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\centerline{解析学特別演習II・小テスト解説 (2)}
\rightline{2006年10月30日}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

採点はTeaching Assistantの石谷君です.
平均は45点,最高は80点(3人)でした.
簡単な解説をつけます.

\bigskip
[1] (20点) $(X, \mu)$ を測度空間とし,関数 $f(x,t)$, $x\in X, 
t \in (a,b)$ を考える.これが任意の固定した $t$ に
対して $x$ の関数として可積分,任意の固定した $x$ に対して
$t$ の関数として微分可能とする.
また,$X$ 上の可積分関数 $g(x)$ が存在して,
$\left|\dfrac{\partial f(x,t)}{\partial t}\right|\le g(x)$ が
$X\times (a,b)$ 上成り立つとする.このとき
$\dsize\int_X f(x,t)\;d\mu(x)$ は $t$ の関数として $(a,b)$ 上
微分可能で,
$$\frac{d}{dt}\int_X f(x,t)\;d\mu(x)=\int_X
\dfrac{\partial f(x,t)}{\partial t}\;d\mu(x)$$
がなりたつ.

\medskip
[2] (30点) 一つずつ処理していけば数学的帰納法で問題なくできます.
答えは,$\sqrt{\dfrac{\pi^{k-1}}{k}}e^{-x^2/k}$ です.
Fourier 変換してもできます.

\medskip
[3] (10点$\times3$) 

(1) 誤り.たとえば,$f(x)=1/(1+x^2)$, $g(x)$ は授業でやった,
常に $g(x)\ge 0$ となる $C_0^\infty(\R)$ の元で恒等的にはゼロで
ない関数とすれば,$f*g$ はすべての点で値が正となります.

(2) 正しい.$f*g(x)=\int_{\R} f(y)g(x-y)\;dy$ とすれば,授業で
やったように積分記号下の微分が何回でもできるので,結論を得ます.

(3) 正しい.$f\in C_0(\R)$ の場合は $f*g\in C_0(\R)$ であることが
簡単にわかります.$f\in L^1(\R)$ のときは,
$f_n \in C_0(\R)$, $\|f-f_n\|_1\to0$ となるように
$\{f_n\}$ を選ぶと,$\|f*g-f_n*g\|_\infty\le
\|g\|_\infty \|f-f_n\|_1\to 0$ となるので,$f*g$ も $C_\infty(\R)$
の元となります.

\medskip
[4] (20点) 

存在する.例は次のとおりです.

$f(x)=g(x)=\chi_{[-1,1]}(x)\dfrac{1}{\sqrt{|x|}}$とおきます.
(原点での値はどうでもいいので,たとえば0にしておきます.)
このとき $\lim_{t\to0+}f*g(t)=\infty$ を示せば十分です.
(こうであれば,測度ゼロの集合上で値を取り替えても
原点の近傍で有界にはできないからです.) 

$f*g$ は具体的に
積分を書くことも可能ですが,次のように評価できます.
$0 < t < 1/2$ のとき,
$$f*g(t)\ge\int_t^{t+1/2}\frac{1}{\sqrt{x}}
\frac{1}{\sqrt{x-t}}\;dx=
\int_0^{1/2}\frac{1}{\sqrt{x+t}}
\frac{1}{\sqrt{x}}\;dx$$
となりますが,最後の式は単調収束定理により
$t\to0+$ のとき,無限大に発散します.

\bye