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\define\C{\bold C}
\define\R{\bold R}

\centerline{2001年度解析学XD・スペクトル理論演習問題}
\rightline{2001年11月28日}
\rightline{河東泰之}

\bigskip
学期末にこのうち何題かについてレポートを提出してもらいます.

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[1] 次の条件を満たす例をあげよ.

$T$はBanach空間$X$からBanach空間$Y$への有界線形写像で,
$T$の値域は無限次元だが,$T$は開写像ではない.

\bigskip
[2] $X$を無限次元Banach空間とする.$X$の中に次の
条件を満たすような点列$\{x_n\}_{n=1,2,3,\dots}$は存在しない
事を示せ.(ヒント: Baireのcategory定理を使う.)

$X$の任意の元は,$\{x_n\}$のうちの有限個の1次結合で表される.

\bigskip
[3] 次の命題を示せ.下に方針のヒントをつけるが別の方針でできれば
もちろんそれでもよい.

$(\Omega,\mu)$を測度空間で$\mu(\Omega)=1$とする.$p\in[1,\infty)$に対し,
$X$を$L^p(\Omega)$の閉部分空間とする.もし,$X\subset L^\infty(\Omega)$
であれば,$X$は有限次元である.(Grothendieck)

[方針] (1) $T:(X, \|\;\;\|_\infty)\to (X,\|\;\;\|_p)$を$Tf=f$と定め,
これに開写像定理を適用する.

(2) $p=2$の時は,開写像定理から定まる定数
$C$が取れて,$X$の($L^2$-内積に関する)正規直交系$f_1,f_2, \dots, f_n$
に対し,$\int_\Omega \sum_{j=1}^n |f_j(x)|^2\;dx\le C^2$となることを
示す.

(3) $p\in[1,2)$の時は,$1/(2/p)+1/q=1$となるように$q>1$を取る.
H\"olderの不等式を用いて,$p=2$の場合に帰着させる.

(4) $p>2$の時も,$p=2$のときに帰着させる.

\bigskip
[4] $f(x)\in C_0^\infty(\R)$に対し,
$\dsize \int_\R f(x-y)\dfrac{\sin y}{y}\;dy$を対応させる
線型写像を$T_0$と書く.この
写像が,$L^2(\R)$から$L^2(\R)$への有界線型写像に延長できることを示し,
そのnormを求めよ.

\bigskip
[5] $f\in L^\infty(\R)$に対し,$L^2(\R)$上の作用素$T_f$を
$T_f(g)(x)=f(x)g(x)$, $g(x)\in L^2(\R)$で定める.
この作用素$T_f$のnormは何か.また,$\|T_f g\|=\|T_f\|$となる
$g$で$\|g\|=1$となるものが取れるための$f$の条件を求めよ.

\bigskip
[6] 可分無限次元Hilbert空間$H$上の有界線型作用素の列
$\{T_n\}_n$で,すべての$x\in H$に対し
$\|T_n x-x\|\to0$, $(n\to\infty)$, だが$\|T_n-I\|=1$となるもの
の例を作れ.ただし,$I$は,$H$上の恒等作用素である.

\bigskip
[7]  以下の条件を満たす複素数列$\{c_n\}_n$は存在しないことを
示せ.

複素数の無限級数$\dsize\sum_{n=1}^\infty a_n$が絶対収束
するための必要十分条件は,$\{c_n a_n\}_n$が有界なことである.

\bigskip [8]
$\ell^1$から$c_0$への作用素$T$を
$\{Tx\}_n=\{\sum_{m\ge n} x_m\}_n$で定める.これが有界線型作用素
であることを示せ.このnormは何か.

\bigskip [9]
$X$をBanach空間,$Y$をその(閉とはかぎらない)部分空間とする.
$Y$のannihilater $Y^\bot$を,
$$Y^\bot=\{\phi\in X^*\mid \phi(y)=0,\;\; \forall y\in Y\}$$
と定め,また$X^*$の部分空間$Z$に対し,
$$Z^\bot=\{x\in X\mid \phi(x)=0,\;\; \forall \phi\in Z\}$$
とおく.この時,次の各命題を示せ.

(1) $Y^\bot$は$X^*$の閉部分空間である.

(2) ${Y^\bot}{}^\bot$は$Y$の閉包に等しい.

(3) もし,$Y$が$X$の閉部分空間であれば,
$Y^*$は,$X^*/Y^\bot$と同型である.

\bigskip [10]
$[0,1]$上の複素数値連続関数全体にsup normを入れた
Banach空間$C[0,1]$を考える.この部分集合$X_n$を,
「すべての$y\in[0,1]$に対して,$|f(x)-f(y)|\le n |x-y|$」
となるような$x\in[0,1]$が存在するような$f(x)$の集合とする.
各$X_n$は閉集合で内点を持たないことを示せ.このときBaireの
category定理から何がわかるか.

