Jones,
A polynomial invariant for knots via von Neumann
algebras, {\it Bull. Amer. Math. Soc.} {\bf 12} (1985), 103--112.

\bye