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\def\ran{\rangle}
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\centerline{解析学VI期末テスト解答解説}
\rightline{2011年2月17日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip
[3] (1) で,$i^k$ を問題に書き忘れました.たいへんすみませんでした. 
しかし,これが答えに影響していると判断できる人はいなかったことと,
下記にある通り150点満点ですので,そのまま採点しました.

\bigskip
期末試験の配点は,[1], [5], [6]が各20点,[2], [3], [4]が各
30点の150点満点です.
最高点は136点(1人),平均点は59.2点で得点分布は次のとおりでした.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit &&\omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--19 (点) && 20--39 && 40--49 && 50--59  && 60--69 && 70--79 && 80--89 &&
90--99 && 100-- & \cr
\vsp\t
& 8(人) &&  4 && 1 && 5 && 3 && 1 && 0 && 2 && 8 & \cr
\vsp\t
}}$$

成績との対応は,
30点未満がD,30点〜59点がC,60〜79点がB,
80点以上がAです.ただし,演習の
小テストの成績が良かったため,これに
プラスアルファをつけた人が4人います.
この結果,A, B, C, Dの人数はそれぞれ,10, 8, 4, 10人となりました.
また演習の成績は最初に言ったとおり,8回分のうち1番悪い1回分を
除いた平均点でつけました.この点数の最高点は79点(1人)で,
分布は次のとおりです.
(ただし欠席の回は0点として,一度でも受けた人は表に入っています.)

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit  &&\omit
&&\omit &&\omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--19 (点) && 20--39 && 40--49 && 50--59  && 60--69 && 70--79
&& 80--89 & \cr
\vsp\t
& 15(人) && 9  && 2 && 3 && 6 && 4 && 0 & \cr
\vsp\t
}}$$

この点数の成績との対応は,
19点未満がD,20点〜39点がC,40〜59点がB,60点以上がAとなって
います.ただし,こちらも期末
試験がよくできたことによるプラスアルファをつけた人が2人います.
この結果,A, B, C, Dの人数はそれぞれ,12, 4, 8, 15人となりましたが,
解析学特別演習II
は儀我先生との共同担当なので,この成績に儀我先生の分を総合した
ものが実際の成績表につくことになります.すなわち,両方でC以上の成績
がついた人について,二つの成績の平均(を切り上げたもの)が総合成績です.
この成績が返却答案に青字で書いてあり,
この成績がある人については上記の平均点も青字で書いてあります.
それ以外の人については,「解析学特別演習II」
は「未受験」としました.A, B, Cの人数はそれぞれ,12, 7, 0人です.

以下各問の略解,解説をつけます.簡単に示せるところの説明は簡単に
すませてあります.実際の答案でもそのあたりはあまり厳しくつけて
ありません.Fourier 変換の定義でどこに$2\pi$をつけるかは取り決めの
問題なので,授業と違うものを使っていてもO.K.ですが,当然
首尾一貫している必要があります.

\bigskip
[1] あります.定数関数0でない $C_0^\infty$ 関数で,
台が重ならないものを二つとって
Fourier 逆変換すれば,急減少関数,特に $L^1$ なので,
例が得られます.

\bigskip
[2] $e^{-|x|}$ の Fourier 変換は 
$\dfrac{2}{1+\xi^2}$ なのでこれを超関数として
微分して,$-({\text{sgn}}\;x)e^{-|x|}$ の
Fourier 変換は $\dfrac{2i\xi}{1+\xi^2}$
です.これに $x$ をかけて
$-|x|e^{-|x|}$ の Fourier 変換は $\dfrac{2\xi^2-2}{(1+\xi^2)^2}$ です.
この Fourier 逆変換を考えることにより,問題の答えは
$\pi|\xi|e^{-|\xi|}$ です.