\bigskip [11]
$X, Y, Z$をBanach空間とする.$X\times Y$から$Z$への作用素
$T$が次の条件を満たすとする.

(1) 各$x\in X$に対し,$y\mapsto T(x,y)$は$Y$から$Z$への有界線型
作用素である.

(2) 各$y\in Y$に対し,$x\mapsto T(x,y)$は$X$から$Z$への有界線型
作用素である.

この時,$X$で$x_n\to x$, $Y$で$y_n\to y$であれば
$Z$で$T(x_n,y_n)\to T(x,y)$であることを示せ.

\bigskip [12]
$\C$係数のvector空間$X$上に,二つの実数値関数$p_1, p_2$で次の
条件を満たすものがあるとする.(下で,$j=1,2$である.)

(1) $0\le p_j(x)< \infty$. 

(2) $x,y\in X$について,$p_j(x+y)\le p_j(x)+p_j(y)$.

(3) $c\in\C$, $x\in X$について$p_j(cx)=|c|p_j(x)$.

さらに,$X$上の$\C$-linearな汎関数$\varphi$があって
$|\varphi(x)|\le p_1(x)+p_2(x)$を満たしているとする.
この時,$X$上の$\C$-linearな汎関数$\varphi_1, \varphi_2$が
$|\varphi_j(x)|\le p_j(x)$, $(j=1,2, x\in X)$,
$\varphi=\varphi_1+\varphi_2$となるように取れることを示せ.

\bigskip [13]
Banach空間$X$がreflexiveであることと,$X^*$がreflexive
であることは同値であることを示せ.

\bigskip [14]
$\ell^\infty$の単位球は弱点列compactか?
理由を付けて答えよ.

\bigskip [15]
$f\in L^2(\R)$に対し,$f_n(x)=e^{inx}f(x)$とおく.Hilbert空間
$L^2(\R)$で,関数列$\{f_n\}_n$は,弱収束先を持つか?持つならば
その弱極限は何か?

\bigskip [16]
Banach空間$c_0$における点列$\{x_n\}_n$を
考え,各$x_n$は複素数列$\{x_{nk}\}_k$であるとする.
この点列$\{x_n\}_n$が
0に弱収束するための必要十分条件は,
$\dsize\sup_n \|x_n\|<\infty$かつ,すべての$k$について
$\dsize\lim_{n\to\infty} x_{nk}=0$となることである.
このことを証明せよ.

\bigskip [17]
Banach空間$\ell^1$の点列$\{x_n\}_n$が$x\in\ell^1$に弱収束している
とする.このとき,実は$\{x_n\}_n$は,$x$に$\ell^1$-normで
収束していることを示せ.

\bigskip [18]
Hilbert空間$H$上の作用素の列$T_n$が,次の条件を満たすとする.

すべての$x\in H$について,列$\{T_n x\}_n$は0に弱収束する.

このとき$\{T_n\}_n$は有界であることを示せ.

\bigskip [19]
Hilbert空間$\ell^2$の元,$x=(x_n)$に対し,
$(Tx)_n=c_n x_{n+1}$とはたらく作用素$T$を考える.
ただし,ここで$(c_n)$は有界な複素数列である.
いつ,この$T$がcompact作用素になるか答えよ.

\bigskip [20]
任意の$L^1(\R)$の元$f(x)$に対し,$L^2(\R)$上の作用素
$T_f:g\mapsto f*g$, ($g\in L^2(\R)$)を考える.これは
compact operatorであるか? 理由をつけて答えよ.

\bigskip [21]
$T$をBanach空間$X$からBanach空間$Y$へのcompact operatorとする.
$TX$が,$Y$の閉部分空間であれば,$TX$は,有限次元であることを
示せ.

\bigskip [22]
ReflexiveなBanach空間$X$から任意のBanach空間$Y$へのcompact operator
$T$に対し,
$\|Tx\|=\|T\|$となる$x\in X$で,$\|x\|=1$となるものが
存在することを示せ.

\bigskip [23]
可分な無限次元Hilbert空間$H$上のcompact operator全体のなす
Banach空間を$K(H)$とする.この$K(H)$は,
可分であることを示せ.

\bigskip [24]
$L^\infty(\R)$内で,次の2条件をともに満たす関数列$\{f_n(x)\}_n$の
例をあげよ.きちんと説明をつけること.

(1) $L^\infty(\R)$を
自然に$L^1(\R)^*$と思ったとき,
$\{f_n\}_n$のweak $*$-limit (汎弱極限)は0.

(2) $\{f_n\}_n$は$L^\infty(\R)$内で,0には弱収束しない.

\bye