\magnification=\magstep1
\documentstyle{amsppt}

\baselineskip 14pt
\NoBlackBoxes
\nopagenumbers
\define\R{\bold R}
\define\Q{\bold Q}
\define\Z{\bold Z}
\define\T{\bold T}
\define\e{\varepsilon}
\def\lan{\langle}
\def\ran{\rangle}
\def\supp{\text{supp}}

\centerline{解析学特別演習II・小テスト(1)の解説}
\rightline{1999年10月12日}
\rightline{河東泰之}
\rightline{{\tt e-mail: yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}}
\rightline{{\tt http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

配点は,40点,40点,20点です.平均は50点でした.

\bigskip
[1] 普通のステートメントは,

\noindent
「測度空間$(X,\mu)$上の可測関数の列$\{f_n(x)\}$
が,$X$上ほとんどいたる所$f(x)$に収束しているとする.
$X$上の可積分関数$g(x)$で,各$n$について
$$|f_n(x)|\le g(x), \quad \text{a.e.\ }$$
となるものが存在すれば
$$\lim_{n\to\infty}\int_X f_n(x)\;dx=
\int_X f(x)\;dx$$
が成り立つ.」

\noindent
という形です.「ほとんどいたる所」を書いてない人が
結構いましたが,まあこれはたいしたことはありません.
$\lim_{n\to\infty}f_n(x)$が(ほとんどいたる所)
存在する,というのはきちんと仮定すべきことですが,
書き忘れている人がけっこういました.
しかし,最大のポイントは
「$f_n(x)$が一律に可積分関数$g(x)$で押さえられる」という仮定
で,「可測関数$g(x)$」などとしているのは重大な誤りです.
この点に関し,ほぼまともに書けている人は
37人中,22人でした.

この定理はLebesgue積分論で最も重要な定理です.数学科に
来てLebesgue積分論を習ったからには,この定理だけは
忘れないで卒業してもらいたいと思います.
またこの授業でも,この定理は繰り返し繰り返し使います.
忘れていた人は,
必ず復習しておいてください.この定理(と,単調収束定理,
Fubiniの定理など)がわかっていなければこの授業はわかりません.

\bigskip [2]
これは,いろいろな書き方がありますが,
素朴な形は

\noindent
「$\Omega$は複素平面の有界領域で,その境界$C$は,
共通点を持たない有限個の区分的に滑らかなJordan閉曲線
からなるとする.この時,$\Omega$で正則で
$\Omega$の閉包で連続な関数$f(z)$に対し,
$\dsize\int_C f(z)\;dz=0$が成り立つ.」

\noindent
といった形で,「現代的」な形としては

\noindent
「$f(z)$は領域$\Omega$で正則な関数とする.
$\Omega$内で0にホモローグなサイクル$\gamma$に対し,
$\dsize\int_\gamma f(z)\;dz=0$が成り立つ.」

\noindent
などもあります.内容の小さな違いはいろいろありますが,
別にどれでもかまいません.

線積分を考えるため,曲線は「長さを持つ」ものに
制限するか,または仮定を強めて「区分的に滑らか」
とする必要がありますが,それは今
特に聞きたかったことではありません.
ポイントは,
「$f(z)$は領域$\Omega$で正則な関数,
$\gamma$を$\Omega$内の(長さを持つ)閉曲線とすると,
$\dsize\int_\gamma f(z)\;dz=0$」というような
書き方ではダメであるということです.閉曲線の
「内側」まで正則であることを(数学的に厳密な形で)
仮定する必要があります.こういうことがきちんと書けない
ようでは困ります.
この点に関し,ほぼまともに書けている人は
37人中,21人でした.

Cauchyの積分公式と間違えている人も結構いましたが,
それは本質的に同じ種類のことで,上と同様の
注意があてはまります.

\bigskip
[3] 
・$f(x)\in C_0(\R)$なら一様収束(あるいはLebesgueの
収束定理)ですぐわかる.

・$C_0(\R)$は$L^1(\R)$でdenseなので,一般の場合も
上の場合に帰着する.

\noindent
というのでできます.できはよくありませんでした.直接
Lebesgueの収束定理に持ちこもうとしていた人がたくさんいましたが
それではできません.

\bye