あるいは $\dsize\frac{1-x^2}{(1+x^2)^2}=
\frac{2}{(1+x^2)^2}-\frac{1}{1+x^2}$
と分解してもできるし,直接留数計算してもできます.留数計算の時は
$\xi$ の符号による場合分けが必要ですが,それを忘れて
$\xi e^{-\xi}$ のような答えになった人が何人かいました.
これは Riemann-Lebesgue の定理(あるいは Plancherel の定理)
に反しているので,「白紙より悪い」と授業で言ったタイプの誤りです.

\bigskip
[3] (1) 数学的帰納法によって示します.まず $k=2$ では大丈夫です.
$2k$ について示されたとします.
項別積分によって,$x\in[-\pi,\pi]$のとき
$$f_{2k+1}(x)=i\int^x_0 f_{2k}(t)\;dt+a,$$
($a$ は定数)となりますが,$f_{2k+1}(0)=0$ なので $a=0$ となります.
さらに $$f_{2k+2}(x)=-\int^x_0 \int^t_0 f_{2k}(s)\;ds\;dt+b,$$
($b$ は定数)となりますが,同様の考察から
$$f_{2k+3}(x)=-i\int^x_0 \int^t_0 \int^s_0 f_{2k}(u)\;du\;ds\;dt+bix,$$
となり,$f_{2k+3}(\pi)=0$ が定義からわかるので,
$b/\pi^{2k+2}\in{\bold Q}$ が従います.これによって,$2k+1$ と $2k+2$ で
も大丈夫なので帰納法が完成します.ほかにも少し違うやり方がいろいろ
あります.

(2) $f_{2k}(\pi)=4\dsize\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^{2k}}$ と (1)の結果
より結論が出ます.(1)を認めればすぐにできるので,(1)を証明しないまま,
(1)を使って(2)を導いても部分点はありません.(1)を使わないで(2)だけ
を別の方法で示した場合は部分点をつけます.

\bigskip
[4] 超関数として$T$を微分すると,
$T=\dsize\sum_{n\in \bold Z}2\delta_{2n}-\sum_{n\in \bold Z}2\delta_{2n+1}$
です,Poisson の和公式を超関数の Fourier 変換として解釈すると
$\dsize\sum_{n\in \bold Z}2\delta_{2n}$,
$\dsize\sum_{n\in \bold Z}2\delta_{2n+1}$ の Fourier 変換はそれぞれ
$2\pi\dsize\sum_{n\in \bold Z}\delta_{n\pi}$,
$2\pi\dsize\sum_{n\in \bold Z}(-1)^n\delta_{n\pi}$ となることより,
$T'$ の Fourier 変換は $4\pi\dsize\sum_{n\in \bold Z}\delta_{(2n+1)\pi}$
となります.一方で,これが $i\xi \hat T$ に等しいので,
$$\hat T=-4\pi i\dsize\sum_{n\in \bold Z}\frac{1}{(2n+1)\pi}
\delta_{(2n+1)\pi}+c\delta_0$$ ($c$は定数)となります.
試験関数$e^{-x^2}$ と組み合わせることにより $c=0$ がわかるので,答えは
$\hat T=-4i\dsize\sum_{n\in \bold Z}\frac{1}{2n+1}
\delta_{(2n+1)\pi}$ です.

\bigskip
[5] (1) $(\hat f)^2=\hat f$ ですが,$\hat f$ は連続で,無限遠点で0にならない
といけないので,$\hat f=0$,つまり $f=0$ だけが答えです.

(2) 同様に考えて,$(\hat T)^2=\hat T$ で,$\hat T$ は $C^\infty$,特に
連続なので,$\hat T=0,1$ です.前者の時 $T=0$で後者の時 $T=\delta$ です.

(3) たとえば,$f(x)=\dfrac{\sin x}{\pi x}$ とおけば,
$\hat f(\xi)=\chi_{[-1,1]}(\xi)$ なので条件を満たします.

\bigskip
[6] $f_1*f_2*\cdots*f_n$ の Fourier変換は
$\dsize\prod_{k=1}^n \frac{2k}{k^2+\xi^2}$ です.よって,答えは
$2n-1/2 > s$ です.

\bye