\magnification=\magstep1
\documentstyle{amsppt}

\baselineskip 14pt
\NoBlackBoxes
\nopagenumbers
\define\R{\bold R}
\define\Z{\bold Z}
\define\e{\varepsilon}
\def\supp{\text{supp}}

\centerline{解析学VI期末テスト解答解説}
\rightline{2007年2月7日 13:00--16:00}
\rightline{河東泰之(かわひがしやすゆき)}
\rightline{数理科学研究科棟323号室(電話 5465-7078)}
\rightline{e-mail yasuyuki\@ms.u-tokyo.ac.jp}
\rightline{{\tt https://www.ms.u-tokyo.ac.jp/\~{}yasuyuki/}}
\bigskip

期末試験の配点は,各問30点の180点満点です.
最高点は130点(1人)で得点分布は次のとおりでした.

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit &&\omit
&&\omit &&\omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--19 (点) && 20--39 && 40--49 && 50--59  && 60--69 && 70--79 && 80--89 &&
90--99 && 100-- & \cr
\vsp\t
& 7(人) && 3 && 2 && 5 && 3 && 1 && 0 && 2 && 5 & \cr
\vsp\t
}}$$

平均点は54.4点でした.成績との対応は,
40点未満がD,40点〜59点がC,60〜79点がB,
80点以上がAです.ただし,演習の
小テストの成績が特に良かったのでプラスアルファがついている人が
2人います.
この結果,A, B, C, Dの人数はそれぞれ,8, 4, 6, 10人となりました.
また演習の成績は最初に言ったとおり,7回分のうち1番悪い1回分を
除いた平均点でつけ,この点数(を四捨五入したもの)が返却答案に
青字で書いてあります.この点数の最高点は89点(1人)で,
その分布は次のとおりです.
(ただし欠席の回は0点として,一度でも受けた人は
表に入っています.)

$$\vbox{\offinterlineskip
\def\vsp{height 2pt &\omit &&\omit &&\omit &&\omit  &&\omit
&&\omit &&\omit &\cr}
\def\t{\noalign{\hrule}}
\def\h{\hfil}

\halign{& \vrule # & \strut \;\;\hfil # \; \cr
\t\vsp
& 0--19 (点) && 20--39 && 40--49 && 50--59  && 60--69 && 70--79
&& 80--89 & \cr
\vsp\t
& 11(人) && 4  && 4 && 6 && 3 && 2 && 4 & \cr
\vsp\t
}}$$

この点数の成績との対応は,
29点未満がD,30点〜54点がC,55〜74点がB,75点以上がAとなって
おり,この成績が青字で書いてあります.ただし,こちらも期末
試験がよくできたことによるプラスアルファがついている人が2人います.
この結果,A, B, C, Dの人数はそれぞれ,8, 5, 6, 15人となりました.
ただし,解析学特別演習II
は俣野先生との共同担当なので,この成績に俣野先生の分を総合した
ものが実際の成績表につくものとなります.

以下略解,解説をつけます.簡単に示せるところの説明は簡単に
すませてあります.実際の答案でもそのあたりはあまり厳しくつけて
ありません.

\bigskip
[1] $\supp \; T\subset\{1,2\}$ であることは簡単にわかります.
これより $T$ は,$\delta_1, \delta_2$ の微分たちの1次結合
であることが,授業でやった $\supp \; T=\{0\}$ の場合と同様に
して示せます.あとはやはり授業でやった $xT=0$ の場合と
同様にして,$T=a\delta_1+b\delta'_1+c\delta_2$ であることが
わかります.($a,b,c$ は任意の定数.) この形の $T$ が問題の
条件を満たしていることは明らかです.

\medskip
[2] この問題は一人しかできていませんでした.(2)から(1)が出る
ことは自明なので問題は逆です.気持ちとしては,$f=g*h$ のときに
Fourier 変換して,$\hat f=\hat g \hat h$ より,$\hat g \hat h=
(\hat k)^2$ となる $k\in L^2(\R)$ を取れば,$f=k*k$ となるはず
ですが,今 $f$ は一般に $L^1$ でも $L^2$ でもないのでこのように
Fourier 変換はできません.緩増加超関数と思えば Fourier 変換は
できますが,授業でやったことからはただちには,
$\hat f=\hat g \hat h$ は出ません.そこで何らかの工夫が必要です
が,2つの解法を示します.

