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\begin{document}
\centerline{2018年解析学特別演習IIIテスト(3)解答解説}
\medskip
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室 (電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

[1]は各問15点,[2], [3]は各20点の配点です.
平均点は57点,最高点は100点(1人)でした.

\medskip
[1] (1) 誤り.$(0,1)$ 区間の有理数に番号を振ったものを
$\{a_n\}_{n=1}^\infty$
とします.
$$E=(0,1)\cap \bigcup_{n=1}^\infty (a_n-\frac{1}{2\cdot3^n},
a_n+\frac{1}{2\cdot3^n})$$
とおくと,
$$\mu (E)\le \sum_{n=1}^\infty\frac{1}{3^n}=\frac{1}{2}$$ となりますが,
もちろん $E$ は開集合であり,すべての有理数を含むので稠密でもあります.
同様にして$E$の測度はいくらでも小さくできます.

多くの人が「正しい」と間違えていました.

(2) 正しい. $E=\{ x\in (0,1)\mid f(x) > 0\}$,
$E_n=\{ x\in (0,1)\mid f(x)\ge 1/n\}$ とおくと,
$$0\le \frac{1}{n}\mu(E_n)\le \int_0^1 f(x)\;dx=0$$ より,
$\mu(E_n)=0$ となります.よって $E=\bigcup_{n=1}^\infty E_n$ より,
$\mu(E)=0$ もわかります.

(3) 誤り.Cantor 集合を考えます.すなわち,$(0,1)$ 区間内で
3進小数展開したときに,$0,2$ だけしか現れない実数たちの集合を
$E$ とします.(3進小数展開が二通りできる数は可算個しかないので,
以下の議論に気にしなくてかまいません.) これらは,$0,2$ を
可算個並べてできる数たちなので,連続濃度だけあります.しかし,
Lebesgue 測度を考えると,$(0,1)$ 区間から,真ん中の長さ $1/3$ 
の区間を抜いて,次に残りの長さ $1/3$ の $2$区間から,それぞれ
その真ん中の長さ $1/3^2$ の区間を抜いて,さらに,
残りの長さ $1/3^2$ の $4$区間から,それぞれ
その真ん中の長さ $1/3^3$ の区間を抜いて・・・と続けていけば
$E$ との違いはたかだか可算集合です.この集合 $E$ は可測で,
その測度は $2^n/3^n$ で抑えられるので,結局 0 となります.

(4) 誤り.$\chi_{(0,\infty)}-\chi_{(-\infty,0)}$ を考えれば
簡単な反例になります.$(\sin x)/x$ でもできますが,極限の
存在がそれほど自明ではなくなります.

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[2] $\mu(A)< \infty$ が必要十分条件です.

これが十分条件であることは Cauchy-Schwarz の不等式からわかります.

必要条件であることは次のようにわかります.
$\mu(A)=\infty$ であったとすると,任意に与えられた $k$ に対し,
十分大きな $n$ をとって $[-n,n]\cap A$ を考えることにより,
可測集合 $B\subset A$ で,$k < \mu(B) < \infty$ となるものが
取れます.これを繰り返し使うことにより,互いに disjoint な
可測集合 $A_n$ ($n=1,2,3,\dots$) で,
$A_n \subset A$, $n^2 < \mu(A_n) < \infty$ と
なるものが取れます.
$$f(x)=\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{\mu(A_n)}\chi_{A_n}$$
とおくと,$\int f(x)\;dx=\sum_{n=1}^\infty 1=\infty$ ですが,
$\int f(x)^2\;dx=\sum_{n=1}^\infty 1/\mu(A_n) < \infty$ となります.

\medskip
[3] 実部と虚部に分けて考えることができるので,最初から
$f(x),g(x)$ は実数値を取ると仮定できます.

$E_k=\{x\in X\mid f(x) - g(x)>1/k \}$ とおくと,
$\displaystyle 0=\int_{E_k}(f-g)\;d\mu\ge\frac{\mu(E_k)}{k}$ となるので
$\mu(E_k)=0$ です.$k$ について和を取ることにより,
$\mu(\{x\in X\mid f(x)-g(x) > 0\})$ がわかります.同様に
$\mu(\{x\in X\mid f(x)-g(x) < 0\})$ もわかるので,$f(x)=g(x)$ a.e. と
なります.

\end{document}