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\define\e{\varepsilon}
\def\lan{\langle}
\def\ran{\rangle}
\def\supp{\text{supp}}

\centerline{解析学VI 冬学期試験問題略解(2/1/1992)}
\smallskip
\rightline{河東泰之}
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[1] $\dsize\int_{-1}^1 e^{-ix\xi}\;dx=\dfrac{2\sin \xi}{\xi}$だから,
$\sqrt{|\xi^2|+1}^s\dfrac{2\sin\xi}{\xi}\in L^2(\R)$となる$s>0$の
範囲は,$s<1/2$である.

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[2] $\dfrac{\sin x}{x}$, $\dfrac{1}{e^x+e^{-x}}$のFourier変換はそれぞれ,
$\pi\chi_{[-1,1]}(\xi)$, $\dfrac{\pi}{e^{\pi\xi/2}+e^{-\pi\xi/2}}$である.
よって,求める積分は
$$\frac{1}{2\pi}\pi^2\int_{-1}^{1}\frac{1}{e^{\pi\xi/2}+e^{-\pi\xi/2}}\;
d\xi=\left[\arctan e^{\pi\xi/2}\right]_{-1}^1=
\arctan e^{\pi/2}-
\arctan e^{-\pi/2}$$
である.

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[3] $x=(x_n)\in \ell^1$, $y=(y_n)\in\ell^1=c_0^*$に対し,
$$
\lan x,T^* y\ran=
\lan Tx, y \ran=
\sum_n (\sum_{m\ge n} x_m) y_n
=\sum_n x_n (\sum_{m\le n} y_m)$$
より$(T^*y)_n=\sum_{m=1}^n y_m\in \ell^\infty$である.
($\sum_{n,m\ge 1}|x_n||y_m|<\infty$だから和の順序の交換は問題ない.)

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[4] 作用素$S$を$S:(x_1, x_2, x_3, \dots)\mapsto(0, x_1, x_2, x_3, \dots)$
で定めると,$T$がcompactであることと$ST$がcompactであることは同値である.
よって,求める条件は$c_n\to0$である.

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[5] $\dfrac{1}{x+i\e}-\dfrac{1}{x-i\e}$のFourier変換は
$-2\pi i e^{-\e|\xi|}$であるから,
求める極限値は
$$\lim_{\e\downarrow 0}-i\int_{-\infty}^\infty
e^{-\e|\xi|}\hat f(\xi)\;d\xi=-i
\int_{-\infty}^\infty
\hat f(\xi)\;d\xi=-2\pi i f(0)$$
である.(Lebesgueの収束定理を使った.)

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[6] 完全正規直交系$\{e_n\}_n$を取る.$\{e_1, e_2, \dots, e_n\}$で
生成される部分空間への射影を$P_n$とおく.Compact作用素$T$に対し,
授業でやったように$\|P_nT-T\|\to0$である.またこれより,
$\|TP_n-T\|=\|P_nT^*-T^*\|\to0$でもある.($T^*$もcompactであること
に注意.)したがって,
$\|P_nTP_n-T\|\le\|(P_nT-T)P_n\|+\|TP_n-T\|\to0$である.このことと
$P_n{\Cal K}(H)P_n$が$n$次元行列環と同型で可分であることより,
結論が得られる.

\vfill\eject
[7] 成り立たないことを反例によって示す.2つ作り方をあげる.

(1) $f\in L^1(\R)$, $g\in L^2(\R)$を,$\supp g\subset[-1,1]$
$\supp f\subset[-1,1]$, $\|g\|_2=1$, $\|f*g\|_2>0$となるように取る.
$g_n(x)=g(x-n)$とおけば,$\{g_n\}_n$は$0$に弱収束しているが,
$\|f*g_n\|>0$は一定であり,$T_fg_n$は0に強収束していない.

(2) $\hat f(\xi)$が$C_0^\infty(\R)$に属し,区間$[0,1]$で1に等しい
ように,$f\in L^1(\R)$を取る.($C_0^\infty(\R)\subset{\Cal S}(\R)$
であり,${\Cal S}(\R)$の元のFourier変換は再び${\Cal S}(\R)\subset
L^1(\R)$の元となることを使う.)$h_n(\xi)=\chi_{[0,1]}(\xi)e^{2\pi i n\xi}$
とおけば,$\{h_n\}$は0に弱収束している.そこで,$h_n$の逆Fourier変換に
$T_f$をほどこしたものを考えれば,もとは,0に弱収束しているのに,
$T_f$をほどこしたものは,0に強収束していないことがわかる.

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[8] 
%反射的(reflexive)Banach空間$X$からBanach空間$Y$への有界線型作用素
%$T$に対し,$T$が単射であることと,$T^*Y^*$が$X^*$で
%稠密であることは同値であることを示せ.
まず$T$が単射で,$\overline{T^*Y^*}\neq X^*$
としよう.すると,Hahn-Banachより,0でない$x\in X^{**}=X$が存在して,
すべての$\phi\in Y^*$に対し,$\lan x, T^*\phi\ran=0$となる.
これは,$\lan Tx, \phi \ran=0$を意味するから,再びHahn-Banachより,
$Tx=0$となる.$T$は単射だったから矛盾である.

次に,$\overline{T^*Y^*}=X^*$で,$Tx=0$としよう.このとき,
すべての$\phi\in X^*$に対し,$\psi_i\in Y^*$が存在して,
$\phi=\lim_i T^*\psi_i$となるので,
$\lan x, T^*\psi_i\ran=\lan Tx, \psi_i\ran=0$を用いて,
$\lan x, \phi\ran=0$を得る.これは,
$x=0$を意味する.

\bigskip
[9] $X$内の点列$\{x_n\}_n$を,$\|x_n\|=1$, $\|Tx_n\|\to\|T\|$となるように
取る.このとき,$\{x_n\}_n$の部分列(再び
$\{x_n\}_n$と書く)が取れて,$x_n\to x$(弱収束)とできる.すると
$Tx_n\to Tx$(強収束)となるので$\|Tx\|=\|T\|$である.もし,$x=0$ならば
何も問題はないし,そうでなければ,$\|x\|=1$である.

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[10] 背理法による.$x=0$として一般性を失わない.
部分列を取ることにより,
$\{x_n\}_n$が0に弱収束しているのに,$\|x_n\|_1\ge\e>0$と仮定できる.
(ここで各$x_n=(x_n(k))$は$\ell^1$の元である.)
このとき,自然数の増大列$\{a(n)\}_n$と$\{x_n\}$の
部分列$\{y_n\}$を以下のように取る.
まず$a(0)=0$, $y_1=x_1$とし,$a(n-1)$までと$y_n$まで
が与えられたときに,
$\sum_{k=1}^{a(n-1)}|y_n(k)|\le 1/n$が,成立しているとしよう.
このとき,$a(n)$を
$\sum_{k=a(n-1)+1}^{a(n)}|y_n(k)|\ge \|y_n\|_1-2/n$
となるように取る.さらに十分大きい$m$を取れば,
$|x_m(k)|\le 1/(a(n)(n+1))$, $k=1, 2, \dots, a(n)$とできるので
この$x_m$を$y_{n+1}$とおく.すると,
$\sum_{k=1}^{a(n)}|y_{n+1}(k)|\le 1/(n+1)$が成立している
のでこの構成が帰納的に続行できる.このとき,
$\sum_{k=1}^{a(n-1)}|y_{n}(k)|
+\sum_{k=a(n)+1}^{\infty}|y_{n}(k)|
\le 2/n$が成立している.ここで$x=(x(k))\in\ell^\infty$を,
$|x(k)|=1$で,
$a(n-1)