(1) $g*h(x)$ を,$h(y)$ と $\overline{g(x-y)}$ の
$y$ の関数としての内積だと思って,Plancherel の定理を適用します.
このとき,$\overline{g(x-y)}$ を $y$ の関数と思って Fourier
変換したものは,$e^{-ix\xi}\overline{\hat g(\xi)}$ である
ことが簡単にわかります.これより,Plancherel の定理によって,
$$(g*h)(x)=\frac{1}{2\pi}
\int e^{ix\xi}\hat g(\xi)\hat h(\xi)\;d\xi$$
を得ます.ここで,$\hat g(\xi)\hat h(\xi)$ は $L^1$-関数なので
この平方根を逆 Fourier 変換したものを $k(x)\in L^2(\R)$ と
おくことができます.(平方根は可測にさえすればどうとってもかまい
ません.)このとき,
$\hat g(\xi)\hat h(\xi)=\hat k(\xi)\hat k(\xi)$ となっているので,
上の等式より,
$$(g*h)(x)=\frac{1}{2\pi}
\int e^{ix\xi}\hat k(\xi)\hat k(\xi)\;d\xi$$
となりますが,Plancherel の定理を使うところを逆にたどれば
右辺は $(k*k)(x)$ に等しくなります.

(2) まず,11月20日の小テスト [4] より,一般に,
$f\in L^1(\R)$, $g\in L^2(\R)$ のとき
$\widehat{f*g}=\hat f \hat g$ であったことを思い起こします.

$g,h\in L^2(\R)$ に対し $f=g*h$ と書けたとしましょう.
(1)と同様に,$\hat g(\xi)\hat h(\xi)=\hat k(\xi)\hat k(\xi)$ 
となる $k\in L^2(\R)$ を取ります.正の $\e$ に対し,
$\phi_\e(x)=e^{-\e x^2}$ とおきます.$\e\to 0$ のとき
$L^2(\R)$ において $\phi_\e g\to g$ なので,
$L^2(\R)$ において $\widehat{\phi_\e g}\to \hat g$ です.
これより,$L^1(\R)$ において $\widehat{\phi_\e g}\hat h\to
\hat g\hat h$ となります.今,$\phi_\e g\in L^1(\R)$,
$h \in L^2(\R)$ なので,最初の注意から
$\widehat{\phi_\e g}\hat h=\widehat{(\phi_\e g)*h}$ となります.
$L^1(\R)$ において $\widehat{(\phi_\e g)*h}\to
\hat g\hat h$ であることに,Fourier 逆変換をほどこし,
$L^1(\R)\cap L^2(\R)$ 上では,Fourier 逆変換は 
$L^1$ と思っても $L^2$ と思っても同じであることに注意すると,
$(\phi_\e g)*h\to{\Cal F}^*(\hat g \hat h)$ が一様収束でなりたち
ます.ただしここで,${\Cal F}^*$ は Fourier 逆変換を表します.
$L^2(\R)$ において $\phi_\e g \to g$ ですから,
$(\phi_\e g)*h\to g*h$ が一様収束でなりたちます.これより,
$g*h={\Cal F}^*(\hat g \hat h)$ となり,あとは(1)と同じです.

\medskip
[3] この問題は[2]と関連しています.こちらも
一人しかできていませんでした.

[2] で示したことを見れば,どちらの解法でも
$$(f*g)(x)=\frac{1}{2\pi}
\int e^{ix\xi}\hat f(\xi)\hat g(\xi)\;d\xi$$ となっています.
この右辺は,$L^1$-関数
$\hat f(\xi)\hat g(\xi)$ の Fourier 逆変換です.
今,$\hat f(\xi)\hat g(\xi)$ が $L^2$ でもあると仮定されて
いて,Fourier 逆変換は $L^1(\R)\cap L^2(\R)$ 上では,
$L^1$ と思っても $L^2$ と思っても同じであったので,
左辺の $f*g$ は $L^2$-関数の Fourier 逆変換として,
$L^2$ になります.Fourier 変換で戻せば,$\widehat{f*g}(\xi)
=\hat f(\xi) \hat g(\xi)$ がわかります.

\medskip
[4] $\chi_{[-1,1]}$, $\chi_{[-2,2]}$ の Fourier 変換がそれぞれ,
$\dfrac{2\sin \xi}{\xi}$, $\dfrac{2\sin 2\xi}{\xi}$ である
ことより,$\chi_{[-1,1]}*\chi_{[-2,2]}$ の Fourier 変換は,
$\dfrac{4\sin\xi\sin2\xi}{\xi^2}$ となります.これの Fourier
逆変換を使えば,
$f(x)=\dfrac{\sin 2x \sin x}{\pi x^2}$ の Fourier 変換は
$\hat f=\dfrac{1}{2}\chi_{[-1,1]}*\chi_{[-2,2]}$ です.
$\hat f_k=(\hat f)^k$ で,この右辺は $k\to\infty$ のときに
$\chi_{[-1,1]}$ に $L^2$-収束することはすぐに計算できるので,
逆 Fourier 変換で戻して答えは
$\dfrac{\sin x}{\pi x}$ です.

\medskip
[5] まず,$f\in L^1(\R)$, $g\in L^2(\R)$ より $f*g\in L^2(\R)$
であることに注意します. また,[2] (2)で説明したように
$\widehat{f*g}=\hat f \hat g$ です.これより,
$$\int |\widehat{f*g}(\xi)|^2 (1+\xi^2)^s\;d\xi$$ を計算すると,
$\|\hat f\|_\infty \le \|f\|_1$ を使って上の積分は
$$\|f\|_1^2 \int |\hat g(\xi)|^2 (1+\xi^2)^s\;d\xi$$
で抑えられるので,結論が出ます.

\medskip
[6] (1) たとえば $f(x)\le x^2+1$ なので $f$ は緩増加です.

(2) Heaviside 関数の微分が $\delta$-関数であったのと同様の
議論により $f'=\sum_{n\in\Z} \delta_n$ です.(試験関数に
適用したとき,右辺は有限和になり,超関数としての
収束に問題ありません.)

(3) これは,直前まで行っている人が1人いたほかは誰もできて
いませんでした.

$f'$ を超関数として Fourier 変換すると,一方では
$i\xi\hat f$ であり,一方では $\sum_{n\in\Z} e^{-in\xi}$ で
すが,後者の式は Poisson の和公式により,緩増加超関数として
$2\pi \sum_{n\in\Z} \delta_{2\pi n}$ に等しくなります.そこで
この式を $i\xi$ で割ろうとするのですがいきなり割るのは原点で
問題があり,うまくいきません.一般に定数 $a$ について,
$x\delta_a=a \delta_a$ であること,また $-x\delta'=\delta$
であることに注意して,
$$T=-2\pi i\left(\sum_{n\in\Z, n\neq 0} 
\frac{\delta_{2\pi n}}{2\pi n}-\delta'\right)$$
とおくと,これは緩増加超関数で,
$$\xi T=-2\pi i(\sum_{n\in\Z, n\neq 0}\delta_{2\pi n}+\delta)
=\xi \hat f$$ を得ます.これより,$\xi(T-\hat f)=0$ なので,
$\hat f=T+c\delta $ となる定数 $c$ が存在します.
定数 $c$ の値を決めるにはたとえば,試験関数 $e^{-x^2}$ を
使えばよく,$c=-\pi$ がわかるので,結局答えは
$$\hat f=-i\sum_{n\in\Z, n\neq 0} 
\frac{\delta_{2\pi n}}{n}
+2\pi i\delta'-\pi\delta$$
です.

\bye